【第2章 中国工場の実状を知る】
【日本人駐在員について】
前回のその14に続いて解説します。
◆ 中国工場のトップは孤独
中国工場のトップである総経理や工場長は孤独です。
広東省のとある日系工場の総経理もそう感じていた一人でした。工場の従業員は500人くらいと中規模と言ったところで、本社から出張者が毎月来ているものの日本人は総経理本人一人だけでした。この総経理は営業畑が長く顧客対応や製品コストなどの管理には長けていました。また、中国経験もあり労務管理もそつなくこなしていました。ただ、技術面、品質管理面において得意ではないという思いがありました。
この工場は製造技術とその品質で顧客の信頼を得ていましたが、顧客のコスト要求は厳しさを増す一方で、既存製品のコストダウンに加え、使用する材料を見直すことで大幅なコスト削減を実現する廉価版の設計をして、その生産を要求してきました。材料を変更しても製品としての機能を下げることは許されませんでした。
使用する材料が大きく変わってしまったので、自社の製造条件や管理条件なども1から見直さなければならない。これについては本社のサポートで対応したのですが、試作品で顧客承認は取れたものの量産を始めてみると特性が満足出来ない事態となってしまいました。
生産が始まっているので主対応は工場側でした。ここで問われているのは技術的な対応や生産の条件設定、そしてその管理です。中規模な工場であるだけに総経理が陣頭指揮を取らなければ中国人スタッフも動きません。技術的な面が苦手な総経理はわからないながらも、自分なりに状況を整理して生産条件を設定するためのテスト指示を出し、その結果を見ては量産対応をしていました。
頑張ってはいたのだけれども、自分がやっているやり方が本当にいいのか、これで解決に向かうのか、本当はもっと違うやり方があるのではないかと言う思いが常に頭をよぎっていたそうです。本社から責任者として送り込まれているので、出来ないとは言えずに一人で苦闘 していました。ひょんなことから筆者に思いを切々と語ってくれたのでした。
本社にちゃんと言って応援をしてもらえばいいじゃないかと思った方もいると思いますが、そんな単純なことではないのです。工場トップとしてその立場に立つと、簡単に本社に応援を頼めない、工場サイドで何とかやらなくてはならないと考えるものです。
この総経理、労務管理はそつなくこなしていると書きまし...
次回は、(3) 部長・科長として駐在、から解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載