【この連載の前回:ヒューマンエラーの原因と対策(その3)はこちら】
1.ヒューマンエラー対策の具体例<エラーの抑制>
ヒューマンエラー対策の具体例は、ヒューマンエラーをいかに低減するかという「エラーの抑制」と、発生したヒューマンエラーをいち早く検知して流出を防止するかという「エラーの検知」の二つの側面から考えていきたいと思います。「エラーの抑制」における対策は、エラーが発生した工程内だけでなく、工程設計や設備設計、製品設計までさかのぼって検討することが重要になってきます。
①作業自体をなくす
設計変更や作業手順の変更によって、エラーが発生した作業自体を無くしてしまう方法です。最も単純で効果的な方法ですが、従来のやり方にこだわらない柔軟な発想が求められます。2つの部品を組み付ける作業であれば、予め2つの部品の機能を持つ1つの部品に設計変更する、という考え方です。
②機械による自動化
エラーが発生した作業を機械で自動化してしまう方法も有効な手段の一つです。作業を人間が行わないのですから、そもそもヒューマンエラーは発生しようがありません。 ただし、システムや機械の設定、メンテナンスなどを行うのは人間であるということを忘れてはいけません。もし、設定を間違えたたり、点検漏れなどがあった場合、それが事故や不具合、不良品の生産などにつながるため、同時にこれらを防止する対策も講じなければなりません。
③部品の種類を減らす
ひとつの組立工程で、同じ径で長さの異なるネジを複数使用していると取付間違いが発生しますが、長さを同じにしてしまえば間違うことはなくなります。また、操作ボタンにボタンの機能を印刷してしまうと、機能の数だけボタンの種類が増えて間違う可能性が高くなりますが、機能は本体側に印刷してボタンへの印刷を止めれば、ボタンの種類は減り、取り付けミスをすることもなくなります。
④左右非対称にする
左右が対称になっている形状の部品は、上下や裏表を逆に取り付ける可能性がありますので、部品の形状を左右非対称にして逆付けを防止します。また、一か所に切り欠きを入れておけば、その場所を目安に作業をすることができますので、方向に関する作業ミスをなくすことができます。
⑤作業中に休憩しない
意外とありがちなのが、作業中に昼休憩のチャイムが鳴ったら、そのままにして持ち場を離れてしまうケースです。昼休憩が終って作業に戻った時に「あれ、どこまでやったっけ?」と思った経験はある方も多いのではないでしょうか。加工や組み立ての現場では、加工もれ、部品の付け忘れに繋がりますので、「作業中の製品の作業が終ってから休憩に入る」などのルールを徹底することでエラーを防ぎます。
⑥交代勤務や増産応援に注意
交代勤務で作業者が交代するときや、増産の為にいつもと違う作業者が現場に入るときは十分な注意が必要です。交代時は十分な引継ぎを行うこと、応援時は作業内容について適切な教育を行うことが必要です。交代時間をオーバーラップさ...
⑦5Sの徹底
良品と不良品が近くに置いてあったり、似通った部品が近くに置いてあると間違いのもとになります。部品や治工具は置き場所を定め、不要なものは作業工程に置かないようにします。不良品は足元に専用のボックスを用意するなど、誤って使ってしまうことの無いように明確に区別します。
⑧識別マークやQRコードの利用
海外の工場では作業者のほとんどが日本語は読めません。シールやチラシ、取扱説明書などの印刷物を「読んで識別する」ことはできませんので、印刷物の一部に識別用のマークや製造現場で利用するQRコードを印刷し、ビジュアル的にもしくはスキャナーで識別管理出来るようにすることが重要です。
⑨作業手順書は大きく視覚的に
作業手順に加えて、注意事項や不良事例など多くの情報を盛り込み過ぎたために作業手順書が見にくくなっているケースがあります。基本的な作業手順の部分は、大きく視覚的に表現して「読まずに手順が理解できる」ことを目標にします。日本語の場合、人間が一目で理解できる文字数は9~13文字と言われていますので、文章を書く場合でも簡潔な表現を意識します。
次回に続きます。
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