今回は、次のような事例により、樹脂材料の熱による変形を解説します。
1. 電子基板での事例
ポリウレタン樹脂の成形で電子基板を包んでいるのですが、ある部分だけ熱でわずかに平面に盛り上がりが確認できます。X線で見ると膨張しているようです。電子部品からの熱は80℃程度です。ポリウレタンの仕様書では使用範囲は-40°C to +130°Cで許容できそうです。気になる点として、変形している個所は樹脂の厚みはおおよそ、1㎜程度で、他の部分(3㎜-5㎜)に比べて薄いのです。色々調べるとポリウレタンの熱変形温度は、80℃付近と書かれている資料もありました。
推測として樹脂の熱い部分はでは熱を加えても耐量があり変形しないが、薄い部分では体積に対しての熱量が大きくて変形が発生したと考えております。また、その時の周囲温度も70℃程度です。この考えは正しいのでしょうか?使用範囲の上限での130℃超えていない事に矛盾しないでしょうか?この状態でのエージング時間は6時間程度ですが、続ければより変形は進む可能性はありそうでしょうか?(仕様書には熱変形温度の記載なし。試験は1.5㎜で難燃試験 RTI=130℃と記載。)
ポリウレタン樹脂の仕様書の使用温度は、どの程度の変化まで保証しているのかが謎です。と言うのも、同じようなポリウレタン樹脂製品のホースは上限が80℃程度です。ポリウレタン樹脂の熱変形温度は70℃程度の資料もネツトでは拾えます。尚、変形後に隙間はできていないようです。単に厚みが増して、冷えても戻らないようです。やはり断面観察する必要があるのかと考えています。
2. 樹脂材料の熱よる変形の考察
成型した樹脂材料が熱によって変形する原因は多数あり、次のようなことが考えられます。
(1) 樹脂の熱劣化によるもの(酸化、熱分解等)
(2) 熱により樹脂の剛性が低下し、外力によって変形するもの(劣化ではない)
(3) 樹脂成型の際に発生した内部応力によるもの(主に熱可塑性樹脂)
(4) 化学反応による架橋密度、体積収縮等の変化に伴う内部応力によるもの(熱硬化性樹脂)
(5) 熱膨張によるもの
(6) 異種材料との接合による熱応力によるもの
(1)~(4)によるものであれば、製品を室温まで冷却しても変形は維持されます。(5)(6)によるものであれば製品を冷却すれば変形は緩和されるはずです。
気になるのは、電子基板をポリウレタン樹脂で包まれている事例で、このように異なる材料を接合した場合、それぞれの材料の線膨張率は異なるので、温度上昇した時に熱膨張量の違いから熱応力が発生し、製品を変形させる場合があります。更にポリウレタン樹脂の肉厚の異なる部分に応力が集中し、変形しやすくなることも考えられます。
以上より、この事例では、次の点を確認されることが重要です。