優先順位の決定、企業での使い方 課題解決実践法-USIT(その3)

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 前回のその2に続いて解説します。
 

3.4 優先順位の決定

 
 TRIZはもとよりUSITも教科書は、「多くの解決策案」を出すところで終わっています。しかし、企業の実際の場面では、USITで(あるいはTRIZで)検討し「多くの解決策案」を出した段階で、研究者あるいは技術者としての作業が終了する訳ではなく、解決策を具体化/実行して、ようやく課題を解決したことになるのです。
 
 従って「多くの」解決策群の中で、どの案が最も適切な解決策かを決定することが望まれます。前述のように、この段階はTRIZやUSITのテキストには何ら記載がありませんが、筆者は必須の項目と捉えて実際の場面でも適用しています。
 

(1)解決策を分類してExel表に入力

 

(2) 適用に際しての条件の合意:例えば・効果程度・コスト・人手・納期など。

 
 課題によっては、開発にかけられる時間が限られていたり、既存設備が利用できるか新規な設備投資が許されるか等、解決案の採用に大きな制約になることがあります。
 

(3)評価

 
 各々の解決策について、上記の(2)で決めた項目を4段階程度、例えば、4:満足、3:検討の価値高い、2:やや困難さあり、1:困難性が大、のように評価点数付けを行う。
 

(4)順位付け

 
 ① 上記の(2)の項目の中で必須の条項を決める。残りの項目はできれば優先順位を決めておく。これらの優先順位付けを行う際に、必ずメンバーの合意を得て進める。
 
 ② 上記の(3)の評価結果を必須の条項~優先度の高い順にソート(並べ替え)し、解決案に序列を付ける。
 
 順位の低いものも含め検討結果を全て残しておきます。検討した時点では、ここで得られた結果で十分満足しても、将来再び同様の問題が発生した際、適用の条件が時間の経過で変化することがありうるので、見直しができるようにしておくことが必要です。 
 
 ③ 開発計画表:作業項目毎に担当者/納期を決める。
 

4.「課題解決実践法-USIT」の適用例

 
 企業での実際の適用例の個々についての詳細を紹介することは紙面の都合で割愛しますが、その中で例えば、三原らの「プラズマフィルターの血漿抽出率の改善」6)にはUSITを利用して得られた成果が詳しく述べられています。問題を明確にし課題として確定し、最小限の構成因子を決め、それらの性質、構成因子間に働く作用、あるべき姿からの分析、そしてこれらの時間的・空間的分析、といった観点から、必要な血漿を得るための血液採取量を少なくするために、非常に多くの解決策群が得られています。
 

5.「課題解決実践法-USIT」の企業での使い方

 
 TRIZという課題解決のための創造的手法を実際に利用するためには、既に述べたようにUSITは非常に学びやすく使いやすい方法です。
 

・ USITを使えるようになるにはどのくらいの時間が必要か?

 
 USITのトレーニングは2日間で一応の理解ができます。トレーニング無しでも、USITの指導者の下でOn the Jobで何度か実践することで自分でできるようになれます。
 

・ USITを用いて問題解決するにはどのくらいの時間・手間がかかるのか?

 
  USIT
図3. USITの進め方 <そのステップ>
 
 図3のStepを行うのに、標準的なケースで3~4時間ずつ6~7会合です。非常に困難な(と思われる)課題でも1週間に半日を2回ずつ行えば1ヶ月で終わります。課題がそれ程複雑でないケースでは、半日ずつ2~3回の作業で終わる場合もあります。
 

・ USITはどのような利用の仕方をすればよいのか?

 
 課題を抱えている技術者とUSITをよく理解しているエキスパートとが共同作業で行います。1人のみあるいは1つの職場の人だけで実行すると、視点が狭くなったり、思いこみによって観点の広がりがなされない恐れがあります。またUSITはグループの共同作業に適しているので、自分達とは別の関連職場の関係者数人を含めて行う方がより優れたアイデア群が得られます。
  
 今回で、USITの解説を終了します。
 
【参考文献】
1)http://www. triz-usit.com/
2)G. Altshuller,遠藤ら訳「超発明術TRIZシリーズ1入門編 原理と概念に見る全体像」日経BP,1997
3)三菱総合研究所知識創造研究部「革新的技術開発の技法 図解TRIZ」日本実業出版社,1999
4)・NTELLECK (SickafusのHP);http://www.u-sit.net/
・ Ed. Sickafus「Unified Structured Inventive Thinking - How to Invent」NTELLECK, Michigan, USA (1997)
5)・大阪学院大・中川教授のHP;
 http://www.osaka-gu. ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/index.html
・ E. N. Sickafus著,川面,越水,中川共訳「USITの概要 (統合的構造化発明思考法)」:e-Book by Ntelleck, (2004)
6)三原ら;...
 
