「お客様のことを考えて文書を書く」とは

 わかりやすい文書を書くうえで最も重要なことは、「書き手と読み手の違いを認識したうえで、読み手の立場に立って文書を書くこと」です。これは、これまでに掲載された記事の中でも書きました。
 
 仕事を引き受ける人にとってその仕事を依頼してくれる人(仕事の依頼者)は“お客様”です。仕事の依頼者をお客様ではなく、顧客、取引先、依頼者、クライアントなどと呼ぶのかもしれませんがこの記事の中では“お客様”と呼びます。
 
 依頼された仕事の成果を業務報告書にしたとき、その業務報告書を読むのは(読み手は)仕事の依頼者、すなわち、お客様です。つまり、「読み手=お客様」です。したがって、「読み手の立場に立って文書を書くこと」とは、「お客様の立場に立って文書を書くこと」と言い換えることができます。
 
 また、「お客様の立場に立つ」とは「お客様のことを考える」と言い換えることができます。そこで、今回の記事は、「お客様のことを考える」という切り口での内容です。
 
 ここで、「お客様のことを考える」に関してのエピソードを紹介します。
 

◆ エピソード1 

 
 私の知り合い(Aさんとします)が都内で日本料理の店をやっています。数年前に友人とその店に行ったときのことです。店に入ってから15分ぐらい経ったとき地震がありました。比較的大きな揺れでした。地震発生直後、Aさんが、厨房で使っていた火をすぐに止めるとともに、厨房から出て入口のドアのところに向かって走っていきました。そして、ドアを開け外部の状況を確認していました。「エッ? 我々を残して自分だけ逃げるの?」とその瞬間思いました。
 
 比較的大きな揺れでしたがその揺れはすぐに収まりました。Aさんが戻ってきたので、冗談半分に「客を残して逃げちゃだめですよ」と言ったら、「逃げたのではないです。避難するための動線を確保するとともにお客様が安全に避難できるかどうかを確認しました」との答が返ってきました。
 
 地震の影響で入口のドアが開かなくなりお客様が店の中に閉じ込められることを防ぐため動線を確保したそうです。また、外部の状況を見て、お客様を安全に避難させられるかどうかを確認したそうです。Aさん聞いたら、地震時のこのような対応はプロの料理人の基本の行動だそうです。もちろん、Aさんに「疑ってすいませんでした」と謝りました。
 
 
 

◆ エピソード2

 私の友人(Bさんとします)が、川崎市内でイタリアンの店(レストラン)をやっています。カウンター席がメインの小さな店です。昼間のランチの時間帯は1人で来る人が多いそうです。その店の近くに会社が複数あるので、それらの会社の社員の人が1人で来るからだそうです。しかし、夜は、会社の同僚と来たり、家族や友人同士で来たりするお客様が中心だそうです。でも、1人で来るお客様もいるそうです。
 
 Bさんから以前に聞いた話ですが、Bさんは、夜1人で来るお客様には厨房内から積極的に話かけるようにしているそうです。1人で来た人の周囲にいる人たちが、会話をしながら料理を待っていたり会話をしながら料理を食べたりしている中で、1人で黙って料理を待っているとそこに居づらいような気持になることがあるからだそうです。そこで、1人で来るお客様がその店の中でくつろげるように積極的に話かけるそうです。話かけると多くの人がBさんと会話を始めるそうです。
 
 「お客様の安全を守る」も「1人...
で来るお客様に話かける」も「お客様のことを考える」ことだと思います。
 
 
 
 記事の冒頭で以下のことを書きました。
 
 “「お客様の立場に立つ」とは「お客様のことを考える」と言い換えることができます”
 
 すなわち、「お客様の立場に立って文書を書くこと」とは、「お客様のことを考えて文書を書くこと」です
 
 「お客様のことを考えて文書を書くこと」とは、例えば、「お客様から『この業務報告書はわかりやすいな』と言ってもらえる業務報告書を書こう」という気持ちを持って業務報告書を書くことです。
 
 「読み手の立場に立って文書を書くこと」を「お客様のことを考えて文書を書くこと」と考えると、「わかりやすい文書(お客様に内容が明確に伝わる文書)を書くことが大事だな」と思えてくるのではないでしょうか。
  

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