【ISO19011：監査要員の育成 連載記事目次】

1. 監査の用語の定義

2. 監査に関連する規格・内容

3. 内部監査とは

4. 監査員の力量及び評価

5. マネジメントシステム監査員の共通的な知識及び技能

6. 監査員の適切な評価方法の選択

7. 監査プログラム

8. 監査プログラムの確立

9. 監査の実施、監査活動の準備

10.監査活動の実施

11.良い内部監査

監査員の力量はISO19011の箇条７「監査員の力量及び評価」がある。ISO審査員コースを受けても良いし、構築時のコンサルタントの指導を受けても良い。大事なことは、9.2内部監査のa)の1）“品質マネジメントシステムに関して、組織自体が規定した要求事項”の為の、マニュアル・手順書・仕様書又は製品・サービスを基準とした監査を行えるようにすることと考えている。今回は、連載で「監査要員の育成」について解説します。

【（その８）目次】

８．監査プログラム
8-1 内部監査のＰＤＣＡサイクル
8-2 内部監査のフロー図
8-3 監査プログラム（箇条5 監査プログラムのマネジメント）
8-4 監査プログラムのマネジメントの一般（箇条 5.1 一般）
8-5 (箇条5.2)監査プログラムの目的の確立
8-6 (箇条5.3)監査プログラムのリスク及び機会の決定及び評価

8-7 (箇条 5.4)監査プログラムの確立 ⇔ 今 回 の 解 説
　① 監査プログラムをマネジメントする人の役割及び責任
　② 監査プログラムをマネジメントする人の力量
　③ 監査プログラムの及ぶ領域の確立
　④ 監査プログラムの資源の決定
8-8 (箇条 5.5)監査プログラムの実施
　① 一般
　② 個々の監査の目的，範囲及び基準の定義
　③ 監査方法の選択及び決定
　④ 監査チームメンバーの選定
　⑤ 監査チームリーダーに対する，個々の監査の責任の割当て
　⑥ 監査プログラムの結果のマネジメント
　⑦ 監査プログラムの記録の管理及び維持
8-9 (箇条 5.6)監査プログラムの監視
8-10 (箇条 5.7)監査プログラムのレビュー及び改善 

8-7 (箇条 5.4)監査プログラムの確立

① 監査プログラムをマネジメントする人の役割及び責任

ISO19011 では「監査プログラムをマネジメントする人は、監査依頼者に監査プログラムの承認を要請することが望ましい」と、記している。企業側では「監査リーダーは、管理責任者に監査プログラムの承認を求める」とも「管理責任者は、トップマネジメントに監査プログラムの承認を求める」とも読むことが出来る。ISO 規格側では「管理責任者」の定義が無く、どのように理解するかは、それぞれの企業側でかわる。

② 監査プログラムをマネジメントする人の力量

監査プログラムをマネジメントする人は、監査プログラムをマネジメントするのに必要な力量を維持するために、適切な継続的開発活動に携わる。管理責任者であり、監査リーダーは、自己啓発を行い、力量を維持・向上させる必要がある。

③ 監査プログラムの及ぶ領域の確立

監査プログラムをマネジメントする人は、監査プログラムの及ぶ領域を決定することが望ましい。監査プログラムの及ぶ領域は、被監査者が自身の状況に関して提供する情報によって異なり得る。使い易い用語で書くと「管理責任者は、監査の及び部署の範囲を決める」といえる。

④ 監査プログラムの資源の決定

監査プログラムをマネジメントする人は、監査プログラムの資源の決定をする。これも「管理責任者は、監査に必要な時間・要員を提供する」といえる。

8-8 (箇条 5.5)監査プログラムの実施

① 一般

AIで監査プログラムをテレビ番組の例で説明を質問すると「監査プログラムをテレビ番組の例で説明すると、監査プログラムは、テレビ番組の放送スケジュールに似ています。テレビ番組は、特定の期間内に放送されるように計画されています。同様に、監査プログラムは、特定の期間内に実施されるように計画されています。テレビ番組は、放送する前に準備が必要です。同様に、監査プログラムは、実施する前に準備が必要です。テレビ番組は、放送する前にスケジュールを決定します。同様に、監査プログラムは、実施する前にスケジュールを決定します。」と言っている。

