【目次】
第1章 概要を理解しておこう
(1) 変化の時代に対応する
いま、なぜジャスト・イン・タイムなのか ← 今回の記事
中小企業にこそ効果的 ← 同上
「改革」である
「ムダ取り」である
「流れ」である
「実践」である
(2) 改革の全体像を見ておこう
「5S・3定」で改革の土台をつくる
改革は3要素を中心に推進する
改革のサイクルを繰り返す
(3) 生産の3要素を中心に改革を進める
生産のメロディ・リズムハーモニー
(4) 11の改革でJIT生産を目指す
11の改革項目
7つの経営課題に対応
第1章 概要を理解しておこう
(1) 変化の時代に対応する
♦ いま、なぜジャスト・イン・タイムなのか?
2020年、新型コロナウイルスの嵐で出口の見えない負のスパイラルに陥っている現在、製造業として生き残っていけるかどうかの条件は、企業規模ではなくなっています。あれだけ利益を出していた大手自動車メーカーでさえ、新型コロナウイルスの嵐は避けられません。かつてのライバルと手を結ぶ企業があるかと思えば、新たなライバルとの戦いが始まり、同じ企業の中にいても、組織の再編や縮小は免れません。当然のことながら、親企業からの仕事は激減し、体力のない企業は淘汰(とうた)されてしまいます。
現在の企業は、ジュラ紀や白亜紀に繁栄した恐竜のようでもあります。体の大きな恐竜は環境の変化に対応できずに、食料を求めて移動し、移動先では以前から棲(す)んでいた生き物と争い、負けた弱者は滅びたのです。
しかし当時も、体が小さいことを生かし、体の大きな生き物にはできないやり方で生き延びた生き物はいたのです。現在の社会でも同じことがいえます。規模が小さい企業は、意思の疎通が図りやすく、小回りがききます。この機動性を生かし、社会の変化に柔軟に対応できるように体質を変え、大企業に負けないような利益率を出している企業も実際にあるのです。
生き残りのポイントは、環境の変化に対応するために、自分の体質を変えることができるか否か、なのです。ところが、この期に及んで「うちは中小企業だから」、「大企業のようにはいかない」、「どうせムリに決まっている」と、変えようとしない企業を多く見掛けます。しかし、ただじっと流れが変わるのを待っているような企業は、いつか世の中の流れに飲み込まれ、淘汰されてしまうでしょう。
成長至上主義のもとに規模を追求してきた大企業でさえ、巨体を痛めつつ、さらなる体質改革に挑んでいます。そんなときだからこそ、もともと中小企業が持っている良さを生かし、中小企業だからこそできる、企業体質の改革をすべきなのです。
♦ 中小企業にこそ効果的
そのためにはまず、これまでの常識や固定観念を捨て、自分たちなりの新しいやり方を構築しなければなりません。そのために必要なのは「意識改革」です。そして、複雑になりすぎた組織や仕事のやり方を見直すことです。
本来、自分たちの会社は何を社会に提供し、喜ばれてきたのか、原点に戻って考えてみるのです。いちど、一つひとつの要素に分解し、シンプルにした上で課題を見出し、悪いところを改革・改善していきます。そして改めて、会社全体をみるのです。ジャスト・イン・タイム(JustlnTime=JIT)は、そのために有効な方法となります。
ジャスト・イン・タイムは、大企業では以前から行なわれていましたが、残念なことに「大企業だからできる、中小企業ではムリだ」という固定観念を持つ中小企業の方が多かった時期もありました。
後述しますが、JITの根幹は「ムダ」を取ることです。モノづくりの技術は時代とともに変化し、進化していきますが、JIT活動の根幹はいつの時代も変わりません。また、規模や業種によって変わるものでもありません。むしろ、組織や社員の意識の統一が取りやすい中小の企業のほうが効果を実感しやすいため、中小企業にこそ適している生産方式ともいえるのです。JIT活動の実践により、変化に対応しやすい体質変革を図りたいものです。
次回もこのテーマで解説を続けます。
【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)