生産現場の生産管理板 見える化(その8)

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生産マネジメント

【見える化 連載目次】

 

◆ 手描きのグラフで業績向上を狙う

1. 確実に生産するための管理方法

 生産現場における日々の生産目標に対して達成していますかと尋ねますと「色々と問題があって達成できない日がある」という声を多く聞きます。小まめに管理監督者は現場に出向き、目標と実績がいつも一致するように管理をされているでしょうか?「なかなかそんな管理までは手が回らない」と言われるかも知れませんが、ちょっとした管理で目標を達成することができます。1日単位だと翌日の対応になって取り返すことが大変になりますので、できるだけ1時間ごとのフィードバックをお勧めします。

 以前、冗談話で聞いたことを紹介します。実際にやってみるとほぼ同じ数値になったのでびっくりしたことがありますが、それは生産数を増やす方法として、まず5%増やすためには、監督者がラインの前に立つというものです。普段ラインに来ない上司が目の前にいるのですから、オペレーターは緊張しないわけには行きません。そのために5%アップとなります。次は誰でもよいのですが、ストップウォッチを持ってラインの前に立つと10%もアップするというものです。人が立っているよりも、時間計測をされると嫌でも気になってしまい数値は上がります。さて、奥の手の15%アップ方法ですが、ビデオカメラを設置することです。作業している姿が記録に残りますので、最も緊張してスピードはガンガン上がってきます。これを即効性のある秘密兵器というべきでしょうか?いや長続きはしません。

 数量のアップだけ注力して余りにもセカセカして焦って作業すると、後で品質問題が発生するものです。良いものを作るには、いつも同じリズム(タクトタイム)で確実に生産することです。確実に生産するための管理方法として、1時間ごとの生産数を記入する、遅れ進みを自分で確認する、次の1時間の間に微調整をするのです。もし30分以上の遅れがあれば、チームリーダーなどにすぐに連絡して、残業や応援などの対応を素早く取ってもらいます。毎日目標をクリアして、気分よく作業したいものです。

 

2. 生産数グラフを手書きで記入

 パソコンを使い、生産数管理を表示している工場も見掛けるようになりました。オペレーターが入力する時にキーボードをタッピングする方法は、余り本人にとってはいいものでないと体験上感じています。それはキーを叩くという作業とペンを持って記入することは、結果として同じように見えますが、実は大きな違いがあると思うからです。キーイン方式は、そのまま数値をキーインすると綺麗(きれい)な数値とグラフが瞬間に出てきます。しかも見栄えも綺麗です。しかし、生産が遅れていたらどれくらいで追いつけるのかなどという意識は、不思議にも余り働かないものになるのです。

 手は第二の脳ともいわれますが、キーを叩くこととペンを持って書くというのは、まったく違う働きを脳にさせているのです。それはペンを持ち紙に書く時に「どれくらいの大きさで書くのか」、「筆圧の強さはどれくらいで書くのか」、「記入する枠の中に綺麗に入れて書けるか」、「今回の記入は前の時よりも良くなったか」など、記入する時の意識の度合いがまったく違うからです。ペンを持って書くという行為自体が、大脳に対してかなり刺激を与えているのです。

 例えば講演を聞いた時に、その内容を後でどれだけ覚えているかのテスト結果があるようです。メモを取らないでただ聞いているだけだと、3日後にはその内容の10%しか思い出せないそうです。しかしメモを取りながら聞くと、なんと65%も覚えているそうです。しかもそのメモを見ると、ほとんどのことを思い出せるのは皆さんも経験されていると思います。それほどペンで帳票に記入する行為には意味があったのです。これは心理学者が調べたデータのようなので信頼できる値でしょう。

 若かりし頃に、1個流しの生産ライン(U字ライン)を初めて作った時のことです。生産数がバッチ生産の時よりも、どれくらい変化するのか非常に興味があったので、その当時からこの生産数の記録を取るようにしたのです。そしてラインの入り口に生産高を記入する用紙を貼り付けました。そして1時間ごとに生産した数量を、手押しのカウンターで数えた数を記入しました。記入するたびに目標値との比較をしながら、グラフに記入するため「良かったか悪くなったか」といった生産高に対する意識がまるで違ってくるのです。そして次の1時間の生産に対する意識がフィードバックされ、目標を達成しようと大脳に刺激しやる気を出すようです。これは非常に効果がありました。

 しかも使うものは、コピーしたグラフの帳票だけです。費用はコピー代だけです。安いものです。しかも使い始めたその日から効果が出ます。これを使わない手はありません。多くの企業で採用してもらっていますが、日々の生産数管理を行うことで、なんと生産数が5~15%増えます。ただし、管理監督者がいつもオペレーターや生産数に関心を示して、声掛けやニコポンなどオペレーターといつもコミュニケーションを取っておく必要があります。関心を示さなくなると、1週間で元に戻ることがあります。人は正直なものです。打てば響く、打たなければ響かないものです。やはり現場にいつも出向くことが重要です。

 

3. さらに生産管理板を活用して目標達成

 人...

