1. 燃料電池自動車FCVとは
燃料電池自動車FCV(Fuel Cell Vehicle)とは、主に水素を燃料とし、燃料電池のなかで、水素と酸素の化学反応によって発電した発電エネルギーを使って、モーターを回して走る自動車のことです。エネルギー効率が高く、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)等の排出が全くなく、温暖化の原因の一つといわれている二酸化炭素(CO2)を排出せず、水だけを排出させることから究極のエコカーと呼ばれています。燃料電池自動車FCVの基本構造は、図1のように、燃料電池内に酸素と水素を取り込み、燃料電池スタックで電気を発生させ、その電気エネルギーでモーターを回します。余った伝電気は駆動用バッテリー(蓄電池)に貯めます。また、ガソリン自動車のように水素ステーションで水素タンクに水素を補給します。図2はFC昇圧コンバーター、パワーコントロールユニット等を実装した完成予想図です。
図1. 燃料電池自動車の原理図
図2. 完成図(出典:トヨタ燃料電池自動車HP)
2. 燃料電池車のメリットとデメリット
燃料電池自動車の主なメリットとデメリットを整理すると次のようになります。
(1)メリット
① 電気自動車よりも航続距離が長い。
② 地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない。
③ エネルギー効率がガソリン車の約3倍、ハイブリッドの約2倍と高い値となる。
③ 発電しても騒音を発生しないため、走行時はとても静か。
④ 走行時に排出するのは水(水蒸気)だけなので、環境に優しい。
⑤ 窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)等の有害物質の排出が全くない。
(2)デメリット
① 燃料電池そのものの価格が高い。
② 水素の貯蔵や搬送に高いコストがかかる。
③ ガソリン車ほどの航続距離は実現していない。
④ 水素を補給するための水素ステーションの整備が求められる。
⑤ 水素タンクで、事故のリスクや安全性について配慮が必要となる。
3. 各種方式の比較
燃料電池自動車と電気自動車をいくつかの仕様で比較したものが表1のようになります。ただし、航続距離は現状の実力値を表示しています。そして、ハイブリッドは参考として掲載しました。それらには、メリット、デメリットがあり、それらの課題をどう克服できるかにかかっていると言えます。
表1. 燃料電池自動車等の比較表
4. 課題と今後の展望
「水素社会など来ない」「フューエルセル(燃料電池)はフール(愚かな)セル」「燃料電池は永遠のミライ技術」と断言している男がいます。電気自動車(EV)で急成長している米テスラ・モーターズの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスクです。なぜなら、水素ステーションの整備は進んでいないようです。カリフォルニア州の場合、最低でも数十カ所の水素ステーションが必要とされますが、一般のドライバーが使えるものは確認できるもので6カ所しかないようです。
現時点での日本国内の自動車メーカー、電池メーカー等は、富士経済やトーマツコンサルティングの「2025年ぐらいに市場規模約5兆円」との市場予測を目処にしているようです。内訳は燃料電池自動車が市場を牽引して、家庭用燃料電池、産業用燃料電池が続くというものです。しかし、どうやらEVは、構造上のシンプルさ、電池の技術革新等で燃料電池車に勝ってしまいそうです。テスラはEVの課題である航続距離の不安と充電にかかる時間の長さを解決するために、バッテリー交換方式を提案しています。
燃料電池が今後普及していくためには、大きな課題も多岐に渡っています。例えば、燃料電池車では、車の普及価格レベルまでの全般的なコストダウン、水素搬送上の安全性の追求、水素ステーションの増設等です。定置用燃料電池では、エネファームの商用化進展、非常用電...