職場の全員がコスト意識を持つには 見える化(その3)

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生産マネジメント

【見える化 連載目次】

 

◆ “職場家計簿”のススメ

1. 職場での収支計算はどうなっていますか

 多くのご家庭では、奥様が毎日小まめに家計簿をつけておられると思いますが、そのフィードバックとして、奥様から出費に対して対策の相談が投げ掛けられ、翌月のお小遣いの増減や旅行計画の見直しなどが、即座に家族会議と称して催されていると思います。収入は会社からの収入がほとんどであり、それに見合った金額で次のひと月をどうやり繰り算段するかを、毎日の家計簿を照らし合わせながら、赤字にならないように工夫をされているはずです。

 皆さんは会社からご自宅に帰りますと、その家庭の家長であって、しかも経営者そのものになり替わり、一家の生計を担っておられます。でも多くの人は、ご自身が経営者という認識は余り持っておられないというのが筆者の残念な気持ちです。

 ところで皆さんの職場での収支計算はどうなっていますか。それは月末集計をして、翌月の月初に管理板などに掲示されますが、市場環境の変化が激しく変わっているので素早い対応が必要です。それが何ヶ月も遅れたものであれば、いわば死亡診断書と同じようなもので、アクションを取るにしても随分と遅れたものになり、ライバル会社に先を越されてしまうものです。1ヶ月前の職場の収支である「儲(もう)け(利益)」がどうなっているかを、従業員の皆さんに公開するだけでも仕事に対する意欲が違ってくるものです。自分ひとりが儲けなんて特に考えなくても給料がもらえればよいと安易に考えてしまうと、自分の職場だけではなく会社の将来はありません。

 会社としても経営成績を明らかにする損益計算書や財務状態を明らかにする貸借対照表(さらに現金がどう動いたかが見えるキャッシュフロー計算書も合わせて鑑みます)を1ヶ月単位にして評価できるようにして、翌月に的確な素早くアクションが取れるようにしています。しかし多くの中小企業で、これらの計算書を十分に使いこなして、的確で素早いアクションを講じている企業は余り多くないようです。これは全企業の内、約7割が赤字体質だという集計結果からもいえると思います。

 

2. 職場の家計簿をつくり、出来映えを皆で楽しむ

 現状の職場のマネジメントスタイルは月単位で管理されていることが多く、市場環境の激化している実情からすると、もっとマネジメントサイクルを短時間に切り替えなければならないと考えます。月単位から週単位、さらに家計簿と同じ日単位にして、その日の職場の収支が儲かっているのか赤字だったかが見えるようにすることで、翌日には具体的に必要なアクションを講じることができ、早々に計画通りの儲けが毎日達成できるようになっていくものです。早ければ早いほど、講じるアクションは小さくても確実に効果は出るものであり、それがきっかけになり次々と良い方に循環してくるものです。

 これらのアクションが小まめに毎日徹底して行われると、狙った通りの結果や成果が得られたかどうかが職場で見えるようになり、自分達のインプットに対してアウトプットがどのようになったかが分かると、働く意欲が俄然(がぜん)変わってくるものです。

 

 マネジメントは、ヒト、モノ、カネ、設備などのインプットを、できるだけ良いQDC(品質、納期、コスト)というアウトプットに変換するものです。できるだけ小さなインプットで、できるだけ大きいアウトプットを得られることが良いマネジメントといえます。

 具体的な職場の家計簿は、会社の決算書のように余りにも細かくやり過ぎますと、面倒くさくなり、ついつい使わないツールになってしまいます。職場用のツールは、家計簿のように簡単な表に置き換えて、管理すべき項目を絞る工夫が少し必要です。インプットとして、人件費(出勤人員、時間当たりの賃金の平均値、カイゼン投入費用、残業費用など)、材料費(日当たりの部品費と補材費、在庫管理費など)、設備費(減価償却費、治工具費など)、管理費(電気・水道代・冷暖房費・コピー費用など)をリストアップします。その内から、毎日一定な項目と変動する項目を区分します。最初から全て管理することではなく、自ら管理できるものから管理していくことでレベルアップしていけばよいと思います。

 

 具体的なアウトプットは、売上金額(完成品単価と完成数、仕掛りはどの途中でも完成品の半額にして簡素化する)、不良手直し費用、廃棄費用、時間当たりの生産性などですが、これらも管理できるものから取り上げていけばよいでしょう。

 毎日終業した時点で、その日の内に手計算と手書きでやってみます。最初からパソコンを使うよりも、まず手書きでやってみることで多くの問題点が発見できます。それらを改善してから、簡単なプログラムを作ると非常にシンプルなものができます。そして翌日の朝礼で昨日の結果、当日の対策を職場の皆さんに公開して共有化を図り、一緒に改善を取り組むように仕向けていきます。これでできる改善から必要な改善に取り組めるようになります。ポイントは毎日少しずつ結果を職場の皆さんで感じて、出来映えを楽しんでいくことです。楽しくなければ長続きしないものなので、ゲーム感覚を盛り込むなど、皆で楽しめる工夫をして欲しいと思います。

見える化

 

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生産マネジメント

【見える化 連載目次】

 

◆ “職場家計簿”のススメ

1. 職場での収支計算はどうなっていますか

 多くのご家庭では、奥様が毎日小まめに家計簿をつけておられると思いますが、そのフィードバックとして、奥様から出費に対して対策の相談が投げ掛けられ、翌月のお小遣いの増減や旅行計画の見直しなどが、即座に家族会議と称して催されていると思います。収入は会社からの収入がほとんどであり、それに見合った金額で次のひと月をどうやり繰り算段するかを、毎日の家計簿を照らし合わせながら、赤字にならないように工夫をされているはずです。

