多様なソースから情報・知識を集めるための3つの視点

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1.研究活動になぜ「多様性」が必要か?

 最近日本においても、女性や外国人の活用という視点から、「多様性」が企業経営のキーワードとしてよく議論されるようになりました。しかし、それは雇用均等や今後日本が直面する人手不足や更なるグローバル化への対応としての議論で、「多様性」が必要とされる本質を外しているように思えます。「多様性」の追求の本質は、イノベーションの創出です。

 「集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中で一番優秀な個人の知力よりも優れている。」(『みんなの意見』は案外正しい」角川文庫、ジェームス・スロウィッキー著、P.9~10)

とあるように、多様な人材が組織に存在し、それらの人たちの知識を相乗効果的に活用することができれば、1+1は2以上にすることができ、その結果そうでない場合に比べ、遥かにイノベーションを生み出しやすくなるのです。

 一方で、

「When two men in business always agree, one of them is unnecessary.」William Wrigley Jr. (U.S. Industrialist, 1861-1932)

という面もあり、同じような考え方をする人材しかいない金太郎飴のような組織では、創造的な活動においては1+1は2どころか1にもなりません。既に決まった仕事を効率的にこなす組織であれば金太郎飴は多いに機能しますが、イノベーションの創出を目的とした組織には適しません。

 このようにイノベーションの創出を目的する組織において、多様性は極めて重要な要件と言えます。

 

2.「多様性」を実現する3つの視点:SMPモデル

 私はイノベーションの創出を目的として、「多様性」を実現するには3つの視点があり、多様性を最大限に発揮するためには、それぞれの視点に沿って、多様性を拡大するマネジメントをすることが必要と考、それをSMPモデルと名付けています。以下にその3つの視点を紹介します。

① 情報・知識の『源』を多様化する(Source)

 まず1つ目が、情報・知識の『源』を多様化することです。

 イノベーションの研究で有名なシュンペーターは、「イノベーションとは新しい結合だ」と言っています。また3年前に亡くなったスティーブ・ジョブズも「創造力とはいろいろなものをつなぐ力だ」と述べています。このようにイノベーションは、異なった既に存在する知識や情報を『意外な組み合わせ』で組み合わせることから生まれることは、多くのイノベーションの研究者や実践者の間で合意済のことです。ということは、組み合わせる元の情報や知識が多様化していなければ、革新的なアイデアを生むことはできません。組み合わさる情報や知識が遠く離れていればいるほど、そこから創出されるアイデアは他の人が気が付いていない可能性が高くなります。またもとの情報・アイデアが多ければ多いほど、新結合)が発生する可能性は高くなります。

 つまり、「異質」な情報・知識を、「数多く」収集するために、その収集の場すなわち『源』を「多様化」することが大変重要になってきます。

② 発想メンバーを多様化する(Member)

 人間は同じ現象を見ても違うことを連想するものです。なぜなら、人それぞれが見聞き・経験してきたことや本来持つ能力や価値観が異なるからです。

 特にその中で、それぞれの人たちが何十年にも渡って直接自ら実体験として経験し、また日々新しい経験が追加されることから生み出される暗黙知は、イノベーション創出活動にとって大変有用なリソースです。なぜなら、その量が膨大であること、そしてそれぞれの人の心に深く刻みこまれているためであり、さらにそれらは一人一人が異なります。

 しかし、それら知識は暗黙知として潜在化しており、簡単には表出されません。イノベーションを生み出すためには、それらが表出化(形式知化)し、他のアイデアと組み合わさることが必要となります。そのためには、それぞれの人の間で、活発な議論をする必要があります。そのために、多様な経験、能力、価値観を持つ人達をメンバーとして、議論をする場を設けることが必要となるのです。

 このように、同じ情報に触れても人によって様々な連想をしますから、連想の多様性を求めて経験、能力、価値感が多様である人々を発想メンバーとし、上の①で述べた多様な情報や知識の上にさらにそれを重ね合わせることで、新たなスパークが起こる可能性が高くなるのです。

③ 一人一人の発想を多様化(Perspective)

 多くの人が一つの企業内で、同じ文化や価値観、仕事の進め方で長年勤務をしていると、思考パターンが固定的になるものです。それも相当強固にです。つまり、頭がカチカチに固くなるということです。皆さんの職場の上司の顔を思い出し...

1.研究活動になぜ「多様性」が必要か?

