工場内のレイアウト(設備配置)とその手順

 
【目次】
     

    1. 設備レイアウトの重要性

     
     工場内には多くの設備が設置されていますが、機能的にレイアウトすることで、付加価値を生まない運搬距離を短くすることができ、場合によっては工程間の仕掛り(ストックポイント)を無くして、リードタイムを短縮することも可能です。
     
     ある製品を生産するには最適なレイアウトが、別の製品には理想からかけ離れたレイアウトとなることもあり、全体最適=総コスト最小になるように設計する必要があります。
     

    2. 設備レイアウトの大まかな分類

     
     生産の要求によってレイアウトも様々であり、次の4種類が代表的なものです。
     

    (1)ジョブショップ型レイアウト

     
     同じ種類の設備を同じ場所に集合して配置します。多品種少量生産に向き、需要の変化に応じた柔軟な対応が可能ですが、搬送距離が長くなり、仕掛り状況が判別しにくいといった問題もあります。中小の加工業はこのタイプが多いように感じます。
     

    (2)ライン型

     
     工程の流れにそって設備を配置します。少品種大量生産に適していますが、品種の大きな変更は苦手です。直線ラインだけでなく、作業者の移動を減らしたU字ラインもあります。異なる品種を、一部の設備を切り替えながら生産することもあり、近年の自動車組み立てラインでは、全く異なる車種を切り替え作業なしで流す完全混流ラインも実現しています。一人の作業者の担当作業種類が少ないので、習得期間が短いという特徴もあります。
     

    (3)据え置き型

     
     船や、飛行機、そこまでではなくとも大きくて動かせないようなものを作る際に、設備や人が製品を取り巻いて、加工、組み立てなどの作業を実施します。製品を動かせないのですから、必然的にそうなります。
     

    (4)セル型

     
     中央に核があり、周りを膜が囲っている細胞(セル)のように一人あるいは少人数の作業者の周りに設備を配置して、全工程を一か所で完結するレイアウトもしくは生産形態です。一人が多くの作業に習熟する必要がありますが、自分で作ったという充実感があり、品種や数量の変更にも比較的柔軟に対応可能です。
     
     生産形態と生産量、受注のタイミングとの関係は下の図1のようになります。
     
      
     図1. 生産の条件と形態
     
     この図の中で、個別生産は据え置き型かジョブショップレイアウト、ロット生産はジョブショップ型、連続生産はライン型レイアウトが適していますが、絶対ということはありません。
     
     また図1中のBTO(Build to Order)生産は、図2のように生産途中までを見込み生産して中間仕掛品を在庫し、受注仕様に従って最終的に仕上げて出荷することで、製品在庫減少と短納期を両立させる方法です。
     
     PCメーカー米デルコンピュータ―が有名ですが、コレットチャック製造の中小企業であるエーワン精密も、同様の生産形態を採用して短納期を実現しています。
     
      
     図2. BTO(Build to Order)生産
     

    3. 合理的なレイアウト手順SLP(Systematic Layout Planning)

     
     工場のレイアウトを一旦決めてしまうと、簡単には変更ができませんから、初めのレイアウトは慎重に決める必要があります。そのための一つの方法が図3に示すSLP(Systematic Layout Planning:体系的レイアウト計画)と呼ばれる方法で、以下のような手順で実行します。
     
      
    図3.合理的なレイアウト手順SLP
     

    (1)P-Q分析(Product-Quantity分析)

     
     工場内で生産する製品(Product)の種類と数量(Quantity)を、多いものから順に並べて整理します。その結果から、図1のように1品種当たりの数量が多いものは「製品別配置=ライン生産」、数量が少ないものは「機能別配置=ジョブショップレイアウト」が適していると判断します。
     

    (2)物の流れ分析

     
     製品別配置を決めるために、生産工程の流れを図示します。
     

    (3)アクティビティ分析

     
     機...
    能別配置の場合は、加工だけに限らず、搬送、仕掛保管含めて、作業や活動(アクティビティ)の種類と量を分析します。
     

    (4)アクティビティ相互関連ダイヤグラム

     
     上記(3)で活動項目を抽出したら、それぞれの活動間の関連度を相対的に評価します。関連度の高い活動同士を近距離に配置することで、人や物の移動距離を短くするためです。設備だけでなく、通用口、食堂やトイレも評価の対象とします。
     

    (5)面積評価

     
     この段階で各活動単位に必要な面積と、実際に利用することのできる面積を算出します。後者が大きい場合は適切な場所に余裕度を設定すれば良いのですが、前者が大きい場合は、例えば生産品目を減らすなど、ここまでの作業をやり直して面積を削る必要が出てきます。
     

    (6)スペース相互関連ダイヤグラム

     
     いくつかのアクティビティをまとめて配置したスペースを、他のスペースとの関連度で相対評価します。ここでも関連度の高いスペース同士は、配置を近づけます。
     

    (7)各種条件考慮

     
     ここまでに考慮しなかった各種条件を加味して、最終調整します。
     

    (8)レイアウト案の作成と選択

     
     複数の案を作成した後、多面的な観点から一案に絞ります。
     
     レイアウトは頻繁に変更できないだけに、以上の原則を参考に実行し、生産性の向上を実現してください。
     
    ◆関連解説『生産マネジメントとは』

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