生産マネジメント

【見える化 連載目次】

 

◆ 手描きのグラフで業績向上を狙う

1. 確実に生産するための管理方法

 生産現場における日々の生産目標に対して達成していますかと尋ねますと「色々と問題があって達成できない日がある」という声を多く聞きます。小まめに管理監督者は現場に出向き、目標と実績がいつも一致するように管理をされているでしょうか?「なかなかそんな管理までは手が回らない」と言われるかも知れませんが、ちょっとした管理で目標を達成することができます。1日単位だと翌日の対応になって取り返すことが大変になりますので、できるだけ1時間ごとのフィードバックをお勧めします。

 以前、冗談話で聞いたことを紹介します。実際にやってみるとほぼ同じ数値になったのでびっくりしたことがありますが、それは生産数を増やす方法として、まず5%増やすためには、監督者がラインの前に立つというものです。普段ラインに来ない上司が目の前にいるのですから、オペレーターは緊張しないわけには行きません。そのために5%アップとなります。次は誰でもよいのですが、ストップウォッチを持ってラインの前に立つと10%もアップするというものです。人が立っているよりも、時間計測をされると嫌でも気になってしまい数値は上がります。さて、奥の手の15%アップ方法ですが、ビデオカメラを設置することです。作業している姿が記録に残りますので、最も緊張してスピードはガンガン上がってきます。これを即効性のある秘密兵器というべきでしょうか?いや長続きはしません。

 数量のアップだけ注力して余りにもセカセカして焦って作業すると、後で品質問題が発生するものです。良いものを作るには、いつも同じリズム(タクトタイム)で確実に生産することです。確実に生産するための管理方法として、1時間ごとの生産数を記入する、遅れ進みを自分で確認する、次の1時間の間に微調整をするのです。もし30分以上の遅れがあれば、チームリーダーなどにすぐに連絡して、残業や応援などの対応を素早く取ってもらいます。毎日目標をクリアして、気分よく作業したいものです。

 

2. 生産数グラフを手書きで記入

 パソコンを使い、生産数管理を表示している工場も見掛けるようになりました。オペレーターが入力する時にキーボードをタッピングする方法は、余り本人にとってはいいものでないと体験上感じています。それはキーを叩くという作業とペンを持って記入することは、結果として同じように見えますが、実は大きな違いがあると思うからです。キーイン方式は、そのまま数値をキーインすると綺麗(きれい)な数値とグラフが瞬間に出てきます。しかも見栄えも綺麗です。しかし、生産が遅れていたらどれくらいで追いつけるのかなどという意識は、不思議にも余り働かないものになるのです。

 手は第二の脳ともいわれますが、キーを叩くこととペンを持って書くというのは、まったく違う働きを脳にさせているのです。それはペンを持ち紙に書く時に「どれくらいの大きさで書くのか」、「筆圧の強さはどれくらいで書くのか」、「記入する枠の中に綺麗に入れて書けるか」、「今回の記入は前の時よりも良くなったか」など、記入する時の意識の度合いがまったく違うからです。ペンを持って書くという行為自体が、大脳に対してかなり刺激を与えているのです。

 例えば講演を聞いた時に、その内容を後でどれだけ覚えているかのテスト結果があるようです。メモを取らないでただ聞いているだけだと、3日後にはその内容の10%しか思い出せないそうです。しかしメモを取りながら聞くと、なんと65%も覚えているそうです。しかもそのメモを見ると、ほとんどのことを思い出せるのは皆さんも経験されていると思います。それほどペンで帳票に記入する行為には意味があったのです。これは心理学者が調べたデータのようなので信頼できる値でしょう。

 若かりし頃に、1個流しの生産ライン(U字ライン)を初めて作った時のことです。生産数がバッチ生産の時よりも、どれくらい変化するのか非常に興味があったので、その当時からこの生産数の記録を取るようにしたのです。そしてラインの入り口に生産高を記入する用紙を貼り付けました。そして1時間ごとに生産した数量を、手押しのカウンターで数えた数を記入しました。記入するたびに目標値との比較をしながら、グラフに記入するため「良かったか悪くなったか」といった生産高に対する意識がまるで違ってくるのです。そして次の1時間の生産に対する意識がフィードバックされ、目標を達成しようと大脳に刺激しやる気を出すようです。これは非常に効果がありました。

 しかも使うものは、コピーしたグラフの帳票だけです。費用はコピー代だけです。安いものです。しかも使い始めたその日から効果が出ます。これを使わない手はありません。多くの企業で採用してもらっていますが、日々の生産数管理を行うことで、なんと生産数が5~15%増えます。ただし、管理監督者がいつもオペレーターや生産数に関心を示して、声掛けやニコポンなどオペレーターといつもコミュニケーションを取っておく必要があります。関心を示さなくなると、1週間で元に戻ることがあります。人は正直なものです。打てば響く、打たなければ響かないものです。やはり現場にいつも出向くことが重要です。

 

3. さらに生産管理板を活用して目標達成

 人は見られることでもっと良くしようと思うものです。女優さんがいつも綺麗なのは、人に見られるということを常に意識しているからです。そのために顔だけではなく、服装や仕草までも美しく見えてしまうのです。そのヒントが分かれば、生産ラインも見られてレベルアップしようとする仕掛けを作るべきです。何でも良いのですが、生産現場では生産管理板になるでしょう。各設備や生産ラインの近くにまず設置してみましょう。

 生産数だけではなく、段取り替え時間の管理も同様に横展開できます。毎日、毎回記入していきますと、トレンドも見えるようになり、やる気が出て励みになります。ある機械加工工場で50台の切削を中心とした設備があり、当時の段取り替え時間は1~2時間かかっていました。そのためにロットまとめの生産となっていて、洗浄工程が一杯になるほどの仕掛がありました。そこで、段取り替え改善を行い、管理板に1回ごとの時間をすべて記録するようにしたところ、いずれも6~15分でできるようになりました。ただしすべてやるには2年かかりましたが、どの設備もシングル段取りにでき、さらに洗浄工程の停滞が解消したのです。見られることを上手く利用して、皆さんのやる気を引き出しましょう。 

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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