 最近日本においても、女性や外国人の活用という視点から、「多様性」が企業経営のキーワードとしてよく議論されるようになりました。しかし、それは雇用均等や今後日本が直面する人手不足や更なるグローバル化への対応としての議論で、「多様性」が必要とされる本質を外しているように思えます。「多様性」の追求の本質は、イノベーションの創出です。

 「集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中で一番優秀な個人の知力よりも優れている。」(『みんなの意見』は案外正しい」角川文庫、ジェームス・スロウィッキー著、P.9~10)

とあるように、多様な人材が組織に存在し、それらの人たちの知識を相乗効果的に活用することができれば、1+1は2以上にすることができ、その結果そうでない場合に比べ、遥かにイノベーションを生み出しやすくなるのです。

 一方で、

「When two men in business always agree, one of them is unnecessary.」William Wrigley Jr. (U.S. Industrialist, 1861-1932)

という面もあり、同じような考え方をする人材しかいない金太郎飴のような組織では、創造的な活動においては1+1は2どころか1にもなりません。既に決まった仕事を効率的にこなす組織であれば金太郎飴は多いに機能しますが、イノベーションの創出を目的とした組織には適しません。

 このようにイノベーションの創出を目的する組織において、多様性は極めて重要な要件と言えます。

 

2.「多様性」を実現する3つの視点:SMPモデル

 私はイノベーションの創出を目的として、「多様性」を実現するには3つの視点があり、多様性を最大限に発揮するためには、それぞれの視点に沿って、多様性を拡大するマネジメントをすることが必要と考、それをSMPモデルと名付けています。以下にその3つの視点を紹介します。

① 情報・知識の『源』を多様化する(Source)

 まず1つ目が、情報・知識の『源』を多様化することです。

 イノベーションの研究で有名なシュンペーターは、「イノベーションとは新しい結合だ」と言っています。また3年前に亡くなったスティーブ・ジョブズも「創造力とはいろいろなものをつなぐ力だ」と述べています。このようにイノベーションは、異なった既に存在する知識や情報を『意外な組み合わせ』で組み合わせることから生まれることは、多くのイノベーションの研究者や実践者の間で合意済のことです。ということは、組み合わせる元の情報や知識が多様化していなければ、革新的なアイデアを生むことはできません。組み合わさる情報や知識が遠く離れていればいるほど、そこから創出されるアイデアは他の人が気が付いていない可能性が高くなります。またもとの情報・アイデアが多ければ多いほど、新結合)が発生する可能性は高くなります。

 つまり、「異質」な情報・知識を、「数多く」収集するために、その収集の場すなわち『源』を「多様化」することが大変重要になってきます。

② 発想メンバーを多様化する(Member)

 人間は同じ現象を見ても違うことを連想するものです。なぜなら、人それぞれが見聞き・経験してきたことや本来持つ能力や価値観が異なるからです。

 特にその中で、それぞれの人たちが何十年にも渡って直接自ら実体験として経験し、また日々新しい経験が追加されることから生み出される暗黙知は、イノベーション創出活動にとって大変有用なリソースです。なぜなら、その量が膨大であること、そしてそれぞれの人の心に深く刻みこまれているためであり、さらにそれらは一人一人が異なります。

 しかし、それら知識は暗黙知として潜在化しており、簡単には表出されません。イノベーションを生み出すためには、それらが表出化(形式知化)し、他のアイデアと組み合わさることが必要となります。そのためには、それぞれの人の間で、活発な議論をする必要があります。そのために、多様な経験、能力、価値観を持つ人達をメンバーとして、議論をする場を設けることが必要となるのです。

 このように、同じ情報に触れても人によって様々な連想をしますから、連想の多様性を求めて経験、能力、価値感が多様である人々を発想メンバーとし、上の①で述べた多様な情報や知識の上にさらにそれを重ね合わせることで、新たなスパークが起こる可能性が高くなるのです。

③ 一人一人の発想を多様化(Perspective)

 多くの人が一つの企業内で、同じ文化や価値観、仕事の進め方で長年勤務をしていると、思考パターンが固定的になるものです。それも相当強固にです。つまり、頭がカチカチに固くなるということです。皆さんの職場の上司の顔を思い出してください。多くの上司が、いつも同じような自分自身の成功経験や失敗経験から固定的な思考を導き出し、それを守っている姿を見ることはありませんか。

 しかし、そのような上司を責めることはできません。人間というものはもともとそういうものです。できるだけ頭の動きを効率的に済ませるために、過去の経験から学んだことをパターン化し、類似の問題に直面した場合に、素早くその状況に適用し効率的に対処するというのは、人間の脳に埋め込まれた本来的思考・行動様式なのです。しかし悪いことに、優秀な人ほど、頭の良い人ほどパターン化能力に優れていますので、優秀な人ほど頭が固くなる、悪く言うと馬鹿になる、という逆転現象が起こります。

 しかしその一方で、頭の中ではそのパターン化の前提となった『様々』な知識や経験も記憶されていますから、そこまで立ち返ることで、本来的に一人一人の頭の中に蓄積された知識や経験の多様性を活用し、新たなアイデアとして解放することができます。しかしそのためには、それらの多様な情報・知識別の新しいアイデアを生み出すように何等かの方法でに刺激を加え、頭を柔らかくすることが必要となります。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


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