監査の計画書が策定されたら、それに記載された事項を管理責任者は実施する。認証審査でいうと、更新審査と２回の維持審査で３年毎の監査計画を策定されて、審査の案内、監査の日程・スケジュールを策定していることが該当する。

② 個々の監査の目的，範囲及び基準の定義

個々の監査は、定められた監査の目的や範囲及び基準に基づく、これらは，全体的な監査プログラムの目的と整合させて行う。監査の対象となる、場所、機能、活動及びプロセス並びに監査期間のような要素を含め、監査基準は、適合性を決定する基準として用いられる。

③ 監査方法の選択及び決定

管理責任者は、定められた監査の目的、範囲及び基準に基づいて、監査を有効にかつ効率的に行うための方法を選択し、決定する。監査は、現地、遠隔又はこれらを組み合わせて実施する。これらの方法は、特に、付随するリスク及び機会の考慮に基づいて、適切にバランスをとって利用する。

④ 監査チームメンバーの選定

管理責任者は、チームリーダー及び特定の監査に必要な技術専門家を含めて、監査チームメンバーを指名する。管理責任者は、監査チームの構成について、チームリーダーに意見を求める。

⑤ 監査チームリーダーに対する，個々の監査の責任の割当て

管理責任者は、個々の監査を行う責任を監査チームリーダーに割り当てる。監査の有効な計画策定を確実に移行するために、この割当ては、監査の計画された期日前に十分な時間をもって行う。

⑥ 監査プログラムの結果のマネジメント

管理責任者は、次の活動を行う。

a) 監査プログラム内の各監査における、監査目的の達成についての評価
b) 監査範囲及び監査目的の達成に関する監査報告書のレビュー及び承認
c) 監査所見に対処するためにとった処置の有効性のレビュー
d) 関連する利害関係者への監査報告の配付
e) フォローアップ監査の必要性の決定

⑦ 監査プログラムの記録の管理及び維持

管理責任者は、監査プログラムの実施を実証するために監査記録を作成し、管理し、維持する。必要な記録には、次の事項がある。

a) 監査プログラムに関係する，次のような記録
− 監査のスケジュール
− 監査プログラムの目的及び監査プログラムの及ぶ領域
− 監査プログラムのリスク及び機会に対処する事項、並びに関連する外部及び内部の課題
− 監査プログラムの有効性のレビュー

b) 各監査に関係する、次のような記録
− 監査計画及び監査報告書
− 客観的な監査証拠及び監査所見
− 不適合報告書
− 修正及び是正処置報告書
− 監査のフォローアップ報告書

c) 次のような事項を含む、監査チームに関係する記録
− 監査チームメンバーの力量及びパフォーマンスの評価
− 監査チーム及び監査チームメンバーの選定並びに監査チームの編成に関する基準
− 力量の維持及び向上

8-9 (箇条 5.6)監査プログラムの監視

監査プログラム（管理責任者）は、次の事項を評価する。

a) スケジュールを守り、監査プログラムの目的を達成しているかどうか。
b) 監査チームメンバーのパフォーマンス。これには、監査チームのリーダー及び技術専門家を含む。
c) 監査計画を履行する監査チームの能力
d) 監査依頼者や被監査者や監査員並びに技術専門家、及びその他関係者からのフィードバック
e) 監査プロセス全体における文書化した情報が十分であること及び妥当であること

8-10 (箇条 5.7)監査プログラムのレビュー及び改善

管理責任者や管理依頼者は、監査プログラムの目的を達成度及びレビューする。管理責任者は、次の事項を確実に再確認する。
− 監査プログラムの全体的な履行のレビュー
− 改善の領域及び改善の機会の特定
− 必要な場合、監査プログラムに対する変更の適用
− 7.6 に従った、監査員の専門能力の継続的開発のレビュー
− 監査プログラムの結果の報告並びに適宜、監査依頼者及び関連する利害関係者とのレビュー

※「監査プログラムをマネジメントする人」を「管理責任者」としてみた。しかし、規格にはこの「管理責任者」の任命を求めていない。 

次回は、９．(箇条 6)監査の実施 から、解説します。