技術企業の高収益化: 日常業務のレベルアップを意識していますか

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知的財産マネジメント

◆ 日常業務のレベル向上こそが結果になる

 「このようにすれば、有意義な活動になるような気がします」この言葉は「技術戦略策定」という活動で、クライアントのご担当者(Aさん)が言われた言葉です。

 技術戦略策定のコンサルティングでは、特許を含め様々な情報収集をしていただいています。網羅的な情報収集を行うことで、自らが知らなかったことを知り、コア技術の用途を十分に探るためです。自分が知らなかったことを知ることは非常に重要なアイデアの源泉です。

 上記のAさんですが、しばらくはAさんもそれに従って情報収集していましたが、普段からかなりの情報を集めていました。技術戦略策定のためではないものの、実質的に同じような情報収集を実行していたこととなります。そのため普段から実施していることを、形を変えてやってもコンサルティングの場を有意義にすることが難しいとお感じになったようで、感じられた段階で私に相談がありました。

 実は、こうしたご相談があることは珍しいことではありません。なぜこうしたことが起こるかといえば、クライアント企業のレベルが反映されたものなのです。分かりやすくするために受験生に例えます。塾では受験生のレベル分けをするのが普通だと思います。レベルに応じて教える内容が違うからです。そのため塾では入塾時試験をすることによって学力を判定し、クラスを振り分けるのです。

 Aさんに話を戻すと、試験で高得点を出した受験生のように、普段の努力レベルが高いということが分かりました。私たちは次のような会話を交わしました。

  • Aさん 「網羅的に調べてみたのですが、これ以上網羅的に調べても実りが少ないように思います」
  • 私    「そうなんですね、このような情報収集を普段からやっておられるのですか」
  • Aさん   「網羅的にやっていたつもりはないのでやってみたのですが、結果としてはやっていたと評価できるようですね」
  • 私         「素晴らしい努力を普段からされているんですね」

 受験の例に戻ると、基礎が十分に出来たレベルの高い受験生が何をするかといえば、志望校に絞った学習ではないでしょうか?志望校の出題傾向を把握して、それに対応できる能力形成をできるようにするでしょう。

 技術戦略策定でも同じことです。出したいアイデアやテーマに沿った情報収集をすることになるのですが、Aさんと私はこのように続けて会話しました。

  • Aさん 「このままでは有意義にはならないのですが…」
  • 私        「確かに、このままではいけません。普段の努力が素晴らしいと分かったのですから、次にやるべきことは、当社に合った情報源を見つけることです」
  • Aさん   「情報源?」
  • 私        「そう、情報源です。心当たりはありませんか?」

 と、会話を続けているうちに、それまで渋い表情だったAさんのお顔が徐々にほぐれてきたのを記憶しています。最後にこのように言われて会話を締めくくりました。

  • Aさん   「このようにすれば、有意義な活動になるような気がします」

1、「技術戦略策定活動」

 ここで、技術戦略策定に関して少しだけ説明すると、技術戦略とは基盤技術を充実させるための計画を作る活動です。基盤技術とは製品またはサービスを作る技術(群)のことです。「技術プラットフォーム」ともいいます。技術企業では、将来どのような商品・サービスを作っていくかをイメージしながら、基盤技術を開発する計画を立てます。この計画を立てる活動が技術戦略策定です。

知的財産マネジメント

 Aさんの会社では、技術戦略をこれまで作ってこなかったため、行き当たりばったりと言っては何ですが、出たとこ勝負の基盤技術になっていました。そこで技術戦略策定をスタートさせたのですが、前述のような状況になりました。Aさんのように普段から情報収集をしている場合、ありきたりの情報では満足できないのです。

(1)「Bさんの例」

 Aさんと対照的な例があります。便宜的にこちらはBさんと言います。BさんはAさんのように情報収集をしていませんでした。技術戦略策定で型どおりの網羅的情報収集に取り組んでいただきました。しかし、Bさんの場合、次のようにAさんとは全く逆の反応を示されました。

