設計と製造の役割分担と市場品質

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FMEA

 

 今回は、次のような質問事例から「設計と製造の役割分担と市場品質」について解説します。

【質問事例】

 今現在の悩みは、工程FMEAの実施前に、設計部隊がFTAや設計FMEAを行い、設計で市場不具合発生のリスク低減をできない項目を製造部門で対策すべきと思っておりますが、設計部隊の認識が低く、うまく部門間の連携ができていません。市場不具合リスク低減のために開発部門、製造部門が実施すべきことを明確にするなど、どうすれば一番より効果的なのか悩んでいます。

 

◆ 市場不具合リスク低減のため開発・製造部門が実施すべきこと

 これはなかなか難しい問題です。

 品質は設計の良し悪しでほとんど決まってしまいますから、工程FMEAを実施しても設計へフィードバックする項目が多くなると思います(特に設計の認識が低いということであれば…)。ということは、製造性を考慮した設計をはじめから実施する必要があるわけです。

 FMEAを考える前にまず「いかに製造性を考慮した設計を実施するか」です。

 つまり、設計工程へ、製造部門が早いうちにかかわっていけるかがポイントとなります。

 

 例えば、寸法リミットの緩和、微妙な調整個所の低減、部品の加工形状の単純化ねじ止め個所の低減…など、市場のトラブルを分析して、まずそれを設計の観点で見直すことが必要です。これは、FMEAではなく、FTAの役目です。

 市場トラブルは、製造ミスがきっかけとなっているようで、実はミスを起こしやすい構造設計が原因になっていることが多いと思います。どうしても設計で対策できない時は、製造側で冶具作成、ポカヨケ、検査などで流出を防ぎます。

 まず、FTAで市場トラブルをつぶし込むことを優先させるべきと思います。

 FMEA はそれらの対策の後に、つぶしきれない想定外のトラブルを検出するために使うツールです。流用設計、類似設計の製品であれば、FTAを実施すればほとんどのトラブルは解決するはずです。

 

 次に、FMEAとFTAの違いを整理しておきます。

  • FMEAは部品・材料などの故障モードを出発点として製品の想定外の故障、事故を漏れなく洗い出すボトムアップの解析ツールです。一方のFTAは製品の故障や事故をトップ事象に中間・基本事象と掘り下げ、発生確率を予測し対策するトップダウンの解析ツールです。
  • FTAは故障、事故が既知の製品、つまり流用度が高い製品の解析に適しており、製品の起こり得る故障、事故を想定したトップダウン解析が可能です。逆にFMEAは新規性の高い製品の未知...

FMEA

 

 今回は、次のような質問事例から「設計と製造の役割分担と市場品質」について解説します。

【質問事例】

 今現在の悩みは、工程FMEAの実施前に、設計部隊がFTAや設計FMEAを行い、設計で市場不具合発生のリスク低減をできない項目を製造部門で対策すべきと思っておりますが、設計部隊の認識が低く、うまく部門間の連携ができていません。市場不具合リスク低減のために開発部門、製造部門が実施すべきことを明確にするなど、どうすれば一番より効果的なのか悩んでいます。

 

◆ 市場不具合リスク低減のため開発・製造部門が実施すべきこと

 これはなかなか難しい問題です。

 品質は設計の良し悪しでほとんど決まってしまいますから、工程FMEAを実施しても設計へフィードバックする項目が多くなると思います(特に設計の認識が低いということであれば…)。ということは、製造性を考慮した設計をはじめから実施する必要があるわけです。

 FMEAを考える前にまず「いかに製造性を考慮した設計を実施するか」です。

 つまり、設計工程へ、製造部門が早いうちにかかわっていけるかがポイントとなります。

 

 例えば、寸法リミットの緩和、微妙な調整個所の低減、部品の加工形状の単純化ねじ止め個所の低減…など、市場のトラブルを分析して、まずそれを設計の観点で見直すことが必要です。これは、FMEAではなく、FTAの役目です。

 市場トラブルは、製造ミスがきっかけとなっているようで、実はミスを起こしやすい構造設計が原因になっていることが多いと思います。どうしても設計で対策できない時は、製造側で冶具作成、ポカヨケ、検査などで流出を防ぎます。

 まず、FTAで市場トラブルをつぶし込むことを優先させるべきと思います。

 FMEA はそれらの対策の後に、つぶしきれない想定外のトラブルを検出するために使うツールです。流用設計、類似設計の製品であれば、FTAを実施すればほとんどのトラブルは解決するはずです。

 

 次に、FMEAとFTAの違いを整理しておきます。

  • FMEAは部品・材料などの故障モードを出発点として製品の想定外の故障、事故を漏れなく洗い出すボトムアップの解析ツールです。一方のFTAは製品の故障や事故をトップ事象に中間・基本事象と掘り下げ、発生確率を予測し対策するトップダウンの解析ツールです。
  • FTAは故障、事故が既知の製品、つまり流用度が高い製品の解析に適しており、製品の起こり得る故障、事故を想定したトップダウン解析が可能です。逆にFMEAは新規性の高い製品の未知の故障、事故など、トップ事象の予測が難しい、新規性の高い製品の解析に適しています。
  • FTAは既知の事故や故障が発生した場合の解析であり、一般的な設計プロセスに馴染むため、比較的受け入れやすいのですがFMEAの場合は部品・材料の「故障モード」を出発点として、いわば想定外の事故や故障を洗い出すことから、その考え方がなかなか受け入れ難く、理解が進んでいないのが実情です。下図にFMEAとFTAの比較を整理しました。

 

FTA

図.FMEAとFTAの比較 

 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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