革新的テーマ発見のために自社の強みを抽出する

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 前回は、革新的テーマ発見のための自社の強み、コア技術を解説しました。今回は、革新的テーマ発見のために自社の強みを抽出するです。スパーク(化学変化)により革新的テーマを生み出すには、「市場知識」「技術知識」「自社の強み」が必要です。そして、「自社の強み」は要素技術とそれ以外に分けることができます。今回は、要素技術以外の自社の強みを抽出する方法を見てみましょう。

 自社の強みを抽出するためには、はじめに強み候補のリスト化を行います。その後、それぞれの強み候補を、あらかじめ設定した評価項目に基づいて評価し、スクリーニングします。このスクリーニングで残った強みが自社の強みということになります。

 

ステップ1:強み候補をリスト化する

1.1 強みを抽出する切り口

 強み候補は通常ブレーンストーミングを使って出しますが、ある発想の切り口を設けると効果的に抽出できます。この発想の切り口については、以下のような既にコンサルティング会社や先人が提示した、一般的な企業の能力を網羅的に把握できるいくつかがありますので、適切なものを選んで使えばよいでしょう。

(1)マッキンゼーの7sモデル

 マッキンゼーの7sモデルは、Structure(組織構造)、System(システム)、Strategy(戦略)、Skill(スキル)、Staff(人材)、Style(文化・風土、経営スタイル)、Shared value(経営理念)の7つから成り立っています。この7つは大きく、前半のハード(仕組み)のSと後半4つのソフトのS(仕組みの中で動く人や組織)に分けることができます。

(2)アーサー・D・リトル(ADL)のSPROモデル

 ADLSPROモデルとは、Strategy(戦略)、Process(プロセス)、Resource(経営資源)、Organization(組織)から構成されます。企業文化が含まれていないということでCulture(企業文化)を追加して、SPROCを使う場合もあります。

(3)マイケル・ポーターの価値連鎖

 有名なマイケル・ポーターの価値連鎖も、強み候補をあげるために網羅的な切り口として使うことができます。ご存知の通り、価値連鎖とは自社の活動を機能(価値)に分割したもので、マーケティング、生産、研究、開発、物流、財務といった機能から企業の価値連鎖が構成されるというものです。一般に会社の組織はこの機能に沿って作られていますので、現実に存在する組織単位で強みを考えることができるので便利です。

 

 以上3つの切り口を紹介しました。具体的には、まず価値連鎖で機能(組織)ごとの強み候補を抽出し、その後でマッキンゼーの7sモデルかADLSPROCモデルを使って、機能ではない視点からも強みを考える手順がよいでしょう。

 

1.2 内部の視点と外部の視点

 強みを発想するためには、内部の視点と外部の視点の両方を持つ必要があります。とりわけ内部の視点については、これから強みを抽出しようという人たちの認識が、必ずしもその全てカバーしているとは限りません。また内部だけでは、見えていない強みというものも存在するものです。そこで、内部、外部とも広く意見を聴取する必要があります。

(1)内部の視点

 内部に広く網をかけて意見を集めるには、組織的な広がりと時間的な広がりに着目する必要があります。組織的な広がりというのは、様々な部門の意見、また組織の様々な階層の意見を広く集めようということです。事業部を越えると全く違った強みを自事業部や他事業部に対して認識しているかもしれません。また、入って数年の若手社員と役員とでは、自社の強みの認識には差があるものです。

 時間的な広がりでは、自社の沿革等過去からの活動にも目を向けましょう。具体的には、過去の自社についてのメディアでの取り扱い記事を見直す、OBにインタビューをする、自社の社内史などに目を通すなどの方法があります。

(2)外部の視点

 メディアの自社の取扱記事、アナリストの自社についての分析レポートなども、過去をさかのぼってみてみましょう。また、インタビューも有効です。自社との取引の長い顧客や取引先に対してインタビューすることは、自社の強みについて新たな視点を提供してくれます。そして、自社が良く使っているコンサルティング会社や自社の産業を担当している証券アナリストなどへのインタビューからも、価値ある意見を聞くことができます。

 加えて、自社がある程度世の中に知られているのであれば、全くの第三者...

