フッ素樹脂塗料、選択のポイントとは (その2)フッ素樹脂塗料の選択

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  フッ素
 
 前回のその1に続いて解説します。
 

4. フッ素樹脂塗料の選択

 
 フッ素樹脂塗装を施す場合、フッ素樹脂塗装を専門とする業者に依頼する場合が多いと思います。しかし、フッ素樹脂塗装を行う品物が開発中のものである場合や生産設備の一部である場合、依頼者側は機密保持の観点からその目的や機能を充分に塗装業者に伝えられない場合があると思います。また、仮に塗装業者に塗装する部品の機能や塗装の目的を充分に伝えたつもりでも依頼者側の意図が充分伝わらないことも考えられます。
 
 フッ素樹脂塗装を塗装業者に外注する場合あるいは社内で塗装を実施する場合のどちらにおいても以下の観点でフッ素樹脂塗料を選択することをお薦めします。
 

(1) 費用

 
 単純に初期の塗装費用だけではなく、塗装した製品の耐久性、メンテナンスコスト、廃棄コストまで含めたライフサイクルコストを考慮する必要があります。
 

(2) 塗料の供給

 
 スポット的にフッ素樹脂コーティングを施すのであれば別ですが、量産品や継続的にフッ素樹脂塗装を施す必要がある場合は、安定的に供給される塗料を選択する必要があります。
 

(3) 機能、性能

 
 フッ素樹脂コーティングする品物の機能と使用条件、使用環境を考慮してフッ素樹脂塗料を選択する必要があります。例えば、常時200℃程度の温度下で摺動される部品であれば、摩擦係数と耐摩耗性、耐熱性が塗料選択のポイントになるはずです。この時、耐熱性の点から選択肢としては溶融型か変性型の塗料ということになり、特に耐熱性を重視するのであればPTFE樹脂系の塗料を選択することが望ましいということになります。
 

(4) 外観、意匠性

 
 工業部品の場合、機能は重要ですが、塗装面の光沢や色調といった外観も無視できない場合があります。また、光沢や表面粗さ等の表面形状は外観だけではなく、摩擦や撥水、撥油性等の表面特性に影響を与えるので注意が必要です。
 

(5) 被塗物への影響

 
 被塗物への影響については非常に重要で、特にフッ素樹脂塗料が高温焼き付けを必要とする場合が多いことから被塗物の耐熱性を考慮する必要があります。被塗物の材質が汎用樹脂の場合、溶融型や変性型のフッ素樹脂塗料は焼成温度が高いのでこれらの塗料を用いることは難しく、反応型あるいは乾燥型の塗料を選択する必要があります。また、被塗物が金属製であっても、PTFE樹脂、PFA樹脂系の塗料は特に焼成温度が高いので熱による変形や機械的特性の変化に注意する必要があります。2種類以上の金属の接合部品であれば、熱膨張率の差による変形にも注意しなければなりません。
 
 また、被塗物が樹脂製品の場合には、塗料中の溶剤によって被塗物が溶解したりクラックが入る場合があります。被塗物の材質と塗料中の含有溶剤の種類に注意する必要があります。
 

(6) 加工性、施工性

 
 塗装方法としては、粉体塗料であれば静電塗装が、液体塗料であればエアスプレー塗装が一般的です。静電塗装を行うには被塗物にアースを取る必要があり、被塗物は通常金属製であることを前提とします。通常のスプレー塗装の場合、被塗物のアースは不要ですが、塗装の際に被塗物を保持する部分が必要になります。
 

(7) 作業安全性

 
 塗装作業を実施する際の問題になりますが、有機溶剤系の塗料を用いる場合には火気や静電気の発生、作業者の塗料吸引や皮膚への接触、異臭等に注意すると同時に、周辺環境に与える影響などを考慮する必要があります。
 

(8)環境に与える影響

 
 粉体塗料や水系塗料は揮発性有機化合物VOC(Volatile Organic Compounds)削減には有効です。但し、水性塗料でも有機揮発成分を含む場合が多く、VOC非含有という訳ではありません。また、プライマーを用いる場合にはプライマーのVOCも考慮する必要があります。
 

(9) 被塗物に関する知的財産の侵害

 
 塗料としては知的財産上問題がなくともフッ素樹脂塗料を塗装した製品が他社の知的財産を侵害する場合があります。塗料メーカーや塗装会社がコーティング後の製品の知...
 