  • Bさん 「こんなにたくさんの知らない情報がありました」
  • 私        「それは良かったですね。いいヒントになりましたか?」
  • Bさん   「ええ、とても良いヒントになりました」
  • 私        「これからが大変ですね」
  • Bさん   「そうなんです。アイデアがありすぎてしまって、ここからが大変です」

 BさんのケースではAさんとは異なり、アイデアがたくさん出てきて逆に大変になってしまいました。アイデアがたくさん出るのはとても良いことなのですが、アイデアを深掘りする作業量が多くて大変です。実はこの例は、技術戦略策定において最もよくあるパターンです。

 どういうことかといえば、普段から情報に触れていないので、知らない情報だらけなのです。受験生に例えると普段から勉強していないため、解けない問題がたくさんあるような状態です。受験とは異なり、技術の適用先がたくさんあるようにみえるのですが、検証し始めるといろいろと問題にぶち当たります。そのため「ここからが大変」ということになるのです。

(2)「技術戦略策定にもレベルがある」

 このようにAさんとBさんを比較していくと、違いがあるように見えます。誤解を恐れずにいえば、それは、レベルの違いだと思います。このレベルの違いですが私は下記のように4段階あると考えています。

  • レベル1 技術戦略策定をしていない状態
  • レベル2 通り一遍のことができる状態
  • レベル3 独自の情報源を持っている状態
  • レベル4 それで結果が出せる状態

    図表でいえば、Bさんはレベル1であり、Aさんはレベル2を脱し3に以降するステージでした。

 このようなレベル...

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◆ 日常業務のレベル向上こそが結果になる

 「このようにすれば、有意義な活動になるような気がします」この言葉は「技術戦略策定」という活動で、クライアントのご担当者(Aさん)が言われた言葉です。

 技術戦略策定のコンサルティングでは、特許を含め様々な情報収集をしていただいています。網羅的な情報収集を行うことで、自らが知らなかったことを知り、コア技術の用途を十分に探るためです。自分が知らなかったことを知ることは非常に重要なアイデアの源泉です。

 上記のAさんですが、しばらくはAさんもそれに従って情報収集していましたが、普段からかなりの情報を集めていました。技術戦略策定のためではないものの、実質的に同じような情報収集を実行していたこととなります。そのため普段から実施していることを、形を変えてやってもコンサルティングの場を有意義にすることが難しいとお感じになったようで、感じられた段階で私に相談がありました。

 実は、こうしたご相談があることは珍しいことではありません。なぜこうしたことが起こるかといえば、クライアント企業のレベルが反映されたものなのです。分かりやすくするために受験生に例えます。塾では受験生のレベル分けをするのが普通だと思います。レベルに応じて教える内容が違うからです。そのため塾では入塾時試験をすることによって学力を判定し、クラスを振り分けるのです。

 Aさんに話を戻すと、試験で高得点を出した受験生のように、普段の努力レベルが高いということが分かりました。私たちは次のような会話を交わしました。

  • Aさん 「網羅的に調べてみたのですが、これ以上網羅的に調べても実りが少ないように思います」
  • 私    「そうなんですね、このような情報収集を普段からやっておられるのですか」
  • Aさん   「網羅的にやっていたつもりはないのでやってみたのですが、結果としてはやっていたと評価できるようですね」
  • 私         「素晴らしい努力を普段からされているんですね」

 受験の例に戻ると、基礎が十分に出来たレベルの高い受験生が何をするかといえば、志望校に絞った学習ではないでしょうか?志望校の出題傾向を把握して、それに対応できる能力形成をできるようにするでしょう。

 技術戦略策定でも同じことです。出したいアイデアやテーマに沿った情報収集をすることになるのですが、Aさんと私はこのように続けて会話しました。

  • Aさん 「このままでは有意義にはならないのですが…」
  • 私        「確かに、このままではいけません。普段の努力が素晴らしいと分かったのですから、次にやるべきことは、当社に合った情報源を見つけることです」
  • Aさん   「情報源?」
  • 私        「そう、情報源です。心当たりはありませんか?」

