営業がつくり、製造が売る 現場改善:発想の転換(その9)

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生産マネジメント

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(とど)まらず、経営革新まで範囲を広げて、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載しておりますが、今回はその第9回目となります。

 

◆ 営業がつくり、製造が売る

1. 製造・開発・営業のフレームワーク

 企業の形態は、製造と開発さらに営業の3本柱です。

 それらをフレームワークで表すと家の形を模したようになります。屋根部分には生産活動としての結果である利益とキャッシュフローがあり、次いで両方の柱に営業と開発、土台として製造があります。そして、それをつなぐ天井部分のマネジメントには人事や財務があります。

 製造は地面の中に埋まっており、見えない存在になっています。その家の図の中で屋根を持たせる天井部分にマネジメントがありますが、その天井は薄く描かれています。その意味は、物をつくるというプロセスからいうと、製造はこのマネジメントには直接関わらないということです。つまり、人事や財務(コスト)ののマネジメントは、物の流れには関わっていないのです。

 しかし特徴的なこととして、製造の部分は地面の中に埋もれていますが、最もお金を投入されていて一番リソースが多い部分になります。そして人員も最も多く、外部から余り目立たないことが挙げられます。製造はトップマネジメントから遠い存在になっていることも表しています。この部分のマネジメントは、開発や営業には非常に関心を持っていますが、製造についてはほとんど関心を持っていません。

 ある会社の営業部長がめでたく社長に昇格したのですが、2ヶ月間のうち製造現場に顔を出したのは、わずか1回という情けない話を聞きました。新しいトップが製造現場に関心がないことが分かり、従業員たちはがっくりきたそうです。以前の社長は毎日数回も製造現場に足を運んで色々と声を掛けていたので、従業員も気楽に挨拶や言葉を交わしていました。トップがしっかりしなければ、企業は生き延びることはできません。

 マネジメントの一般的な定義は、組織として成果を挙げることであり、いかに上手く力を発揮して、目的を達成するかということです。しかし人事や財務は利益を上げていません。利益を出しているのは製造や開発、営業なのです。

 

2. 営業がつくり、製造が売る

 製造や営業の関係を考えてみましょう。

 一般的には売るのが営業で、つくるのが製造となっています。売り上げは営業の責任で、費用やコストは生産の責任という分業も常識化しています。ですから、それぞれの部門で利益を上げるため、営業は売り上げを伸ばすことばかり行い、製造はコストダウンに一生懸命になりがちです。

 会社としてではなく部門だけのことを考えて、お互いの連携は少ないことが多いようです。本当は、しっかりとした生産システムができているから売り上げが上がるのであって、営業だけが売り上げに貢献しているわけではないのです。利益向上は各部門が本当に連携して初めてできるものです。逆説的な言い回しですが、営業がつくって生産が売っていくということを説明します。
 営業がつくるというのは、お客様とのやり取りから、注文の取り方、納期を調整したりすることで、お客様から頂いた受注を、平準化して生産計画に落とし込むことです。本当にその注文の取り方でよいか、いつまでも大ロットではなく、本当に必要な数量はもっと少なくてよいのではないか。本当にその納期でよいか、短納期ならお客様は在庫を抱えなくても済まないか。必要な物を必要な時に必要な数だけ納品できれば、工場の生産計画は変動の少ないものにならないかと考えるわけです。

 大ロットから小ロットになると、営業のレスポンスがよくなり、納期対応がよくなり、結果的に売り上げの増加に結びついてきます。当初は営業の人はこのことが理解できませんので、製造の人が丁寧に説明し納得させることが必要です。

 このように受注の変動の波を平準化して、バラツキを少なくした生産計画を立てることができますと、生産がスムーズになります。そして前工程の部品も変動が少なく安定してきます。これが発展していきますと、かんばんの運用が可能となります。かんばんの運用は、この平準化が前提になります。

 

3. 多品種少量生産の体制づくり

 製造はつくることではなく売ることになりますが、やるべきこととして、受注があったものをすぐにつくれる体制にしておかなければなりません。

 営業や開発の皆さんが、お客様から頂いた受注を確実に出荷して、売り上げに寄与しなければなりません。つまり営業や開発の仕事をやりやすくすることが、製造部門の改善になります。営業や開発が苦労して受注してきたものが、性能が出ないとか品質がよくないなど生産要因ですぐに出荷できなければ、ビジネスチャンスを逃してしまうからです。そのためにも、多品種少量生産ができるようにして、すぐに売れるようにしておくことが重要になります。

 

 多品種少量生産方式にするには、次の3つの取り組みを実施することになります。

(1) 段取り替え時間短縮

 これは時間単位から分単位に短縮し、さらにはワンタッチ段替えという数秒間まで時間短縮に挑戦していきます。多品種の生産になりますと、段取り替え回数は増加しますので、単純にそのままであれば1日の稼働時間が少なくなります。その...

