1 膨大なTRIZの体系
TRIZが会社の中で定着しないまでも、もっと積極的に利用・使用しようとする人がそれほど多くはないというのはどうしてでしょうか。
その理由はいくつか考えられますが、TRIZの体系が膨大であり短期間にマスターするのはなかなか困難であることが大きな原因になっているのではないかと思われます。旧ソ連のTRIZ学校では非常に長い時間をかけてTRIZを学びマスターしたと言われています。TRIZの使い方のうち最も使用頻度の高い矛盾マトリックスに的を絞った整理 ・ 簡便化10,11)なども行われているもののTRIZを構成している各々のモジュール(矛盾マトリックス/発明原理,Effects/逆引き辞書,物質-場分析/標準解,進化のパターン,etc)の全てを縦横に組み合わせて使いこなすまでになるにはかなりの時間と経験が必要です。
・TRIZを簡単に学び実行するには
TRIZは、企業の技術者・研究者にとって必須アイテムであり、必ず身に付けておくことが必要であるとは言っても、学ぶためだけに長時間を費やすことは非常に困難と言うより殆ど無理な注文というものです。TRIZを学ぶために長時間をかけず、また誰にでも容易に実行できるようにするにはどうしたらよいか。それは「USIT(ユーシット)」1)を用いることです。
・USIT(ユーシット)とは
USITはTRIZの全体を再整理して使いやすくした課題解決のための有力な実践方法です。
USITは,TRIZ創始者G. Altshullerの弟子Filkovsky が開発した「SIT=体系的発明思考法」を基に,Sickafus4)が改良を加えて「Unified Structured Inventive Thinking(統合的構造化発明思考法)」として構築したもので、頭文字(USIT)を並べて“ユーシット”と呼びます。
TRIZの現代化(Contemporary TRIZ)の中でUSITは“TRIZを系統化”して“迅速・容易に”実地適用できるようにしたものです。日本には大阪学院大の中川教授が導入5)しました。その後更に改良を加えたもの1)をご紹介します。USITは、多くのモジュールの集合体であるTRIZを一元化し,使う際のStepを明確にしたものであることから“系統化されたTRIZの実践方法”と言えます。
2「課題解決実践法-USIT」の特徴
・偏りなく広い視野で考えることができる
通常ブレーンストーミングで解決策を出しますが、知らない領域のことは当然議論の対象にならないのみならず、興味のある領域に偏ったり、強い意見の人に引っ張られて狭い局地的な部分の議論に陥り全体に目が行き届かなかったりします(図1)。
これに対してUSITは、自分たちの経験外の領域を含めた広い視点で対応するキーワードを強制的に出すので、「偏り無く」しかも「抜け落ち」なく課題に向き合えます(図2)。
・多くの解決策を得るまでの手順が簡単・明快
USITは、「課題定義」「問題分析」「解決策の生成」という課題解決へのStepがはっきりしています。更に筆者は「優先順位の決定とまとめ(開発計画)」を加えて、最終回答へのガイドができるようにしています。このようにUSITの進め方は統合された1つの流れになっているのでTRIZを適用しようとする際のようにどのモジュールが最適なものか悩むことなく進めることができます。
また解決策の生成には、TRIZの各モジュールのモデル解(一般解)を再整理して分かりやすくした「アイデア発想の視点」が用意されています。問題分析で得られるキーワードと重ねることで,アイデア生成を容易にしかも網羅的に出すことができます。
これらは全てソフトツールを使わないで問題解決ができます。
・ メンバー間の合意が得やすくかつ検討のRefineも容易
課題の検討の途中で本来の「課題」を見失ったり、いつの間にか手段が目的化してしまったりすることは、度々見られることです。このような場合にも自分が「今」どの段階にいて、最終ゴールまでどの位の位置にいるのかが分かりやすいため修正をかけるのが容易で、しかもまたそれぞれのStepでの行うべきことが明確なのでメンバー同士の合意を得やすい。
更に、新たな条件が加わって再検討しなければならな...