【連載目次】
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1. メカトロ設計(その1) 一寸先で擦り合わせ
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2. メカトロ設計(その2) 論より知恵、知恵は図面へ
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3. メカトロ設計(その3) はじめに「本質」、次に「基礎」
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4. メカトロ設計(その4) 「ニゲ」を設けずしてトラブルは減らず
『逃げる』…決していい言葉ではありません。しかし、産業機械の組立や加工には「ニゲ」という設計手法があります。
機械は、凸凹を使って部品と部品を締結し、組み立てるのが基本です。そこで、設計初心者がハっとさせられるのは「嵌合(かんごう)による干渉」すなわち、同じ凹の穴に同じ凸の軸を挿入できないことです。これは、工作精度によるもので、小さすぎるとうまく入らずに部品を傷つけてしまい、大きすぎると締結したときにガタついて、凸凹が機能しなくなります。しかも、部品の寸法には必ず製作誤差、バラツキがあります。
部品点数が多くなればなるほど、図面通りに組み立たてができず大騒ぎとなるわけです。これらを解決する手段の一つに「ニゲ」があります。ロボットに搭載される軸受は「ニゲ」を設けないと高精度に仕上げられません。また切削加工では、内角部の「ピン角」という不可能な形状加工があります。勘合部品で、隅アールが許容できない場合はニガシ形状を検討し、設計変更します。
このように「ニゲ」を利用してトラブルを回避し、すぐれた機能とコストダウンを図るのがプロの設計者です。
話は変わって「突然、社員が北海道へ逃げた」という相談をきっかけに「プロジェクトリーダーThe虎の巻」という異色本を出版した経緯があります。実際の現場では、逃げたくなるほど辛いことがあっても、うまく逃げられない技術者が実に多いのです。一方で、プロの設計者は必ず何らかの「逃げ方」を知っていて、あちこちで実践しているようです。逃げながら継続的に仕事ができるからプロなのでしょう。技術もしかり、仕事にも逃げ方のスキルは必須です。
【付録】メカトロ設計のなにそれ用語:二次電池
電池は、使い切りタイプの一次電池と充電して繰り返し使える二次電池(バッテリ)に区分されます。
バッテリの選定では、電圧(&tim...
容量は、動作のために流す電流と使用時間が決まるので計算が必要です。放電能力は、数値が大きいほど多くの電力を蓄えられ、大きな電流を出力できるので重要です。これを適当にすると、サイズ、重量、コストなどに反映されて損します。目的に合ったものを選定しましょう。