イオン交換樹脂とは?仕組みや種類、実用例と市場規模について解説

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イオン交換樹脂とは?仕組みや種類、実用例と市場規模について解説

【目次】

    例えば地下水など、イオンを含んだ水を陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂に通すと、水の中の両イオンはイオン交換樹脂によって除去され、イオン交換によって生じたH+とOH-は直ちに中和します。これが純水になるということですが、これは正しくは脱イオン水で、非電解質の有機物を完全に除去できたわけではありません。

     

    イオン交換樹脂はこの水処理ばかりではなく、金属や有価物の回収精製、触媒、高純度薬品や電子材料の高品質化、食品・飲料の分離精製プロセスなどにも幅広く応用されています。

     

    このような背景を踏まえて、今回はイオン交換樹脂の概要を解説します。

    ◆関連解説記事『プラスチックの強度設計とは、曲げ弾性率・ヤング率』

     

    1. イオン交換樹脂とは?

    イオン交換樹脂とは、特定のイオンを吸着し、他のイオンと交換する能力を持つ合成樹脂のことです。主に水処理や化学プロセス、化学分析、医療分野などで利用されます。イオン交換樹脂はポリマーの網目構造を持ち、その中に特定のイオンが固定されています。これにより、溶液中のイオンと結合し、交換反応を行うことができます。

     

    イオン交換樹脂には大きく分けて、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の2種類があります。陽イオン交換樹脂は、陽イオン(例えば、ナトリウムやカルシウム)を吸着し、他の陽イオンと交換します。一方陰イオン交換樹脂は、陰イオン(例えば、塩素や硫酸)を吸着し、他の陰イオンと交換します。

     

    この特性を利用することにより、硬水を軟水に変える過程や、特定の化合物を分離・精製するプロセスにおいて重要な役割を果たしています。イオン交換樹脂は、環境保護や資源回収の観点からも注目されており、持続可能な技術の一環としてますます重要になっています。

     

    (1)イオン交換樹脂は身近な存在

    イオン交換樹脂は、さまざまな分野で広く利用されています。身近な例をいくつか挙げます。

    • ①水の軟化・・・家庭用の水軟化装置では、イオン交換樹脂が使われています。硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムイオンをナトリウムイオンと交換することで、洗剤の泡立ちを良くしたり、配管のスケール(析出物)を防いだりします。
    • ②飲料水の浄化・・・一部の浄水器や浄水システムでもイオン交換樹脂が使用されています。特定のイオンの選択的吸着により、水中の不純物や有害物質を取り除くことができます。
    • ③医療分野・・・医療用の透析装置でもイオン交換樹脂が利用されています。血液中の不要・有害な物質を除去するために、特定のイオンを選んで交換する役割を果たします。
    • ④食品業界・・・食品の製造過程でもイオン交換樹脂が使われることがあります。例えば調味料や飲料の製造において、特定の成分を調整するために使用されます。
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    2. イオン交換の仕組み

     

    イオン交換作用を持つ物質(イオン交換体)のうち合成樹脂をイオン交換樹脂と呼び、分子構造の一部にイオン交換基として電離する構造を持っています。イオン交換樹脂は、主に直径約0.5mm程度の球状の外観をしたビーズの形で利用され...

    イオン交換樹脂とは?仕組みや種類、実用例と市場規模について解説

    【目次】

      例えば地下水など、イオンを含んだ水を陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂に通すと、水の中の両イオンはイオン交換樹脂によって除去され、イオン交換によって生じたH+とOH-は直ちに中和します。これが純水になるということですが、これは正しくは脱イオン水で、非電解質の有機物を完全に除去できたわけではありません。

       

      イオン交換樹脂はこの水処理ばかりではなく、金属や有価物の回収精製、触媒、高純度薬品や電子材料の高品質化、食品・飲料の分離精製プロセスなどにも幅広く応用されています。

       

      このような背景を踏まえて、今回はイオン交換樹脂の概要を解説します。

      ◆関連解説記事『プラスチックの強度設計とは、曲げ弾性率・ヤング率』

       

      1. イオン交換樹脂とは?

