【連載目次】
3、官能検査の要点まとめ
官能検査は人間の感覚に頼って検査を行うため、留意すべき点があります。特に、個人ごとに評価基準に対する考え方・感覚が異なることから、体調・先入観などが評価結果に影響する場合が少なくありません。
そのため、実際に役立てることのできる信頼性の高いデータを得るためには、温度や湿度、照明・騒音などの環境を検査する試料に適した環境に整えることが必要です。
また、工業製品などを製造している場合、限度見本を用意する必要があります。限度見本は合格品と不合格品が存在し、官能検査などには必須です。実際に製造した製品と見本とを比較しつつ、合否の判断に迷った際の判断基準とするためです。
さらに、官能検査を行う上で、目的を明確にすることも大切だといえるでしょう。評価する目的が明確でなければ、それに適した官能検査の手法を選択できず、官能検査を実施したとしても、満足できる結果は得られません。
こうした留意点を把握していなければ、間違った結論が出されることもあるため、注意が必要です。
【官能検査の精度を向上するためのポイント】
(1) 検査見本を整備する
官能検査の合否判定の基準となる「限度見本」を整備する必要があります。合否の判定に迷った時は、検査品と限度見本とを比較して判定するために、合格限度見本と不合格限度見本の両方をそろえると、検査精度が向上します。
(2) 検査環境の整備
官能検査は、人の感覚に頼って検査するため、検査精度が検査環境によって左右されます。何を検査するかによっても環境整備の仕方が変わってきます。
検査精度を向上するために、どういう環境を整備するかを研究していくことが必要です。たとえば、表面傷を検査する場合は照明の明るさ、色、方向などを研究しておきます。
(3) 検査作業の標準化と教育
検査精度を維持するためには、疲労による検査能力の低下を避ける必要があります。そのためには検査手...