 前回のその2に続いて解説します。
 

3.4 優先順位の決定

 
 TRIZはもとよりUSITも教科書は、「多くの解決策案」を出すところで終わっています。しかし、企業の実際の場面では、USITで(あるいはTRIZで)検討し「多くの解決策案」を出した段階で、研究者あるいは技術者としての作業が終了する訳ではなく、解決策を具体化/実行して、ようやく課題を解決したことになるのです。
 
 従って「多くの」解決策群の中で、どの案が最も適切な解決策かを決定することが望まれます。前述のように、この段階はTRIZやUSITのテキストには何ら記載がありませんが、筆者は必須の項目と捉えて実際の場面でも適用しています。
 

(1)解決策を分類してExel表に入力

 

(2) 適用に際しての条件の合意:例えば・効果程度・コスト・人手・納期など。

 
 課題によっては、開発にかけられる時間が限られていたり、既存設備が利用できるか新規な設備投資が許されるか等、解決案の採用に大きな制約になることがあります。
 

(3)評価

 
 各々の解決策について、上記の(2)で決めた項目を4段階程度、例えば、4:満足、3:検討の価値高い、2:やや困難さあり、1:困難性が大、のように評価点数付けを行う。
 

(4)順位付け

 
 ① 上記の(2)の項目の中で必須の条項を決める。残りの項目はできれば優先順位を決めておく。これらの優先順位付けを行う際に、必ずメンバーの合意を得て進める。
 
 ② 上記の(3)の評価結果を必須の条項~優先度の高い順にソート(並べ替え)し、解決案に序列を付ける。
 
 順位の低いものも含め検討結果を全て残しておきます。検討した時点では、ここで得られた結果で十分満足しても、将来再び同様の問題が発生した際、適用の条件が時間の経過で変化することがありうるので、見直しができるようにしておくことが必要です。 
 
 ③ 開発計画表:作業項目毎に担当者/納期を決める。
 

4.「課題解決実践法-USIT」の適用例

 
 企業での実際の適用例の個々についての詳細を紹介することは紙面の都合で割愛しますが、その中で例えば、三原らの「プラズマフィルターの血漿抽出率の改善」6)にはUSITを利用して得られた成果が詳しく述べられています。問題を明確にし課題として確定し、最小限の構成因子を決め、それらの性質、構成因子間に働く作用、あるべき姿からの分析、そしてこれらの時間的・空間的分析、といった観点から、必要な血漿を得るための血液採取量を少なくするために、非常に多くの解決策群が得られています。
 

5.「課題解決実践法-USIT」の企業での使い方

 
 TRIZという課題解決のための創造的手法を実際に利用するためには、既に述べたようにUSITは非常に学びやすく使いやすい方法です。
 

・ USITを使えるようになるにはどのくらいの時間が必要か?

 
 USITのトレーニングは2日間で一応の理解ができます。トレーニング無しでも、USITの指導者の下でOn the Jobで何度か実践することで自分でできるようになれます。
 

・ USITを用いて問題解決するにはどのくらいの時間・手間がかかるのか?

 
  USIT
図3. USITの進め方 <そのステップ>
 
 図3のStepを行うのに、標準的なケースで3~4時間ずつ6~7会合です。非常に困難な(と思われる)課題でも1週間に半日を2回ずつ行えば1ヶ月で終わります。課題がそれ程複雑でないケースでは、半日ずつ2~3回の作業で終わる場合もあります。
 

・ USITはどのような利用の仕方をすればよいのか?

 
 課題を抱えている技術者とUSITをよく理解しているエキスパートとが共同作業で行います。1人のみあるいは1つの職場の人だけで実行すると、視点が狭くなったり、思いこみによって観点の広がりがなされない恐れがあります。またUSITはグループの共同作業に適しているので、自分達とは別の関連職場の関係者数人を含めて行う方がより優れたアイデア群が得られます。
  
 今回で、USITの解説を終了します。
 
【参考文献】
1)http://www. triz-usit.com/
2)G. Altshuller,遠藤ら訳「超発明術TRIZシリーズ1入門編 原理と概念に見る全体像」日経BP,1997
3)三菱総合研究所知識創造研究部「革新的技術開発の技法 図解TRIZ」日本実業出版社,1999
4)・NTELLECK (SickafusのHP);http://www.u-sit.net/
・ Ed. Sickafus「Unified Structured Inventive Thinking - How to Invent」NTELLECK, Michigan, USA (1997)
5)・大阪学院大・中川教授のHP;
 http://www.osaka-gu. ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/index.html
・ E. N. Sickafus著,川面,越水,中川共訳「USITの概要 (統合的構造化発明思考法)」:e-Book by Ntelleck, (2004)
6)三原ら;「プラズマフィルターの血漿抽出率の改善」
・ 第2回日本Invension Machineユーザグループミーティング予稿集(2001. 9),
 ・日経メカニカル 2001年10月号
7)中川,古謝,三原「TRIZの解決策生成諸技法を整理してUSITの5解法に単純化する」 ETRIA国際会議,ストラスブール (フランス2002年11月)
8)中川,古謝,三原「USIT解決策生成法の使い方-TRIZを簡易化・統合化したシステム」TRIZ国際会議TRIZCON2003,フィラデルフィア (米国 2003年3月)
9)三原ら「ペーパーファスナー改良へのUSITの適用」第6回日本TRIZシンポジウム, (2010年9月)
10)三原ら「革新的問題発見・解決の方法」第6回TRIZシンポジウム論文集P. 427,2010年9月
11)長田ら「革新的課題解決法」日科技連出版,2011
 

◆関連解説『USITとは』

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この記事の著者

三原 祐治

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