生産マネジメント

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として、現場改善:発想の転換をテーマに連載で解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(とど)まらず、経営革新まで範囲を広げて、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載しておりますが、今回はその第9回目となります。

 

◆ 営業がつくり、製造が売る

1. 製造・開発・営業のフレームワーク

 企業の形態は、製造と開発さらに営業の3本柱です。

 それらをフレームワークで表すと家の形を模したようになります。屋根部分には生産活動としての結果である利益とキャッシュフローがあり、次いで両方の柱に営業と開発、土台として製造があります。そして、それをつなぐ天井部分のマネジメントには人事や財務があります。

 製造は地面の中に埋まっており、見えない存在になっています。その家の図の中で屋根を持たせる天井部分にマネジメントがありますが、その天井は薄く描かれています。その意味は、物をつくるというプロセスからいうと、製造はこのマネジメントには直接関わらないということです。つまり、人事や財務(コスト)ののマネジメントは、物の流れには関わっていないのです。

 しかし特徴的なこととして、製造の部分は地面の中に埋もれていますが、最もお金を投入されていて一番リソースが多い部分になります。そして人員も最も多く、外部から余り目立たないことが挙げられます。製造はトップマネジメントから遠い存在になっていることも表しています。この部分のマネジメントは、開発や営業には非常に関心を持っていますが、製造についてはほとんど関心を持っていません。

 ある会社の営業部長がめでたく社長に昇格したのですが、2ヶ月間のうち製造現場に顔を出したのは、わずか1回という情けない話を聞きました。新しいトップが製造現場に関心がないことが分かり、従業員たちはがっくりきたそうです。以前の社長は毎日数回も製造現場に足を運んで色々と声を掛けていたので、従業員も気楽に挨拶や言葉を交わしていました。トップがしっかりしなければ、企業は生き延びることはできません。

 マネジメントの一般的な定義は、組織として成果を挙げることであり、いかに上手く力を発揮して、目的を達成するかということです。しかし人事や財務は利益を上げていません。利益を出しているのは製造や開発、営業なのです。

 

2. 営業がつくり、製造が売る

 製造や営業の関係を考えてみましょう。

 一般的には売るのが営業で、つくるのが製造となっています。売り上げは営業の責任で、費用やコストは生産の責任という分業も常識化しています。ですから、それぞれの部門で利益を上げるため、営業は売り上げを伸ばすことばかり行い、製造はコストダウンに一生懸命になりがちです。

 会社としてではなく部門だけのことを考えて、お互いの連携は少ないことが多いようです。本当は、しっかりとした生産システムができているから売り上げが上がるのであって、営業だけが売り上げに貢献しているわけではないのです。利益向上は各部門が本当に連携して初めてできるものです。逆説的な言い回しですが、営業がつくって生産が売っていくということを説明します。
 営業がつくるというのは、お客様とのやり取りから、注文の取り方、納期を調整したりすることで、お客様から頂いた受注を、平準化して生産計画に落とし込むことです。本当にその注文の取り方でよいか、いつまでも大ロットではなく、本当に必要な数量はもっと少なくてよいのではないか。本当にその納期でよいか、短納期ならお客様は在庫を抱えなくても済まないか。必要な物を必要な時に必要な数だけ納品できれば、工場の生産計画は変動の少ないものにならないかと考えるわけです。

 大ロットから小ロットになると、営業のレスポンスがよくなり、納期対応がよくなり、結果的に売り上げの増加に結びついてきます。当初は営業の人はこのことが理解できませんので、製造の人が丁寧に説明し納得させることが必要です。

 このように受注の変動の波を平準化して、バラツキを少なくした生産計画を立てることができますと、生産がスムーズになります。そして前工程の部品も変動が少なく安定してきます。これが発展していきますと、かんばんの運用が可能となります。かんばんの運用は、この平準化が前提になります。

 

3. 多品種少量生産の体制づくり

 製造はつくることではなく売ることになりますが、やるべきこととして、受注があったものをすぐにつくれる体制にしておかなければなりません。

 営業や開発の皆さんが、お客様から頂いた受注を確実に出荷して、売り上げに寄与しなければなりません。つまり営業や開発の仕事をやりやすくすることが、製造部門の改善になります。営業や開発が苦労して受注してきたものが、性能が出ないとか品質がよくないなど生産要因ですぐに出荷できなければ、ビジネスチャンスを逃してしまうからです。そのためにも、多品種少量生産ができるようにして、すぐに売れるようにしておくことが重要になります。

 

 多品種少量生産方式にするには、次の3つの取り組みを実施することになります。

(1) 段取り替え時間短縮

 これは時間単位から分単位に短縮し、さらにはワンタッチ段替えという数秒間まで時間短縮に挑戦していきます。多品種の生産になりますと、段取り替え回数は増加しますので、単純にそのままであれば1日の稼働時間が少なくなります。そのために回数が増加しても、総段取り替え時間を減少させることが必須になります。

(2) リードタイムの短縮

 これは設備故障を自主保全などで徹底的に減らしていき、結果として仕掛りを削減することで、リードタイムを短縮していくものです。自分の設備は自分で守るようにし、リードタイムも日単位から時間単位に短縮したいものです。仕掛りの多さがリードタイムを長くしていたのです。小ロット化もやります。

(3) 高い品質レベルの確保

 これは生産後に検査をして不良をはねるのではなく、1個1個各工程内で検査するもので、オペレーター自体が検査員も兼ねて(自主検査)、それを標準作業に組み込んでいきます。ポカヨケなども取り込んで、不良率を%レベルからPPMレベルに削減していきます。

 

 従来の営業のやり方や生産のやり方を変えなければならないことを意味しています。それは、従来のものと全くシステムや構造が違うということです。システムを変えるには大変な労力が必要ですが、会社が生き残るためには不可欠なことです。

 次回は、現場改善:「発想の転換(その10)加工される材料の身になって考える 」から解説を続けます。

 

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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