 皆さんは会社からご自宅に帰りますと、その家庭の家長であって、しかも経営者そのものになり替わり、一家の生計を担っておられます。でも多くの人は、ご自身が経営者という認識は余り持っておられないというのが筆者の残念な気持ちです。

 ところで皆さんの職場での収支計算はどうなっていますか。それは月末集計をして、翌月の月初に管理板などに掲示されますが、市場環境の変化が激しく変わっているので素早い対応が必要です。それが何ヶ月も遅れたものであれば、いわば死亡診断書と同じようなもので、アクションを取るにしても随分と遅れたものになり、ライバル会社に先を越されてしまうものです。1ヶ月前の職場の収支である「儲(もう)け(利益)」がどうなっているかを、従業員の皆さんに公開するだけでも仕事に対する意欲が違ってくるものです。自分ひとりが儲けなんて特に考えなくても給料がもらえればよいと安易に考えてしまうと、自分の職場だけではなく会社の将来はありません。

 会社としても経営成績を明らかにする損益計算書や財務状態を明らかにする貸借対照表(さらに現金がどう動いたかが見えるキャッシュフロー計算書も合わせて鑑みます)を1ヶ月単位にして評価できるようにして、翌月に的確な素早くアクションが取れるようにしています。しかし多くの中小企業で、これらの計算書を十分に使いこなして、的確で素早いアクションを講じている企業は余り多くないようです。これは全企業の内、約7割が赤字体質だという集計結果からもいえると思います。

 

2. 職場の家計簿をつくり、出来映えを皆で楽しむ

 現状の職場のマネジメントスタイルは月単位で管理されていることが多く、市場環境の激化している実情からすると、もっとマネジメントサイクルを短時間に切り替えなければならないと考えます。月単位から週単位、さらに家計簿と同じ日単位にして、その日の職場の収支が儲かっているのか赤字だったかが見えるようにすることで、翌日には具体的に必要なアクションを講じることができ、早々に計画通りの儲けが毎日達成できるようになっていくものです。早ければ早いほど、講じるアクションは小さくても確実に効果は出るものであり、それがきっかけになり次々と良い方に循環してくるものです。

 これらのアクションが小まめに毎日徹底して行われると、狙った通りの結果や成果が得られたかどうかが職場で見えるようになり、自分達のインプットに対してアウトプットがどのようになったかが分かると、働く意欲が俄然(がぜん)変わってくるものです。

 

 マネジメントは、ヒト、モノ、カネ、設備などのインプットを、できるだけ良いQDC(品質、納期、コスト)というアウトプットに変換するものです。できるだけ小さなインプットで、できるだけ大きいアウトプットを得られることが良いマネジメントといえます。

 具体的な職場の家計簿は、会社の決算書のように余りにも細かくやり過ぎますと、面倒くさくなり、ついつい使わないツールになってしまいます。職場用のツールは、家計簿のように簡単な表に置き換えて、管理すべき項目を絞る工夫が少し必要です。インプットとして、人件費(出勤人員、時間当たりの賃金の平均値、カイゼン投入費用、残業費用など)、材料費(日当たりの部品費と補材費、在庫管理費など)、設備費(減価償却費、治工具費など)、管理費(電気・水道代・冷暖房費・コピー費用など)をリストアップします。その内から、毎日一定な項目と変動する項目を区分します。最初から全て管理することではなく、自ら管理できるものから管理していくことでレベルアップしていけばよいと思います。

 

 具体的なアウトプットは、売上金額(完成品単価と完成数、仕掛りはどの途中でも完成品の半額にして簡素化する)、不良手直し費用、廃棄費用、時間当たりの生産性などですが、これらも管理できるものから取り上げていけばよいでしょう。

 毎日終業した時点で、その日の内に手計算と手書きでやってみます。最初からパソコンを使うよりも、まず手書きでやってみることで多くの問題点が発見できます。それらを改善してから、簡単なプログラムを作ると非常にシンプルなものができます。そして翌日の朝礼で昨日の結果、当日の対策を職場の皆さんに公開して共有化を図り、一緒に改善を取り組むように仕向けていきます。これでできる改善から必要な改善に取り組めるようになります。ポイントは毎日少しずつ結果を職場の皆さんで感じて、出来映えを楽しんでいくことです。楽しくなければ長続きしないものなので、ゲーム感覚を盛り込むなど、皆で楽しめる工夫をして欲しいと思います。

見える化

 

3. 儲けるということが楽しくなる仕組み

 職場の家計簿を毎日つける目的は、コスト意識を職場の全員が持ち、インプットに対してアウトプットが大きくなるように日々確認できるようにし、日々必要な改善を行うことで、儲かる職場・会社に替えていくことにあります。また時間単位の生産数のフィードバックは、効果的な方法であり、1時間いくら生産するかを頭にインプットすることで、随分と意識が変わるものです。1時間ごとに目標に対して良かったか悪かったか、良ければ何故(なぜ)良かったか、悪かったら何故悪かったかを自ら考えるようになります。そしてそのアウトプットとして、工夫や改善に取り組むようになり、結果が出れば皆さんに公開して共有化を図り、横展開をしていきます。当然それは、実施済みの改善提案となります。嬉(うれ)しいことに、やればやっただけ自分達の見返りも出てきます。

 この仕組みが好循環を生むと、儲けるということが楽しくなってきます。「儲ける」とは、自分達の意思を強く働かせて、きちんとした仕組みにしていくことです。その「儲ける」状態が、継続してできるようになる状態を「儲かる」といいます。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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