      イオン交換樹脂とは、特定のイオンを吸着し、他のイオンと交換する能力を持つ合成樹脂のことです。主に水処理や化学プロセス、化学分析、医療分野などで利用されます。イオン交換樹脂はポリマーの網目構造を持ち、その中に特定のイオンが固定されています。これにより、溶液中のイオンと結合し、交換反応を行うことができます。

       

      イオン交換樹脂には大きく分けて、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の2種類があります。陽イオン交換樹脂は、陽イオン(例えば、ナトリウムやカルシウム)を吸着し、他の陽イオンと交換します。一方陰イオン交換樹脂は、陰イオン(例えば、塩素や硫酸)を吸着し、他の陰イオンと交換します。

       

      この特性を利用することにより、硬水を軟水に変える過程や、特定の化合物を分離・精製するプロセスにおいて重要な役割を果たしています。イオン交換樹脂は、環境保護や資源回収の観点からも注目されており、持続可能な技術の一環としてますます重要になっています。

       

      (1)イオン交換樹脂は身近な存在

      イオン交換樹脂は、さまざまな分野で広く利用されています。身近な例をいくつか挙げます。

      • ①水の軟化・・・家庭用の水軟化装置では、イオン交換樹脂が使われています。硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムイオンをナトリウムイオンと交換することで、洗剤の泡立ちを良くしたり、配管のスケール(析出物)を防いだりします。
      • ②飲料水の浄化・・・一部の浄水器や浄水システムでもイオン交換樹脂が使用されています。特定のイオンの選択的吸着により、水中の不純物や有害物質を取り除くことができます。
      • ③医療分野・・・医療用の透析装置でもイオン交換樹脂が利用されています。血液中の不要・有害な物質を除去するために、特定のイオンを選んで交換する役割を果たします。
      • ④食品業界・・・食品の製造過程でもイオン交換樹脂が使われることがあります。例えば調味料や飲料の製造において、特定の成分を調整するために使用されます。
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      2. イオン交換の仕組み

       

      イオン交換作用を持つ物質(イオン交換体)のうち合成樹脂をイオン交換樹脂と呼び、分子構造の一部にイオン交換基として電離する構造を持っています。イオン交換樹脂は、主に直径約0.5mm程度の球状の外観をしたビーズの形で利用されますが、他に繊維状や液状、膜状(イオン交換膜)の形でも利用されています。イオン交換樹脂には、陽イオンを交換する陽イオン交換樹脂と、陰イオンを交換する陰イオン交換樹脂があります。この2種類の樹脂を単独または混合して利用します。

       

      【陰イオン交換樹脂】

      ポリスチレン分子中に強塩基性を示すトリメチルアンモニウム基などをつけ、アルカリ処理しておくと、樹脂中に水酸化物イオンをもつようになります。このイオンは水溶液中の他の陰イオンと交換するはたらきをもちます。これが陰イオン交換樹脂です。

       

      【陽イオン交換樹脂】

      酸性を示す官能基として分子中にスルホ基やカルボキシ基などを含む水に溶けにくい合成樹脂は、水溶液中の他の陽イオンと官能基から電離した水素イオンを交換することができます。陽イオン交換樹脂はこのような樹脂です。この樹脂の例として、ポリスチレンスルホン酸があります。

       

      3. イオン交換樹脂の種類は主に3つ

      次のイオン交換樹脂は、それぞれ異なる用途や機能を持っており、さまざまな分野で活用されています。

      (1)カオチン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)

      • 概要・・・カオチン交換樹脂は、陽イオンを交換するための樹脂です。一般的には、スルホン酸基(-SO₃H)を持つポリマーが使用されます。これにより陽イオン(例えば、Na⁺、Ca²⁺、Mg²⁺など)を捕らえ、他の陽イオンと交換することができます。
      • 機能・・・主に水の軟化や不純物の除去に使用されます。例えば硬水中のカルシウムやマグネシウムイオンをナトリウムイオンと交換することで、軟水を得ることができます。また、工業プロセスや水処理においても重要な役割を果たします。

       

      (2)アニオン交換樹脂(陰イオン交換樹脂)

      • 概要・・・アニオン交換樹脂は、陰イオンを交換するための樹脂です。一般的には、四級アンモニウム基(-NR₄⁺)を持つポリマーが使用されます。これにより陰イオン(例えば、Cl⁻、SO₄²⁻、NO₃⁻など)を捕らえ、他の陰イオンと交換することができます。
      • 機能・・・水処理や化学分析において、特定の陰イオンを除去したり分離したりするために使用されます。例えば、飲料水から有害な陰イオンを除去するために利用されることがあります。

       

      (3)キレート樹脂(選択性樹脂)

