「モノのデザイン」と「コトのデザイン」とは

更新日

投稿日

 
 知的財産マネジメント
 
 デザインの対象が「モノ」から「コト」に移行している、という認識をよく耳にします。しかしながら、デザインは本来的に「ヒト」が生活を豊かにするために行われる行為である、と考えるならば、「モノ」を「ヒト」に提供することによって、「ヒト」に「コト」を提供する、ということになろうかと思います。
 
 Gマークの主催機関である日本デザイン振興会は、そのホームページで次のように記述しています。
 
 『 デザインにおいてモノとコトは「何に着目しているのか?」の違いと我々は考えます。モノは「コトを成す手段」のひとつであり、コトは目的である。これが、我々が考えるモノとコトの違いです。例えば、かつて一世を風靡したモノにウォークマンがあります。モノとしてこれを見ると携帯型音楽プレーヤーですが、その向こう側には「歩きながら音楽を聴きたい」という目的が見えます。これがコトです。そして、携帯型音楽プレーヤーというモノを提供することによってコトが達成できる。これがモノとコトの関係性です。
 
 ではこの時、デザイナーは何をデザインしたと考えるのでしょうか、それはコトとモノの両方をデザインしたというのが我々の考え方です。正確に述べるならば「コトをモノという手段を用いてデザインした」という解釈をします。グッドデザイン賞の審査で考えた場合、まずコトの適正を問い、それを前提にモノの適性を問う。このような考え方をします。つまり、デザインにおいてモノとコトは二分するものではなく常に同時に見続けるべきものであり、モノは手段であるがゆえに有形か無形かは問わないというのが我々の考え方です。』
 
 ここで注目すべきことは、「モノは手段であるがゆえに、有形か無形かは問わない」というところです。「モノ」であって「物」ではない。デザインの創作活動が、「ヒトに提供するコト」を考え、そのための手段として「モノ」を創り出すことということができるので、「モノ」こそがデザインの成果物と言ってよいでしょう。「コト」だけでデザインが完結することは考えにくいと思うところです。
 
...
 
 知的財産マネジメント
 
 デザインの対象が「モノ」から「コト」に移行している、という認識をよく耳にします。しかしながら、デザインは本来的に「ヒト」が生活を豊かにするために行われる行為である、と考えるならば、「モノ」を「ヒト」に提供することによって、「ヒト」に「コト」を提供する、ということになろうかと思います。
 
 Gマークの主催機関である日本デザイン振興会は、そのホームページで次のように記述しています。
 
 『 デザインにおいてモノとコトは「何に着目しているのか?」の違いと我々は考えます。モノは「コトを成す手段」のひとつであり、コトは目的である。これが、我々が考えるモノとコトの違いです。例えば、かつて一世を風靡したモノにウォークマンがあります。モノとしてこれを見ると携帯型音楽プレーヤーですが、その向こう側には「歩きながら音楽を聴きたい」という目的が見えます。これがコトです。そして、携帯型音楽プレーヤーというモノを提供することによってコトが達成できる。これがモノとコトの関係性です。
 
 ではこの時、デザイナーは何をデザインしたと考えるのでしょうか、それはコトとモノの両方をデザインしたというのが我々の考え方です。正確に述べるならば「コトをモノという手段を用いてデザインした」という解釈をします。グッドデザイン賞の審査で考えた場合、まずコトの適正を問い、それを前提にモノの適性を問う。このような考え方をします。つまり、デザインにおいてモノとコトは二分するものではなく常に同時に見続けるべきものであり、モノは手段であるがゆえに有形か無形かは問わないというのが我々の考え方です。』
 
 ここで注目すべきことは、「モノは手段であるがゆえに、有形か無形かは問わない」というところです。「モノ」であって「物」ではない。デザインの創作活動が、「ヒトに提供するコト」を考え、そのための手段として「モノ」を創り出すことということができるので、「モノ」こそがデザインの成果物と言ってよいでしょう。「コト」だけでデザインが完結することは考えにくいと思うところです。
 
 では、なぜ「コトのデザイン」が強調され、デザインの対象が「モノ」から「コト」に移行していると言われるのでしょうか。
 
 おそらく、デザインの成果物が「有形」の「物」ではなく「無形」であることが増加していること、他方、意匠法の保護対象が旧態依然の「物品」であることに起因しているからではないでしょうか。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ノウハウ管理 知財経営の実践(その11)

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...


技術企業の高収益化: 顧客要望対応で減益になる

◆ 経営者は増益の仕組みに集中する ー 管理者は顧客要望に忙殺 1、顧客要望対応で減益になる  「中村さん、来年度の受注が全て確定しましたよ」クラ...

◆ 経営者は増益の仕組みに集中する ー 管理者は顧客要望に忙殺 1、顧客要望対応で減益になる  「中村さん、来年度の受注が全て確定しましたよ」クラ...


デザインによる知的資産経営:「知的資産」を活用する経営(その1)

1.「デザイン」と「知的資産」  「デザインによる知的資産経営」連載の目的は、主として中小企業がイノベーションを継続できる経営体質をつくり出すための...

1.「デザイン」と「知的資産」  「デザインによる知的資産経営」連載の目的は、主として中小企業がイノベーションを継続できる経営体質をつくり出すための...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
男気のある仕事で発明の質が変わる

 仕事柄、私はいろいろな会社の方と会食をする機会があります。私の仕事のほとんどが技術系であることから、会食の相手は男性であることが多く、そこに時々女性...

 仕事柄、私はいろいろな会社の方と会食をする機会があります。私の仕事のほとんどが技術系であることから、会食の相手は男性であることが多く、そこに時々女性...


特許出願とその後の展開

    研究開発の仕事の中で、特許を調査する、出てきた結果で特許出願を行う、ということは日常的に行われています。私の場合は、昔は多い...

    研究開発の仕事の中で、特許を調査する、出てきた結果で特許出願を行う、ということは日常的に行われています。私の場合は、昔は多い...


特許情報の見える化と解析で何が出来るのか

♦提案可能な特許情報の見える化事例  パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する...

♦提案可能な特許情報の見える化事例  パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する...