第3部 ジャスト・イン・タイム生産:改革サイクル編
ジャスト・イン・タイムを導入するにはどうすればいいのでしょうか?どのように始め、活動を進めていけばいいのか、実例やワークシートの作成方法などを紹介しながら、具体的に説明します。
第1章 改革は6つのステップで行なう
JIT改革は、目標設定から改革の実施、活動後の対策まで6つのステップを踏みながら進めていきます。本章では、その手順と改革の進め方について説明します。
【この連載の前回:流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その84)へのリンク】
1. JIT改革は6つのステップで進めていく
改革は「改革のサイクルTIPDCA」で進め、このサイクルをスパイラルに繰り返す。
(1)改革のサイクルTIPDCA
② I:本来あるべき姿一夢を描く
目標が設定できたら、次に、職場や現場の本来あるべき姿や、このようにしたいと思う姿をイメージし、具体的にシートの上に描いていきます。いわば、家を増改築するための設計図です。その際に大切なのは、まず、自分たちの現在の姿を知ることです。それがわからなければ、どこをどのように改革したらいいのか見えてきません。具体的には、モノの流れ(動き)、人の流れ(動き)、機械の流れ(動き)、情報の流れ(動き)を書いていきます。
現状の姿を把握したうえで、本来あるべき姿を描きます。それは、理想でも夢でもかまいません。それを、①森(職場や工場全体)、②林(部署や部門)、そして、③木(工程)と焦点を絞り込むように、それぞれ1枚のシートに描いていきます。イメージ図を作成するときに必要なのは、向かうべき目的地と方向をはっきりと認識し、示すことです。足元ばかりを見ていると、方向性を見失ってしまいます。
前回の【ステップ ①】森を描くに続けます。
【ステップ ②】林・木を描く
次に、林(部署や部門)の現状と本来あるべき姿を描き、改革課題のポイントを見出していきます。その際に大事なのは「できない」とか「無理だ」といった問定観念を捨てることです自分たちの「理想」や「夢」を描くのです。こんなことはできない、やれないと思うと、今までの延握線上での改善にとどまってしまい、それでは改革になりません。
最後の「木」の段階では、工程の作業単位に落とし込んだ具体的な計画立案に入っていきます。工程での作業については、標準作業における改革・改善アプローチを行ない、計画へと結び付けていきます。なお、現状をオモテ化するときは、標準作業を設定する際に使用する「標準作業組合せ票」を「表準作業組合せ票」と書き替えて使います。
①表準作業による現状のオモテ化
↓
②タクトタイムを基準にした問題点の洗い出し
↓
③5WlHによる真因の究明と作業改革
↓
④標準作業による改革後の作業の標準化
なお、③で改革アプローチの着眼点を見出すためには、以下のように、 5WlH方式で追究していきます。
- What (何を) :対象物は何か? なぜ、必要なのか?→この作業をなくして、ほかにやれないか?
- Where (どこで) :なぜ、そこにあるのか?→ほかの場所でできないか?
- When(いつ) :なぜ、そのときにするのか?→時間や順序を変えてできないか?
- Who (だれが) :どうしてその人がするのか?→人の組み合わせや分担を変えられないか?
- Why(なぜ) :対象物の目的は何か?→何のためにやっているのか?
- Howto (どのように) :なぜ、 この方法でやっているのか?→ほかに有効な方法はないか?
次回は、③ P:計画一具体的な計画に落とし込むから、解説します。
【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)
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