流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その39)

投稿日

JIT

 

【実践編 第2章目次】

第2章 流れ生産で工場に流れをつくる

1. 流れをつくる生産のライン化の手順
2. 多工程持ちで少人化を実現させる
3. 少人化で生産ラインを効率よく、柔軟にする←今回の記事
4. かんばんのしくみで引っ張り生産に転換する

 

第2章 流れ生産で工場に流れをつくる

実践編 第2章から、JIT改革の具体的な実践手法についての解説に入ります。「流れ生産」は、職場や現場に流れをつくる改革です。「流れ生産」「少人化」「かんばん」の3つの手法を取り上げます。

 

3. 少人化で生産ラインを効率よく、柔軟にする

生産ラインのスリム化と、効率化を実現するまったく新しい人的なしくみ。

 

◆ 少人化の手順

少人化を実現するためのさまざまな改革をまとめ、手順化すると次のようになります。

 

手順1、意識改革

少人化を図るには、頭をフレキシブルにすることから始めましょう。ロット生産をやめる、ラインの定員制をやめる、などというのは、実際には、かなり大胆な改革です。実現のためには、従来の考え方、やり方をいったんすべて捨てなければなりません。そうはいっても、 10年も20年もやってきたやり方を、そう簡単に捨てられるものではありません。どうしても無理だと思ったら、潔く退くつもりで取り組む覚悟が必要です。

 

手順2、移動可能な設備

大きくて、固定した機械設備は、改革・改善の妨げになるどころか、人々の改革・改善に対する意欲さえ奪ってしまいます。動かしにくいものから、動かしやすいものにすることがコツです。このとき、次のような考慮が必要です。

 

機械設備や作業台にはできるだけキャスターを付けて、移動できるようにする。このとき、キャスターを取り付けることで、作業位置が高くならないように注意する。

オイルパンの付いた機械設備は、オイル漏れの真因を直して、できればオイルパンを外し、キャスターを付ける。

エアーダクトや電源コードの長さに余裕がないと移動しにくいので、少し長めにする。その際、安全面には十分、配慮する。ダクト類は、フレキシブルダクトであればなおよい。どれも、動かしやすさを重視する。

 

手順3、「人集め」からライン化」

いよいよ、人の配置の改堆に入ります。まず、単独で作業している人を1カ所に集めます。これを「人集め」といいます。あちこちに離れ小島のように作業者が離れている状態では、少人化しにくいので、 まず、この改革から始めます。

人が集まったら、機械や作業のライン化を図り、 1個流しができるように改革・改善を進めます。

 

手順4、多工程持ち

作業を細分化して担当者に分けるやり方は、少人化の対極にあります。このやり方をやめ、作業者の多能工化を図り、多工程持ちを推進します。これと並行して、次の標準化を徹底させましょう。

 

手順5、標準化

機械設備や作業方法を標準化することは、多能工化を大きく推進するために欠かせない条件です。誰でも扱える機械設備にし、誰でもできる作業にしていくことが、多能工化を進めるには有効です。

 

手順6、タクトタイムに合わせた生産

品種と量の平均化を図り、タクトタイムを割り出し、これをもとに、標準作業をいっそう強固なものとします。つまり、 タクトタイムとサイク...

JIT

 

【実践編 第2章目次】

第2章 流れ生産で工場に流れをつくる

1. 流れをつくる生産のライン化の手順
2. 多工程持ちで少人化を実現させる
3. 少人化で生産ラインを効率よく、柔軟にする←今回の記事
4. かんばんのしくみで引っ張り生産に転換する

 

第2章 流れ生産で工場に流れをつくる

実践編 第2章から、JIT改革の具体的な実践手法についての解説に入ります。「流れ生産」は、職場や現場に流れをつくる改革です。「流れ生産」「少人化」「かんばん」の3つの手法を取り上げます。

 

3. 少人化で生産ラインを効率よく、柔軟にする

生産ラインのスリム化と、効率化を実現するまったく新しい人的なしくみ。

 

◆ 少人化の手順

少人化を実現するためのさまざまな改革をまとめ、手順化すると次のようになります。

 

手順1、意識改革

少人化を図るには、頭をフレキシブルにすることから始めましょう。ロット生産をやめる、ラインの定員制をやめる、などというのは、実際には、かなり大胆な改革です。実現のためには、従来の考え方、やり方をいったんすべて捨てなければなりません。そうはいっても、 10年も20年もやってきたやり方を、そう簡単に捨てられるものではありません。どうしても無理だと思ったら、潔く退くつもりで取り組む覚悟が必要です。

 

手順2、移動可能な設備

大きくて、固定した機械設備は、改革・改善の妨げになるどころか、人々の改革・改善に対する意欲さえ奪ってしまいます。動かしにくいものから、動かしやすいものにすることがコツです。このとき、次のような考慮が必要です。

