【実践編 第4章目次】
第4章 標準作業で作業のムダを取る
1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する
2. 動作分析で作業のムダを取る
3. 自働化と人離しで作業者の負担を減らす
4. 生産を守る保全・安全の取り組みを進める←今回の記事
5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する
【この連載の前回:流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その75)へのリンク】
◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!
4. 生産を守る保全・安全の取り組みを進める
故障が発生しない機械設備、安全な現場を「標準作業」と「目で見る管理」で実現する。
(1)保全は流れ生産の条件
前回の【故障ゼロは流れ生産の必須条件】に続けて、解説します。
【稼働率と可動率】
ここで、「稼働率」と「可動率」の違いを考えてみましょう。「稼働率」は、噸客から要求された稼働時間に対して、実際にかかった稼働時間の割合を示すもので、次の式で求められます。
- 稼働率=稼動時間/実稼動時間×100
- 稼働時間=機械サイクルタイム×要求良品数
- 実稼動時間=稼働時間十実際停止時間
この式によると、段取り時間や故障停止時間、待ち時間を少なくすれば、機械が働く比率が上がっていき、稼働率が向上することがわかります。また、当然のことですが、顧客の要求数は、全品良品でなければなりません。仮に、不良品をつくった場合は、その生産にかかった時間は「その他停止時間」として実際停止時間にプラスされます。
一方「可動率」とは、顧容から要求された稼動回数に対し、実際に停止故障なしに運転できた稼動回数の割合をいい、次の式で求められます。
- 可動率=停止故障なしの実稼動回数/顧客要求稼動回数×100
つまり、機械設備を動かしたいときに、うまく動いた回数の割合を示すものです。可動率を重視すると、チョコ停やドカ停は、理想とする流れ生産では致命的な欠陥となります。故障を未然に防ぐことが必須であり「予防保全」を軸とした、全社的な保全活動が重要になるのです。
【故障発生の過程】
故障を防ぐために、まず、故障はなぜ発生するのかを考えましょう。故障の原因のひとつは「劣化」です。機械は、設置後、使用頻度や使用年数とともに少しずつ劣化が進み、劣化した部分同士が関連したり、劣化が累積して故障につながるのです。故障発生の前に、機械は、なんらかの予兆を示すものです。たとえば、要求された品質や基準を満たせなくなったり、チョコ停の発生が多くなったりします。
一般に、故障が発生するまでには、下記に示すような過程をたどります。故障はある日、突然に発生するのではなく、機械設備の各部の劣化を放置した結果にすぎず、下記の過程⑤の停止故障に対処するだけでは、故障が減ることはありません。劣化は各部で次々に発生、進行しています。どの段階でそれを止めるかが課題となります。
過程① 微欠陥の潜在化
人間の目や耳で直接、察知するのは難しいが、回転部の摩耗や連結部の緩みなど、微欠陥が潜在的に進行している状態です。
過程② 微欠陥の顕在化
ごくわずかですが、人間の目や耳にもはっきりわかるようになり、微欠陥が顕在化してきた段階です。機能とは関係のない振動や騒音、それに油やエアーなどのもれが発生します。
過程③ 期待機能の低下
期待している寸法や精度が出にくくなったり、バラツキが大き...
過程④ チョコ停の発生
期待した品質基準が出ないので、機械を止めて調整作業をしたり、製品にキズや打痕が見られるため、機械を止めて簡単に修繕するような、チョコ停が発生するようになります。
過程⑤ 停止故障
機械の機能が完全に失われ、停止故障となった状態です。
次回に続きます。
【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)