研究開発担当者の心理的な面に働きかけ革新的なテーマ創出を促す「ポジティブ要因」(強制的ではなく主体的に取組ませる要因)にも様々な種類がありますが。今回はそのなかで「内発的動機付け」について解説します。
内発的動機付けとは、個人の内部で生じる有能感のように、本人の前向きな感情を動機付けとするものです。それに対して外発的動機付けとは、例えば表彰のように、外部からの働きかけを直接的な動機づけとするものです。
内発的動機付けの源となる本人の感情は、次の3つに分けられます。
1.「自己決定感」
上司など他人から言われて行動するのではなく、自分自身が判断・選択し、活動することで、より革新的なテーマや高い目標に取り組むという感情を「自己決定感」といいます。自己決定感を醸成するためには、テーマ選定やテーマの遂行をできるだけ研究開発の担当者に裁量権を与えるマネジメントが必要です。革新的な人間ほど、この自己決定感を求める欲求は強いのではないでしょうか。
ステージゲート法を導入する際、研究開発担当者から強い抵抗にあうことが多いのですが、その背景には、研究開発担当者が強く自己決定感を求める欲求があることを理解しましょう。したがって、ステージゲート法を導入する趣旨をよく理解してもらうこと、またメリハリを効かせたマネジメントが大前提となります。さもないと、ステージゲート法の導入により、彼ら自身の革新性までを失ってしまうことになりかねません。(但し、ステージゲート法は新テーマを成功に導くために必須なプロセスであるということは、忘れてはなりません。)
2.「有能感」
「得手に帆を揚げる」という言葉があります。「追い風に帆を揚げるように、得意とすることを発揮できるチャンスに恵まれたので、それを逃がさずに利用して進むこと」(「故事ことわざ辞典」)という意味ですが、まさにこの言葉は「有能感」をよく言い表しています。「有能感」とは、達成に向け自分の能力に自信を持ち、高い目標に挑戦する時に感じる感覚です。このような感覚を持つことで、モチベーションは大きく高まります。
有能感を持たせる方策は、本人の能力で何とか頑張れば達成できると思えるような高い目標を設定することです。言い替えると、自分の能力を信じるような激励と、頑張れば達成できる程度に高い目標を課すことが肝心です。上で述べた「自己決定感」も重要ですので、あわせて...