日々、仕事で様々な文書を書いていると思います。例えば、業務報告書、打合せ資料、技術提案書、社内稟議書、メールなどです。
今回は、これらの文書をわかりやすく書くうえで“最も重要なこと”について以下の項目に基づき解説します。
1. わかりやすい文書とは
2. 文書をわかりやすく書くことが求められる理由
3. わかりやすい文書を書くうえで最も重要なこと
1. わかりやすい文書とは
まず、わかりやすい文書の定義をします。わかりやすい文書とは、読み手に内容が“明確に”伝わる文書のことです。
「読み手に内容が伝わる」と「読み手に内容が“明確に”伝わる」は違います。この違いを短い文の比較で解説します。
【文Ⅰ】:今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様の利便性を考えて設計された製品です。
【文Ⅱ】:今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様が使いやすいように、テンキーが、従来型に比べて1.2 倍大きく表示されように設計された製品です。
文Ⅰが、読み手に内容が伝わる文です。文Ⅱが、読み手に内容が“明確に”伝わる文です。文Ⅰと文Ⅱを読んだとき、文Ⅱの方が,内容が明確に伝わったと思います。文Ⅰは、「内容がぼんやりしている」と感じたと思います。
短い文を例にして、「読み手に内容が伝わる」と「読み手に内容が“明確に”伝わる」との違いを解説しました。文書を書く場合も同じです。読み手に内容が伝わる文書は、内容がぼんやりと伝わりますが、読み手に内容が“明確に”伝わる文書は,内容がはっきりと伝わります。
読み手に内容が“明確に”伝わるように書かれた文書が、わかりやすい文書です。
2. 文書をわかりやすく書くことが求められる理由
文書をわかりやすく書くことが求められる理由は、伝達を成立させるためです。文書を書く目的は伝達です。
書き手は読み手に何かを伝えるために(伝達するために)文書を書きます。例えば、業務報告書を書くことを考えてみます。業務報告書を書く目的は、受注者(書き手)が発注者(読み手)に業務の成果(内容)を報告(伝達)することです。
伝達を目的として書く業務報告書が、文Ⅰのようなぼんやりとした内容で書かれていたらどうでしょうか? ぼんやりとした内容では、業務の成果の伝達は成立しません。文Ⅱのように、読み手に内容が“明確に”伝わるように業務報告書を書くことで業務の成果の伝達が成立します。文書をわかりやすく書くことで伝達が成立します。
3. わかりやすい文書を書くうえで最も重要なこと
3.1 書き手と読み手の違いの認識
書き手とは、文書を書く人であり、かつ、読み手への伝達内容を細部まですべて知っている人です。例えば、業務の内容、技術提案の内容、上司に報告する内容などを細部まですべて知っている人です。すなわち、書き手とは、知っている人です。
読み手とは、書き手が書いた文書を読む人であり、かつ、書き手からの伝達内容を知らない人です。読み手は、書き手が書いた文書を読むことで伝達内容を知ります。例えば、書き手が書いた業務報告書を読むことで、読み手は、書き手が行なった業務の成果を知ります。すなわち、読み手とは、知らない人です。
3.2 読み手の立場に立って文書を書くこと
わかりやすい文書を書くうえで最も重要なことは、“書き手”と“読み手”の違いを認識したうえで、読み手の立場に立って文書を書くことです。
読み手(知らない人)に何かを伝える場合、書き手(知っている人)は伝えることをわかりやすく書くことでこの伝達が成立します。このとき、読み手(知らない人)の立場に立って文書を書くことでわかりやすい文書が書けます。
読み手の立場に立って文Ⅰを読むことを考えてください。「『今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様の利便性を考えて設計された製品です』と書かれていたら,内容がわかりにくいだろうな」と...