 

機械設備や作業台にはできるだけキャスターを付けて、移動できるようにする。このとき、キャスターを取り付けることで、作業位置が高くならないように注意する。

オイルパンの付いた機械設備は、オイル漏れの真因を直して、できればオイルパンを外し、キャスターを付ける。

エアーダクトや電源コードの長さに余裕がないと移動しにくいので、少し長めにする。その際、安全面には十分、配慮する。ダクト類は、フレキシブルダクトであればなおよい。どれも、動かしやすさを重視する。

 

手順3、「人集め」からライン化」

いよいよ、人の配置の改堆に入ります。まず、単独で作業している人を1カ所に集めます。これを「人集め」といいます。あちこちに離れ小島のように作業者が離れている状態では、少人化しにくいので、 まず、この改革から始めます。

人が集まったら、機械や作業のライン化を図り、 1個流しができるように改革・改善を進めます。

 

手順4、多工程持ち

作業を細分化して担当者に分けるやり方は、少人化の対極にあります。このやり方をやめ、作業者の多能工化を図り、多工程持ちを推進します。これと並行して、次の標準化を徹底させましょう。

 

手順5、標準化

機械設備や作業方法を標準化することは、多能工化を大きく推進するために欠かせない条件です。誰でも扱える機械設備にし、誰でもできる作業にしていくことが、多能工化を進めるには有効です。

 

手順6、タクトタイムに合わせた生産

品種と量の平均化を図り、タクトタイムを割り出し、これをもとに、標準作業をいっそう強固なものとします。つまり、 タクトタイムとサイクルタイム(実作業時間)から、必要人工数(必要人員)を割り出し、要求量に見合った人員を投入します。

 

このとき、たとえ人員に余裕があっても、必要人工数を無視して、それ以上の人数を投入することがないように注意が必要です。それでは、平準化の意味を失ってしまい、作業者は、「暇なときは、こんなにだらけてやってもよいのだ」と思ってしまうからです。余った人員は、改革・改善活動に振り向ければよいのです。

 

次回に続きます。

 

【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

古谷 誠

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!


「トヨタ生産方式」の他のキーワード解説記事

もっと見る
流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その87)改革サイクル実践編

  第3部 ジャスト・イン・タイム生産:改革サイクル編 ジャスト・イン・タイムを導入するにはどうすればいいのでしょうか?どのように始め、...

  第3部 ジャスト・イン・タイム生産:改革サイクル編 ジャスト・イン・タイムを導入するにはどうすればいいのでしょうか?どのように始め、...


:リードタイムの短縮は、全体を見ることから JIT(その1)

【JIT(ジャストインタイム)連載目次】 1. リードタイムの短縮は、全体を見ることから 2. コストダウンはリードタイム短縮で 3. バッ...

【JIT(ジャストインタイム)連載目次】 1. リードタイムの短縮は、全体を見ることから 2. コストダウンはリードタイム短縮で 3. バッ...


ものづくり原価低減の進め方(その3)

 前回のその2に続いて解説します。トヨタ生産方式を導入して、利益を上げたいと思っている中小企業の経営者は多いと思いますが、人材、資金など経営資源に限りある...

 前回のその2に続いて解説します。トヨタ生産方式を導入して、利益を上げたいと思っている中小企業の経営者は多いと思いますが、人材、資金など経営資源に限りある...


「トヨタ生産方式」の活用事例

もっと見る
回転ずしに見るサプライチェーン

 寿司職人がにぎるカウンター方式のにぎり寿司は、需要予測によってあらかじめ用意されたシャリとネタをバッファ(在庫)として持ち、実需(オーダー)によってネタ...

 寿司職人がにぎるカウンター方式のにぎり寿司は、需要予測によってあらかじめ用意されたシャリとネタをバッファ(在庫)として持ち、実需(オーダー)によってネタ...


トヨタ生産方式の導入はなぜ難しい

  1、トヨタ生産方式:高いハードル  トヨタ生産方式(TPS=Toyota Production Sysytem) は実によく話題にな...

  1、トヨタ生産方式:高いハードル  トヨタ生産方式(TPS=Toyota Production Sysytem) は実によく話題にな...


[エキスパート会員インタビュー記事]食品業界の改善活動から始まった多面的な改善アプローチ(小松 加奈 氏)

食品業界は、常に新たな挑戦と改善が求められる分野です。製造プロセスの最適化から新商品開発まで、その要求は終わることがありません。この複雑な業界で収益向...

食品業界は、常に新たな挑戦と改善が求められる分野です。製造プロセスの最適化から新商品開発まで、その要求は終わることがありません。この複雑な業界で収益向...