  フッ素
 
 前回のその1に続いて解説します。
 

4. フッ素樹脂塗料の選択

 
 フッ素樹脂塗装を施す場合、フッ素樹脂塗装を専門とする業者に依頼する場合が多いと思います。しかし、フッ素樹脂塗装を行う品物が開発中のものである場合や生産設備の一部である場合、依頼者側は機密保持の観点からその目的や機能を充分に塗装業者に伝えられない場合があると思います。また、仮に塗装業者に塗装する部品の機能や塗装の目的を充分に伝えたつもりでも依頼者側の意図が充分伝わらないことも考えられます。
 
 フッ素樹脂塗装を塗装業者に外注する場合あるいは社内で塗装を実施する場合のどちらにおいても以下の観点でフッ素樹脂塗料を選択することをお薦めします。
 

(1) 費用

 
 単純に初期の塗装費用だけではなく、塗装した製品の耐久性、メンテナンスコスト、廃棄コストまで含めたライフサイクルコストを考慮する必要があります。
 

(2) 塗料の供給

 
 スポット的にフッ素樹脂コーティングを施すのであれば別ですが、量産品や継続的にフッ素樹脂塗装を施す必要がある場合は、安定的に供給される塗料を選択する必要があります。
 

(3) 機能、性能

 
 フッ素樹脂コーティングする品物の機能と使用条件、使用環境を考慮してフッ素樹脂塗料を選択する必要があります。例えば、常時200℃程度の温度下で摺動される部品であれば、摩擦係数と耐摩耗性、耐熱性が塗料選択のポイントになるはずです。この時、耐熱性の点から選択肢としては溶融型か変性型の塗料ということになり、特に耐熱性を重視するのであればPTFE樹脂系の塗料を選択することが望ましいということになります。
 

(4) 外観、意匠性

 
 工業部品の場合、機能は重要ですが、塗装面の光沢や色調といった外観も無視できない場合があります。また、光沢や表面粗さ等の表面形状は外観だけではなく、摩擦や撥水、撥油性等の表面特性に影響を与えるので注意が必要です。
 

(5) 被塗物への影響

 
 被塗物への影響については非常に重要で、特にフッ素樹脂塗料が高温焼き付けを必要とする場合が多いことから被塗物の耐熱性を考慮する必要があります。被塗物の材質が汎用樹脂の場合、溶融型や変性型のフッ素樹脂塗料は焼成温度が高いのでこれらの塗料を用いることは難しく、反応型あるいは乾燥型の塗料を選択する必要があります。また、被塗物が金属製であっても、PTFE樹脂、PFA樹脂系の塗料は特に焼成温度が高いので熱による変形や機械的特性の変化に注意する必要があります。2種類以上の金属の接合部品であれば、熱膨張率の差による変形にも注意しなければなりません。
 
 また、被塗物が樹脂製品の場合には、塗料中の溶剤によって被塗物が溶解したりクラックが入る場合があります。被塗物の材質と塗料中の含有溶剤の種類に注意する必要があります。
 

(6) 加工性、施工性

 
 塗装方法としては、粉体塗料であれば静電塗装が、液体塗料であればエアスプレー塗装が一般的です。静電塗装を行うには被塗物にアースを取る必要があり、被塗物は通常金属製であることを前提とします。通常のスプレー塗装の場合、被塗物のアースは不要ですが、塗装の際に被塗物を保持する部分が必要になります。
 

(7) 作業安全性

 
 塗装作業を実施する際の問題になりますが、有機溶剤系の塗料を用いる場合には火気や静電気の発生、作業者の塗料吸引や皮膚への接触、異臭等に注意すると同時に、周辺環境に与える影響などを考慮する必要があります。
 

(8)環境に与える影響

 
 粉体塗料や水系塗料は揮発性有機化合物VOC(Volatile Organic Compounds)削減には有効です。但し、水性塗料でも有機揮発成分を含む場合が多く、VOC非含有という訳ではありません。また、プライマーを用いる場合にはプライマーのVOCも考慮する必要があります。
 

(9) 被塗物に関する知的財産の侵害

 
 塗料としては知的財産上問題がなくともフッ素樹脂塗料を塗装した製品が他社の知的財産を侵害する場合があります。塗料メーカーや塗装会社がコーティング後の製品の知的財産まで保証してくれることはまずあり得ません。塗装製品が他社の知的財産を侵害する可能性がないかどうか自社で調査する必要があります。
 
 

5. 業者に相談する前に

 
 以上、フッ素樹脂塗料の種類とフッ素樹脂塗料を選択する観点について説明致ました。実際には何度か繰り返してフッ素樹脂塗料を決めていくことになると思いますが、根拠のない試行錯誤はお金と時間の無駄です。信頼できる業者を選ぶことと自分たち自身でもある程度の知識を身に付けた上で業者と相談するのが近道です。
 
【参考文献】
環境対応形フッ素樹脂塗料 ‐粉体形・水性形‐ 旭硝子研究報告 65p(2015年)
 

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この記事の著者

平山 中

フッ素樹脂コーティング、シリコーンの応用など表面技術のことで困ったらご相談下さい!

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