前回のクリーン化について(その3)クリーン化のイメージと私の思いに続いて解説します。
ものづくり企業にとって、現場を綺麗(きれい)にし、それを維持、管理することは最も大切な基本要素です。これはクリーン化について(その3)稲作のところでも説明した下図の水面下の部分、現場にとってはベースの部分です。製品の歩留まりや信頼性は、製品の製造過程でのパーティクル(微粒子)や不純物イオンに大きく左右されてしまいます。
これら不純物の制御如何(いかん)で企業の競争力が決まってしまいます。つまり綺麗でなくてはまともな製品が作れないということです。現場を綺麗にし、品質や歩留まりを向上させるクリーン化活動は、企業の競争力であるので、そのノウハウは門外不出の扱いです。従ってどんなことをすれば良いのか分からないのです。他社からノウハウの入手ができないため、自分たちで考え、工夫し、それを積み重ねていくことが重要になります。自社、自分たちのクリーン化技術の構築が必要になります。
◆ クリーン化活動、3つのポイント(その1)
私のクリーン化における25年の現場経験から、活動に取り組むためには、3つのポイントがあると考えています。今回はその中から2つのポイントを解説します。
1、できるだけお金をかけない
クリーン化活動は現場を綺麗にし、製造過程でのゴミ、異物の混入を防ぎ、良い品質の製品を作る。いわゆる品質を作り込む現場環境を向上させることです。この活動はできるだけお金をかけず、知恵と工夫で改善していくことが第1のポイントです。クリーン化を指導される方の中には、まれに「お金をどんどんかけなさい」という指導もあると聞きます。
本来、如何(いか)に利益を追求するのか、ひいては企業経営にも直結することですから、活動する一方で水道の蛇口を開いているようでは、お金の垂れ流しになってしまいます。
具体的には、取引先からものづくり現場をクリーンルーム化するよう要請され設けたが、管理に必要なノウハウは得られず、お金をかけたけれども、結果的に歩留まりや品質が向上しなかったという例もあります。このような例は多いのではないでしょうか。
活動は現場でやることです。現場の一人ひとりが理解し、協力してこそ成果に繋がるのです。お金をかけても、それだけで品質が向上するわけではありません。全員が理解し、ベクトルを合わせた活動にしなければ効果、成果にはつながらないでしょう。
現場の一人ひとりが知恵を出し、工夫と改善を重ね、それらを結集していくことが、企業経営にとってプラスになっていくと考えています。人の知恵は無限です。現場の人が生き生きしてくると連携が生まれ、工夫、改善レベルが向上し現場が活性化してくると思います。
人はコミュニケーション力が向上すれば、作業ミスや事故、災害も減ってきます。日々黙々と作業を繰り返し、それを延々に続けていくだけでは勿体(もったい)ないです。お金をかける前にできることは沢山あります。知恵を結集しましょう。(人材から人財に)
2、活動は仕事の一環
現場では様々な活動がされていると思います。製造現場が忙しくなると、これらの活動も余裕がなくなってきます。そうなると現場から「この忙しい中、余計な仕事はやっていられない」という苦情や不満が出てきます。
その訴えに対し上層部の方が「そんなに忙しいなら、その活動は一旦やめてもいいよ、また余裕が出てきたらやればいいんだから」といった指示が出てしまう場合があります。すると本当にやめてしまうこともあります。
それら余計な仕事に位置付けられた活動とはQCサークル活動、TPM活動、あるいはこのクリーン化活動です。でも、これら活動も、よく考えてみると、会社の利益をどう追求するかという活動なのです。つまり仕事そのもの、あるいは仕事の一環と考えてほしいです。
確かに忙しい時にはやっていられないかもしれません。でも一旦やめてしまったものはなかなか動かない、動かせないのです。再開するためには相当なエネルギーが必要...
私が在社中は「時間はないのではなく作るものだ」といわれてきました。それだけでは気持ちの中で反発心も起きます。でも「人に仕事を頼むときは忙しい人に頼め」ともいわれました。忙しい人ほど時間の使い方が上手く、工夫して時間を作ってやってくれるのです。暇にみえる人に頼んでも、いつになったらやってくれるのだろうか、ということになってしまいます。
もう一つ、忙しい理由は何かをきちんと分析しておくことも必要です。もしかすると、やり直しや手直しが含まれていて、本来忙しいのに拍車を掛けて忙しくなっているのかもしれません。この方がむしろ、売れない仕事をせっせとやっているのかもしれません。ロスを顕在化し減らしていくことも必要です。
クリーン化はすべてのベースであるは次回、クリーン化について(その5)で解説します。