連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、下図のクリーン化4原則について個別に解説しております。今回は、クリーン化4原則-9 「堆積(たいせき)させない」について前回に続き解説します。
図1. クリーン化4原則
◆ クリーン化:クリーンルーム内のゴミはゼロにはできない
私は、これまでクリーン化について語ってきた中で「ゴミ」と簡単に言っていますが、ゴミにも「目に見えるゴミ、見えないゴミ」があり、その大きさはさまざまです。大きなゴミは対処できますが、小さなゴミ(微粒子=パーティクル)になると、そう簡単には除去できません。
江戸時代の算術書に塵劫記(じんこうき)というものがあります。
この中に、小数点以下の数字に漢字を当てはめたものが紹介されています。これはクリーン化としては興味深い部分です。10の0乗から始まり、10の-9乗には塵(ちり)、-10乗には埃(ほこり)、-22乗には清、-23乗には浄という字があてられています。この並びから、塵よりも埃のほうが小さいととらえることができます。
確かに塵は、塵取りという言葉があるように、箒(ほうき)で掃いてまとめたゴミを取り去る道具ですね。ところがその隣の埃は、埃が舞う、埃っぽい、などと言いますが塵より小さいとか、軽いといったイメージがあります。この辺は、塵埃(じんあい)という表現で括(くくる)る場合もあります。
クリーンルームの綺麗(きれい)さを表す時、清浄度という言葉を使います。数字と実際とは必ずしも一致しませんが、それだけきれいなところと表現したいのでしょう。
そのクリーンルームの中であっても、微細なゴミがあります。昔から「塵も積もれば山となる」という言葉があるように、それを放っておくと、徐々に堆積します。小さなもので例えると、昨今の新型コロナウイルスのように、見えないものは油断してしまいますが、そのことを認識し、常に良い環境にしていきたいものです。清掃についてはこの連載で別途“清掃について”の部分を設けますので、ここでは簡単に説明します。
◆ クリーン化:クリーンルームのレイアウトは清掃しやすいものに
レイアウトが悪いと清掃がし難くなりますので、レイアウト設計の時に清掃がしやすいか考慮することが必要です。気流が巻くとか、床に直置きのものがあり清掃しにくいなど、クリーンルームには、清掃を妨げるものがたくさんあります。そのままですといずれ、清掃しにくい、清掃しない、ゴミが溜まるという連鎖で、クリーンルームが徐々に汚れていきます。
ある企業で、クリーンルーム内に埃が堆積しているところがあったので「清掃しませんか」と言ったところ「このゴミは長年堆積したもので、今さら清掃すると、寝ている子を起こすようなものだ」と言われてしまいました。このようにならないために、最初から清掃するよう心掛けましましょう。またその継続も含め、クリーンルームの管理標準などに加えたいものです。
TPM(Total Productive Maintenance=全員参加の生産保全)でも、清掃しにくい箇所は、清掃困難箇所として拾い、少しずつでも改善しています。先ほどのような場合は、一気に清掃すると、確かに製品品質を落とす恐れがあります。少しずつを積み重ね、継続して改善しましょう。
◆ クリーン化:製品にカバーをつけ、保管や運搬を行う
クリーンルームの中といえども浮遊塵、落下塵はたくさんあります。これらの影響を受けないよう、製品や部品はカバーして保管、運搬...
乱流式のクリーンルームの天井付近には、濃度の高いパーティクルの層が存在します。それらは暖かい空気によって発生した上昇気流で、天井付近に滞留しているのですが大変な量です。もし停電などで空調が停止すると、室温が下がり浮遊塵であっても落下、付着、堆積することが考えられます。長期連休で換気回数が減った工場、稼働前に現場を見ると、作業台や設備、床に埃のようなものが確認できます。運搬する時も、台車、運搬ロボットなどの動きで気流が巻き上がり、それらが服装、製品、部品に付着しますので、製品をいかに守るかを意識したいものです。
次回に続きます。