 と、会話を続けているうちに、それまで渋い表情だったAさんのお顔が徐々にほぐれてきたのを記憶しています。最後にこのように言われて会話を締めくくりました。

  • Aさん   「このようにすれば、有意義な活動になるような気がします」

1、「技術戦略策定活動」

 ここで、技術戦略策定に関して少しだけ説明すると、技術戦略とは基盤技術を充実させるための計画を作る活動です。基盤技術とは製品またはサービスを作る技術(群)のことです。「技術プラットフォーム」ともいいます。技術企業では、将来どのような商品・サービスを作っていくかをイメージしながら、基盤技術を開発する計画を立てます。この計画を立てる活動が技術戦略策定です。

知的財産マネジメント

 Aさんの会社では、技術戦略をこれまで作ってこなかったため、行き当たりばったりと言っては何ですが、出たとこ勝負の基盤技術になっていました。そこで技術戦略策定をスタートさせたのですが、前述のような状況になりました。Aさんのように普段から情報収集をしている場合、ありきたりの情報では満足できないのです。

(1)「Bさんの例」

 Aさんと対照的な例があります。便宜的にこちらはBさんと言います。BさんはAさんのように情報収集をしていませんでした。技術戦略策定で型どおりの網羅的情報収集に取り組んでいただきました。しかし、Bさんの場合、次のようにAさんとは全く逆の反応を示されました。

  • Bさん 「こんなにたくさんの知らない情報がありました」
  • 私        「それは良かったですね。いいヒントになりましたか?」
  • Bさん   「ええ、とても良いヒントになりました」
  • 私        「これからが大変ですね」
  • Bさん   「そうなんです。アイデアがありすぎてしまって、ここからが大変です」

 BさんのケースではAさんとは異なり、アイデアがたくさん出てきて逆に大変になってしまいました。アイデアがたくさん出るのはとても良いことなのですが、アイデアを深掘りする作業量が多くて大変です。実はこの例は、技術戦略策定において最もよくあるパターンです。

 どういうことかといえば、普段から情報に触れていないので、知らない情報だらけなのです。受験生に例えると普段から勉強していないため、解けない問題がたくさんあるような状態です。受験とは異なり、技術の適用先がたくさんあるようにみえるのですが、検証し始めるといろいろと問題にぶち当たります。そのため「ここからが大変」ということになるのです。

(2)「技術戦略策定にもレベルがある」

 このようにAさんとBさんを比較していくと、違いがあるように見えます。誤解を恐れずにいえば、それは、レベルの違いだと思います。このレベルの違いですが私は下記のように4段階あると考えています。

  • レベル1 技術戦略策定をしていない状態
  • レベル2 通り一遍のことができる状態
  • レベル3 独自の情報源を持っている状態
  • レベル4 それで結果が出せる状態

    図表でいえば、Bさんはレベル1であり、Aさんはレベル2を脱し3に以降するステージでした。

 このようなレベルの違いから結果の違いが生み出されることをまざまざと感じます。受験同様にビジネスは厳しく、結果を出そうと思えば、取り組みにもそれなりの努力が求められるということです。もちろんレベルが結果に直結するわけではありませんし、運的な要素もあります。しかし受験で予備校が志望校に合格するかを判定する指標があるようにビジネスで成功するかどうか、ある程度読めるでしょう。当然、レベルが高い方が結果につながるのです。

知的財産マネジメント

 さらに、メンタル面でいっても結果を出す人と出さない人は違います。Aさんは通り一遍のことができただけで満足せずに、さらに上を目指していました。一方、Bさんは取り組み姿勢が悪いわけではないものの、Aさんほどの一生懸命さは感じませんでした。あなたの会社では技術戦略策定の取り組みはいかがでしょうか?Aさんのように一生懸命取り組み、レベルを上げて結果につなげようとしていますか?読者の皆さんが次につなげる戦略策定に取り組んでいただくことを期待しています。

 【出典】株式会社 如水 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

中村 大介

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。

若手研究者の「教育」、研究開発テーマ創出の「実践」、「開発マネジメント法の導入」の3本立てを同時に実践する社内研修で、ものづくり企業を支援しています。


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