 前回は、革新的テーマ発見のための自社の強み、コア技術を解説しました。今回は、革新的テーマ発見のために自社の強みを抽出するです。スパーク(化学変化)により革新的テーマを生み出すには、「市場知識」「技術知識」「自社の強み」が必要です。そして、「自社の強み」は要素技術とそれ以外に分けることができます。今回は、要素技術以外の自社の強みを抽出する方法を見てみましょう。

 自社の強みを抽出するためには、はじめに強み候補のリスト化を行います。その後、それぞれの強み候補を、あらかじめ設定した評価項目に基づいて評価し、スクリーニングします。このスクリーニングで残った強みが自社の強みということになります。

 

ステップ1:強み候補をリスト化する

1.1 強みを抽出する切り口

 強み候補は通常ブレーンストーミングを使って出しますが、ある発想の切り口を設けると効果的に抽出できます。この発想の切り口については、以下のような既にコンサルティング会社や先人が提示した、一般的な企業の能力を網羅的に把握できるいくつかがありますので、適切なものを選んで使えばよいでしょう。

(1)マッキンゼーの7sモデル

 マッキンゼーの7sモデルは、Structure(組織構造)、System(システム)、Strategy(戦略)、Skill(スキル)、Staff(人材)、Style(文化・風土、経営スタイル)、Shared value(経営理念)の7つから成り立っています。この7つは大きく、前半のハード(仕組み)のSと後半4つのソフトのS(仕組みの中で動く人や組織)に分けることができます。

(2)アーサー・D・リトル(ADL)のSPROモデル

 ADLSPROモデルとは、Strategy(戦略)、Process(プロセス)、Resource(経営資源)、Organization(組織)から構成されます。企業文化が含まれていないということでCulture(企業文化)を追加して、SPROCを使う場合もあります。

(3)マイケル・ポーターの価値連鎖

 有名なマイケル・ポーターの価値連鎖も、強み候補をあげるために網羅的な切り口として使うことができます。ご存知の通り、価値連鎖とは自社の活動を機能(価値)に分割したもので、マーケティング、生産、研究、開発、物流、財務といった機能から企業の価値連鎖が構成されるというものです。一般に会社の組織はこの機能に沿って作られていますので、現実に存在する組織単位で強みを考えることができるので便利です。

 

 以上3つの切り口を紹介しました。具体的には、まず価値連鎖で機能(組織)ごとの強み候補を抽出し、その後でマッキンゼーの7sモデルかADLSPROCモデルを使って、機能ではない視点からも強みを考える手順がよいでしょう。

 

1.2 内部の視点と外部の視点

 強みを発想するためには、内部の視点と外部の視点の両方を持つ必要があります。とりわけ内部の視点については、これから強みを抽出しようという人たちの認識が、必ずしもその全てカバーしているとは限りません。また内部だけでは、見えていない強みというものも存在するものです。そこで、内部、外部とも広く意見を聴取する必要があります。

(1)内部の視点

 内部に広く網をかけて意見を集めるには、組織的な広がりと時間的な広がりに着目する必要があります。組織的な広がりというのは、様々な部門の意見、また組織の様々な階層の意見を広く集めようということです。事業部を越えると全く違った強みを自事業部や他事業部に対して認識しているかもしれません。また、入って数年の若手社員と役員とでは、自社の強みの認識には差があるものです。

 時間的な広がりでは、自社の沿革等過去からの活動にも目を向けましょう。具体的には、過去の自社についてのメディアでの取り扱い記事を見直す、OBにインタビューをする、自社の社内史などに目を通すなどの方法があります。

(2)外部の視点

 メディアの自社の取扱記事、アナリストの自社についての分析レポートなども、過去をさかのぼってみてみましょう。また、インタビューも有効です。自社との取引の長い顧客や取引先に対してインタビューすることは、自社の強みについて新たな視点を提供してくれます。そして、自社が良く使っているコンサルティング会社や自社の産業を担当している証券アナリストなどへのインタビューからも、価値ある意見を聞くことができます。

 加えて、自社がある程度世の中に知られているのであれば、全くの第三者、つまり自社には直接的な関係のない人達にネットを使ってアンケートをとることも有効です。

 

ステップ2:強みを抽出するための議論

 抽出しリスト化した強みについては、十分吟味しながら丁寧に議論しましょう。第一に、出された強みを誰にも分かるように、適切な文章に「言語化」することが重要です。同じ強みを表す言葉でも、自分が思っていることと、他の人が思っていることが違うということは十分ありえます。加えて、それぞれの強みを「言語化」した上で、その強みの具体的な事例およびその強みが生み出す自社の価値についても書いておくことで、その強みがより明確になり、後の評価ステップで迷うことがなくなります。

 どのタイミングで強み候補を吟味するかですが、ブレーンストーミングでできるだけ強み候補を多く出した後、KJ法などをつかってグルーピングした上で、出された強みに関するアイデアを具体化するという手順が良いでしょう。また、吟味の過程で更なる強みを連想されることもありますので、追加的に発想された強みについては、強み候補に加えることになります。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


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