整頓の標準化:ジャスト・イン・タイム生産(その27)

 

【実践編 目次】

第1章 改革の土台をつくる

(1)意識改革で改革の前提をつくる
   すべての改革は意識改革から始まる/3つの改革
(2)「整理」で要るモノ・要らないモノを明確にする
   「5S・3定」で基礎をつくる/「整理」とは捨てるモノを明確にすること
   不要なモノが引き起こすムダと問題/「赤札作戦」で不要なモノをオモテ化する
(3)「整頓」でモノの置き場・置き方を標準化する
   使いやすく、分かりやすく/整頓①田の字レイアウト
   整頓②ストライクゾーン/整頓③先入れ先出し
   整頓④置き場線で区画する/整頓⑤分かりやすく表示する「看板作戦」
   戻しやすさの追求
(4)「清掃」を日常的な点検・保全につなげる
   清掃点検・保全を一連の作業とする
(5)「清潔」は事後処理から予防へと踏み込む取り組み←今回の記事
  「予防3S」のしくみをつくる/予防整理:要らないモノを発生させない
   予防整頓:戻さなければ乱れない/予防清掃:ゴミを発生させないしくみ
(6)「躾け」で職場に緊張感をつくる
   

第1章 改革の土台をつくる

 改革を行なう際には、しっかりとした土台づくりが大事です。そのために必要なのが「意識改革」と「5S・3定」。整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)を中心とする現場改革の基本です。

(5)「清潔」は事後処理から予防へと踏み込む取り組み

 「予防3S」とは、整理・整頓・清掃をしなくてもすむ方法のしくみ化です。

◆ 「予防3S」のしくみをつくる

 ここまでの3Sは、事後処理の活動が中心でした。要らないモノが発生したから整理して処分する、乱れたから定位置に整頓する、汚れたから清掃する、 といった具合です。

 通常の5S活動ではこれでよしとして、 自然消滅してしまうケースも見受けられますが、整理・整頓・清掃の3Sが習慣化できれば、活動当初に比べれば、職場や現場はずいぶんきれいになります。

 「赤札作戦」を何度もやっても、 時間が経てば、要らないモノはまた顔を出します。「整頓」によって置き場の整備を行なっても、また、乱れてしまいます。モノが乱れるのは、モノを戻すからであり、戻すという行為そのものがなくなったわけではないからです。日常の清掃では、ゴミの発生源をなくしたわけではありませんので、ゴミが出れば、また、清掃をしなければいけません。

 このような状態で5S活動が終わってしまうと、職場や現場は元の木阿弥です。そこで、ここから一歩踏み込み、3Sを予防するしくみをつくる活動にステップアップします。職場や現場を清潔に保つ秘訣は、職場や現場が乱れないしくみ、つまり、整理・整頓・清掃をしなくてもすむ方法を考え、しくみ化することです。

◆ 予防整理:要らないモノを発生させない

 要らないモノが増えるから、整理が必要になります。ならば、要らないモノが発生しない方法を考えましょう。たとえば、要らないモノが発生する原因のひとつに、「生産計画」があります。

 生産計画には、「月一生産計画」「週一生産計画」「日当たり生産計画」があります。どの計画を採るかによって、材料(その他原材料など)の必要量は異なりますが、 生産計画に合わせてまとめ発注をする際、計画の期間が長いほど、担当者の安心在庫として、多めに発注してしまう傾向があります。

 まとめて発注された材料は、まとめて納入されるケースが多いため納入当初は材料があふれます。...

そして、計画が変更になり、翌月、使うだろうと取っておいた材料は、期間が長くなるほどたまり、置き場を覆い尽くすのです。

 また、前後の工程の進捗状態に合わせて生産が調整されるとは限りません。職場や現場では、それぞれの生産計画に合わせて、それぞれが生産高を上げようとして、後工程に関係なくどんどん生産しますので、仕掛り品の山があちこちに出現します。

 要らないモノがたまる原因には、このような生産に対する考え方が根底にあるのです。「整理を防ぐ」には、要らないモノは購入しない・入れない・つくらない、という意識を根付かせることが肝心です。 

 

 次回に続きます。

 【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)

 

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者