      • 概要・・・キレート樹脂は特定の金属イオンと強く結合する能力を持つ樹脂です。これらの樹脂は、特定の金属イオン(例えば、銅、鉛、カドミウムなど)を選択的に捕らえることができます。キレート剤として機能する官能基を持っています。
      • 機能・・・環境浄化や金属回収に利用されます。特に重金属の除去やリサイクルプロセスにおいて重要です。また医療分野でも、体内の有害金属を除去するために使用されることがあります。

       

      4. イオン交換樹脂の再生

       

      イオン交換樹脂の反応は可逆反応で、これらは容易に起こる反応です。陽イオン交換樹脂は、使用済みの樹脂に希塩酸や希硫酸を通すともとに状態に戻ります。陰イオン交換樹脂は、使用済みの樹脂に濃い水酸化ナトリウム水溶液を通すともとの状態に戻ります。イオン交換樹脂の再生とは、この可逆反応を利用し使用済みのイオン交換樹脂をもとの状態に戻すことをいいます。

       

      5. イオン交換樹脂の実用例

       

      自らのイオンを水中に出し、代わりに水中に存在するイオンと交換するイオン交換樹脂の性質を利用して、水中に溶けてプラスやマイナスに帯電している塩類成分(カルシウム、ナトリウム、塩化物)など水中のイオンを取り除くことができます。

      【水道水の純水化】

      陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を混ぜて詰めた状態に上から水道水を少しずつ流し込むと、陽イオンは陽イオン交換樹脂、陰イオンは陰イオン交換樹脂に吸着されます。

       

      かわりに水素イオンと水酸化物イオンが交換されて出てきますので、中和されてただの水が下から出てきます。これが純水ということになります。この純水は脱イオン水と呼ばれます。

       

      また、この現象は純水を取り出すだけでなく、工業排水に含まれる有害金属イオンの処理などにも利用できます。ただしイオン交換樹脂では非イオン性の物質は除去できませんので、非電解質除去には蒸留を行うことが必要です。

       

      【イオン交換水】

      イオン交換水は、水道水をイオン交換樹脂に通して精製する水です。水道水に含まれるイオン成分を取り除いて純度の高い水に精製するので、一般家庭用の浄水機として普及しています。

       

      【その他実用例】 

      • ①廃水処理・・・工業廃水や排水の中から有害な重金属イオンを除去するために使用されます。これにより、環境への影響を軽減できます。
      • ②食品産業・・・食品の製造過程で、特に飲料水や乳製品の製造において、ミネラルバランスを調整するために使用されます。
      • ③医療分野・・・血液透析において、患者の血液から不要・有害なイオンを除去するためにイオン交換樹脂が利用されることがあります。
      • ④化学分析・・・分析化学において、サンプル中の特定のイオンを選択的に除去したり、濃縮したりするために使用されます。
      • ⑤農業・・・・・土壌改良や肥料の効果を高めるために、イオン交換樹脂を用いて土壌中の栄養素の保持能力を向上させることがあります。

      これらの例からもわかるように、イオン交換樹脂はさまざまな分野で重要な役割を果たしています。

       

      6. イオン交換樹脂の市場規模

       

      イオン交換樹脂の市場は、アジア太平洋地域の都市化と原子力需要の増加が市場を牽引する要因です。市場規模は、2025年には22億米ドルへと拡大が予測されています。

       

       (1)水需要でイオン交換樹脂の市場が急成長 

      世界中の様々な国が、原子力発電に代表されるより持続可能な電力源を求めており、その容量を増やすための措置を講じています。イオン交換樹脂は電力、化学・石油化学を含む様々な産業で重要な役割を果たしており、中でも電力産業では補給水や復水の脱塩、核分裂生成物や腐食生成物の除去などの目的で最も消費されています。こうした傾向は、イオン交換樹脂の市場の押し上げに貢献するでしょう。

       

      (2)カチオン性樹脂が最大シェア

      カチオン性樹脂は、脱アルカリ、高塩水処理、脱塩など幅広い最終用途産業で使用されています。カチオン性樹脂は、イオン交換樹脂の種類別セグメントで最大のシェアを占めており、その優位性が続くと予想されます。アジア太平洋 (APAC)、中東・アフリカ、南米などの発展に伴い、様々な産業分野でイオン交換樹脂の需要の増加が予想されています。

       

      7. まとめ

      イオン交換樹脂が使われる前には、蒸留、ろ過、化学的沈殿法(特定の化学薬品を加えて不純物を沈殿させる方法)が代用されていました。イオン交換樹脂は、これらの方法に比べて効率的に特定のイオンを除去できるため、広く利用されるようになりました。

       

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      この記事の著者

      嶋村 良太

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