近年、自動車関連のキーワードとしてよく見かけるようになった「CASE(ケース)」。100年に一度といわれる変革期を迎えている現代の自動車産業を象徴する言葉です。
CASEとはなにを意味するか、それによって自動車とモビリティはどのように変わっていくのかを解説します。
▼「CASE」をはじめ自動車とモビリティの「いま」と「これから」をチェック!
1. CASEとは
CASEとは「Connected」(コネクテッド:情報通信機能)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Services」(カーシェアリングとサービス)、「Electric」(電気自動車)の頭文字を組み合わせた造語で、ダイムラーAGのディエター・チェッチェCEOが、2016年のパリモーターショーで発表した中長期戦略の中で用いたのが最初です。
「Connected」「Autonomous」「Electric」の自動車のハード面での変化を基に「Shared & Services」を実現することで、メーカー自身が従来の自動車そのものを作る企業から総合的なモビリティサービスを提供する企業へと展開し、社会全体に変革をもたらしていく、という意味が込められた言葉で、世界の各自動車メーカーもその概念を取り入れ、これからの自動車産業全体の大きな流れを示す言葉となっています。
C(Connected)
「C(Connected)」とは、自動車に搭載した通信機器やセンサを、インターネットを介してクラウドサーバーなど車外のシステムに接続し、自動車以外からのデータも含めて共有することを指し、自動車におけるIoTと言い換えることができます。車や道路、関連する施設をはじめ自動車に関わるさまざまな状況を集積・解析し、自車だけでなく他のコネクテッドカーや各種デバイスでも活用することで、従来得られなかった安全性や利便性、快適性などを実現します。
A(Autonomous)
「A(Autonomous)」とは、昨今広く話題に話題になり、ユーザーの関心も深い自動運転のことです。自動運転は
レベル0:運転自動化なし
レベル1:運転支援
レベル2:部分運転自動化
レベル3:条件付き運転自動化
レベル4:高度運転自動化
レベル5:完全運転自動化
の6段階にレベル分けされています。レベル1~2は各自動車メーカーでADAS(先進運転支援システム)として実用化されており、レベル3も市販車への搭載が始まっています。またレベル4についても各国で実証実験が進められている状況ですが、特にレベル4以上の実用化に当たっては、対応する法整備も重要な課題です。
S(Shared & Services)
「S(Shared & Services)」とは、車を所有するモノからサービスとしての移動の手段へと捉えなおして事業を展開することで、カーシェアリングやライドシェアリングが該当します。
車を一時的にシェアするサービス自体はレンタカーとして古くから提供されていましたが、最近ではインターネット上の簡単な手続きで街角の駐車場から利用できるカーシェアリングサービスをよく見かけるようになりました。
ライドシェアリングは有償による自家用車の相乗りのことです。従来日本では法規制により、過疎地や福祉目的など一部の例外を除いて認められていませんでしたが、タクシードライバー不足など社会情勢の変化を背景に、条件を設けての規制見直しが検討されているようです。
E(Electric)
「E(Electric)」とは、電気自動車(EV)やハイブリッド車などの電動化のことです。動力源を電気にすれば走行中にCO2を排出しないので、再生可能エネルギーによる発電や燃料電池などと組み合わせることにより、地球温暖化対策としてのカーボンニュートラル実現に貢献することができます。そのため政策面でも、世界各地で電気自動車の普及に向けた動きが加速しています。
また電気自動車はエンジン車と比べてより多くの部分を電子制御しているため、コネクテッドや自動運転との親和性が高いのも特徴です。
2. CASEとMaaSの関係
CASEと関係が深い言葉に「MaaS (マース:Mobility as a Service)」があります。MaaSは移動自体をサービスとして捉え、自転車から自動車、鉄道、航空、船舶まであらゆる交通手段と周辺サービスをデジタルプラットフォーム上で統合するものです。ワンストップで予約・決済・利用できるようにすることで、シームレスで利便性や効率性の高い移動の実現を目指します。また、飲食、宿泊、観光、医療など交通以外のサービスとの連携により、さらなる利便性向上や地域の課題解決の手段としても期待されています。
自動車に限定した概念であるCASEに対して、MaaSは各種の交通機関とそれによる移動サービス全体を対象とすることが大きな違いであり、CASEはMaaSのうち自動車に関わる部分の重要なピースとして位置付けられます。
スウェーデン・チャルマース工科大学の研究者によるMaaSのレベル分けでは、以下の5段階に定義されています。
レベル0:各移動サービス主体が個別に運営する従来システム
レベル1:複数の移動サービス情報をデジタル化して一括提供
レベル2:予約や決済をシステム統合
レベル3:各移動サービスの料金等を体系化・統合
レベル4:社会課題に対応して交通システム全体をを最適化
現在、日本ではレベル1がスマホアプリの乗換検索サービスなどとして広く提供されており、大手鉄道事業者や自動車メーカーなどを主体にレベル2の実証実験が行われているところです。
3. CASEが注目されている理由
最初に述べたようにCASEの概念が初めて提唱されたのは2016年ですが、現在ではますます耳にする機会が増え、注目度が高まっているように感じます。その背景として、以下のような事柄が挙げられます。
外国企業との競争の激化
CASEに含まれる技術や製品は自動車産業の中でも従来のものとは大きな隔たりがあり、イノベーションが強く望まれる分野です。そのため自動車メーカー間の技術開発競争が激しく、最初にCASEを提唱したダイムラーをはじめとする海外メーカーの動きに対応すべく、国内のメーカーも活発な開発とそのための投資を行なっています。
またCASEの実現には従来の自動車関連技術だけではなく、より幅広い技術が必要になります。コネクテッドは...