【設計機能 連載目次】
デザイナーは、美しく機能的な製品を作り出すことが期待されています。果たしてそれは共存可能なのでしょうか。デザインとは、「創造である」、「本質的な目的の追求である。」、「自然法則の追求である。」、「美意識の追求である。」といくつも定義できます。その中で、カタチの美しさと機能については、矛盾するようなテーマですが、その矛盾を乗り越えた製品も多々生まれています。その美しさと機能の関係について考えてみましょう。
1. デザインにおけるカタチの美しさと機能
映画「風立ちぬ」のポスターは、モネの「日傘をさす女」をイメージさせ、美しさを増幅させました。内容は、零戦を設計した堀越二郎の生涯に堀辰夫の恋物語を重ね合わせたものです。主人公の二郎は夢をみました。「私は飛行機を造る人間・設計家だ。飛行機は戦争の道具でも商売の手立てでもなく、それ自体が美しい夢なのだ。設計家は夢にカタチを与えるのだ。」夢から覚めた二郎は、好奇心と問題意識を持ち、魚の骨の曲線をヒントに飛行機を設計しました。一般的に飛行機は、機能から要求される形が優先されると言われます。出来上がった形として美しいのはなぜでしょうか。それは、機能としての工学の結晶を自然現象に合わせると、自ずと美しくなってしまうのかもしれません。
図1. モネの「日傘をさす女」
2. デザインとは
プログレッシブ英和辞典によれば、”Design”とは「意匠、図案、設計、企画、模様、計画、企画、陰謀、意図、目的、美術作品、仕組み、構造」と表現されています。デザインの語源はデッサン(dessin)と同じラテン語の「designare(デジナーレ)」。デザインには広義のデザインと狭義のデザインがあります。「問題解決」と「設計」は広義のデザインに、造形美(意匠)は狭義のデザインに該当します。
例えば、「世界を変えるデザイン」に紹介された図2の転がるバケツがあります。タイヤ型の転がるバケツは、水を入れ、フタをしめ、紐をくくれば、転がすだけで簡単に楽に遠くまで水を運ぶコトができます。カタチを変えるだけで、バケツも、水も、重力から解放されます。凄いデザインはカタチの美しさではなく機能だということを実感できます。
転がるバケツに美しさは必要ありませんが、京都の町並みに合わせた桶には、美しさが必要になります。コーヒーカップのような陶器も機能を成熟させれば、模様や素材によって高付加価値化できます。
図2. 転がるバケツ
3. アップルは機能を一番に考える
アップル社はデザインを追求しているメーカーと言われています。例えば、アップル社が考えるiMACをはじめ開発されてきたPCは、ただの作業する機械ではなく、インテリアの一つにもなってきました。しかしながら、スティーブ・ジョブズは次の言葉を残しています。「デザインとは“どう見えるか”ではなく、“どう機能するか”の問題である。」ジョブズは、デザインにおいてカタチの美しさは、さほど大切ではないと言っているようにも思えます。
iPad、iPhone、iPod,そしてMacBook Airなどのデザインの責任者を務めてきたジ...