【目次】
第5章 マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章 マトリックス図法の使い方
第7章 系統図法の使い方
第8章 アロー・ダイヤグラム法の使い方
第10章 PDCA-TC法の使い方←今回
第10章 PDCA-TC法の使い方
10.2 PDCA-TC法とは
10.2.4 用途
当初は、開発の経緯で説明したオリジナルの使い方だけでしたが、その後いろいろな局面で活用してきましたが、最終的に次の3つにまとめることができます。
(1) 複雑な問題解決経過のまとめ
オリジナルの用途であり、開発経緯で説明したような特徴を持つ経過内容の説明は、チャート形式(図形)で全貌を示した上で必要個所の詳細説明をする形でないと、事の本質が伝わらないのは前述の通りです。
ところで、そこでは効果の顕著さとして“部長への説明が30分で済んだ”ことをあげていますが、それは、資料そのものの見やすさもさることながら、その部長が資料を見るなり、「判断の欄」を指でなぞって順次チェックし、関心があるか疑問を感じるかした「判断」についてのみさかのぼって、“結果”や“計画”の詳細説明を求めるという資料の見方によるところが大きく、はじめて見た資料をこのように使いこなす姿に畏敬の念を禁じ得なかったのを覚えています。これは、PDCA-TCの見方の1つでもあり参考にして下さい。
(2) PDPC法のフォロー
N7誕生前であった開発時には思いもかけないことでしたが、PDPCで見通しを立てた事柄の実施状況を、PDCA-TCでフォローすると、不測事態への対応状況が明快に記録されるだけでなく、PDPCのチェックやレベルアップも期待できるのです。
というのは、PDPCは、論理的展開が基本ですが、作図がフリーなので、時として思い込みが入り込む余地がありますが、記入ルールが厳密なPDCA-TCでフォローしつつ、PDPCの一歩先を見るようにすると、もしそこに論理の飛躍や誤りがあると、見抜くことのできる可能性が高いのです。これは、その後用途として加わったPDCA-TCの持つ計画的な側面が作用しているものと思われます。いま一つ、このジャンルの用途で有用なのは、ナレッジマネジメント(KM)上の位置づけです。
というのは、技術開発や大がかりなプロジェクトのように、多くの不確定要素をクリアして完結した物事は、成果としての結果だけではなく、結果に至るまでの紆余曲折の伝承が、KM上重要となりますが、そういったニーズに応えることができるのです。
もちろん、最終結論の詳細は、リポートや論文の形にするわけですが、プロセスの流れ、特に、通常はなかなか伝わらない紆余曲折の中での失敗に関する諸経験が一目瞭然となり、その中で注目する必要な項目は、注記を辿ってリポートや論文に行き着くことができるわけで、最近注目されている“失敗経験の伝承”という点からも有用です。
(3) PDPC法の1パターンとしての活用
使用対象である不測事態の分類から、PDPCを4つのタイプに分けた前章の図9-2におけるC、Dゾーンの計画立案用としての活用であり、PDCA-PC、すなわち、PDCA-ProgramingChartとしての活用です。
特にDゾーンに類する、実験を繰り返す開発計画のような場合は、実験結果が分からないから不確定とはいうものの、実験は、理論的推定や仮説の検証といえるので、起こり得る結果とそれに対する技術的判断は、よほどのことがない限り、かなりのところまで事前に分かるものです。
それを、PDCA-TCのチャートに従って推定・記入することにより、緻密で、効率のよい計画立案につながることが期待できるのです。
このジャンルは本来、PDPCが最適であることには変わりないのですが、作成したPDPCの中で、徹底した緻密さが求められる部分についての適用や、前章の表9-2のBゾーンのテーマで、時間的余裕があり、緻密さが要求されるような場合については有用です。
使用するシートは同じでよいのですが、計画内容からいって、各ステップにおける判断や結論が複数になるので、使用対象に特化した表現の工夫が必要です(PDCA-TCの記入例を図10-2に示しているが、その中で結論の表示を2種類設けて見やすくしているのは一例です)。
10.3 PDCA-TCの作り方
10.3.1 標準シートの使用
この手法のポイントは、物事のトレースや計画において起こりやすい“独断”と“偏見”を排すことにより、思考の漏れ、飛躍をなくし、結果として関係者以外の人にも分かりやすい、科学的なトレースや計画を行おうとする点にあります。
その目的を達成するための、着実にして論理的なトレースや計画をガイドするのがこの標準シートです。標準シートのポイントは、PDCAをトレースするために7つのステップ(入手情報、調査、計画、実施、結果、判断、結論)と備考欄を設けている点です。ただ、使用目的が、厳密さより、物事の大きな流れの把握が主体の場合は、アロー・ダイヤグラム法のように、ステップを統合したり、省略した方が分かりやすい場合もあるので、標準シートの趣旨が把握できたら、ニーズに...