現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。今回も前回に引き続き、下記の「関係性の種類」の中の「(3)包含」について考えてみたいと思います(普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その71) 知識・経験を関係性で整理するを参照)。
1. 関係性の種類
それでは、要素の間にはどのような関係性の種類があるのでしょうか?
(1) 原因と結果
関係性で誰でもすぐ気が付くものに、原因と結果があります。ある要素が他の要素を生み出すという関係です。
(2) 影響を与える
原因と結果のようにある要素が他の要素を生み出すというまでの強い関係ではなく、前者が後者になんらかの影響を当える関係も存在します。
(3) 包含
ある要素が他のより大きな要素の一部になっている、すなわち包含されているという関係です。
(4) 一部を共有
ある要素とある要素が完全に独立しておらず、一部を共有しているような関係です。
(5) 並列
なんらかの関係性の全体の構造の中で、同じ位置付けであり、かつ両者間には重複はなく独立している関係です。
2.「常識を疑う」のではなく「常識以外を考える」
前回は「パターン化からもたらされる一部を全体と考える誤り」について解説を行い「Bに包含されているA以外を考える」重要性について指摘しました。
そこでいえるのは、良く「常識を疑え」などということがありますが、常識を疑う、すなわち常識を全否定するのではなく、せっかく世の中や先人たちが考えてくれた常識があるのですから、その常識をB(全体)ではなくBの一部のAと捉え、Aを思考のきっかけとして活用して、常識以外を考えるというアプローチが有効であると思います。
この連載の中で何回も登場した概念に「隣接可能性」があります。この概念は、ある程度まとまった思考結果があれば、そこからさらにより正しい、真実に近い思考に進化させていくことが容易になるというものです。
万有引力を思いついたニュートンが発した有名な言葉に「私が遠くを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩に乗っていたからです」があります。つまり、万有引力はニュートンの頭に天から降ってきたものではなく、先人の研究結果に基づき、それを進化させたことから生まれたというものです。
ここでのポイントは先人の研究結果が正しいかどうかは、あまり重要ではないという点です。例えば、研究というものは、先人の研究結果の中に矛盾点や疑問点を発見し、それを解決することで進んで行くものです。その点からは、間違っていても先人の研究結果はその後の研究の進化に大きな貢献をするわけで、大きな意義があることです。その研究結果の矛盾点に気付かせてくれたからです。
3.「常識以外を考える」ための2つのアプローチ
それでは「常識以外を考える」にはどうしたら良いのでしょうか。
一つは確率論的なもの、もう一つは決定論的なものがあると私は思います。
(1)常識以外のことがあるのかを現場で観察する(確率論的)
一つは常識以外の事例を、現場で探すということです。
例えば、前回挙げた「中国人は〇〇である」という常識に対しては、〇〇でない中国人を探すことです。〇〇でない中国人が見つかれば、その常識は一部の現実を捉えているに過ぎないことがわかり、〇〇でない中国人の発見はイノベーション、すなわち前...
(2)そのような常識に至った原因を考える(決定論的)
もう一つは、なぜそのような常識に至ったかについて原因を考えることです。
その原因ではない、他の現象があれば、その常識は一部に過ぎないということが分かります。またその他の現象を見つけることで、常識とは異なる結果を想定することができ、こちらも革新的な施策創出を促進することになります。
4.「包含」の重要性
以上のように、物事を「包含」関係で考えることで、イノベーションを生み出す可能性が高まるという意味で、大変重要な関係性の概念です。
次回に続きます。