ひずみとは?単位や応力との関係、計算式についてわかりやすく解説

 


「ひずみが生じる」という言葉は日常生活でも、社会や組織、制度などにさまざまな支障が起きることを指して使われますが、工学的には明確な定義があります。ひずみとは何か?応力との関係についても解説します。

【目次】

    ▼さらに深く学ぶなら!
    「ひずみ」に関するセミナーはこちら!
    ※本記事を執筆した専門家「嶋村良太」が提供するセミナー一覧はこちら!

     

    ひずみとは

    ひずみとは、物体に引っ張る・押すなどの力を加えた時の変形量の、元の長さに対する割合を示す値です。物体に引っ張る力を加えた場合には、引っ張った方向に伸びる変形が生じます。この時に伸びた量が変形量、これを元の長さで割った値がひずみとなります。

    「ひずみが生じる」とは

    「ひずみが生じる」とは、物体に力を加えた時にその物体が変形することです。その際に例えば変形量は同じ1mmでも、元の長さが10mmのものと20mmのものでは材料にかかる負担、すなわち壊れやすさが異なります。そこで材料にかかる負担を評価する指標として、元の長さに対する変形量の割合である「ひずみ」の値を用いるのです。

    ひずみを表す単位

    ひずみは変形量の元の長さに対する割合、すなわち長さを長さで割った値なので、単位のない無次元量になります。なお値に100をかけて%で表す場合もあります。

    ひずみの種類と計算式

    ひずみには、それぞれ力の方向が異なる縦ひずみ、横ひずみ、せん断ひずみがあります。引っ張ったり押したりする力と同じ方向のひずみが縦ひずみ、その力の方向に垂直なひずみが横ひずみです。せん断ひずみは、せん断力を受けた時に生じる断面をずらすような変形を示す値です。

    ひずみを表す基本の式

    この3種類のひずみは、それぞれ以下のような式で表されます。

    縦ひずみは次の式で表されます。
     ε=λ/L
      ε:縦ひずみ
      λ:変形量(引っ張りひずみでは伸びの量、圧縮ひずみでは縮みの量)
      L:元の長さ

    横ひずみは、縦ひずみと同様に次の式で表されます。
     ε=δ/D
      ε:横ひずみ
      δ:変形量(引っ張りひずみでは縮みの量、圧縮ひずみでは膨らみの量)
      D:元の直径

    せん断ひずみは次の式で表されます。
     γ=λ/L
      γ:縦ひずみ
      λ:変形量
      L:せん断を受けている微小距離
     ここでλ/L=tanθとなり、θは微小角度なのでtanθ≒θ、
     従ってせん断ひずみ≒変形角度となります。

    ポアソン比の計算式

    物体に力が加わってある方向に伸びると、それに垂直な方向には縮みます。この伸びと縮みの関係がポアソン比です。ポアソン比は上記の縦ひずみと横ひずみから次の式で求められます。

     ν=横ひずみ/縦ひずみ
      ν(ニュー):ポアソン比

    材料の種類によって伸び方が異なるため、ポアソン比も異なります。主な材料のポアソン比は以下の通りです。

     鋳鉄 0.27
     銅 0.343
     アルミニウム 0.345
     ゴム 0.46から0.49

    このように、伸びやすい材料ほどポアソン比は大きくなります。

    応力とひずみの関係

    ひずみは物体に力を加えた際に変形する程度を表す数値なので、ひずみを測定すれば物体に加わる応力を求められ、また応力の値からひずみを予測することができます。これによって材料の強度を把握し、最適化した設計を行うことが可能になります。

    応力とは

    応力とは物体に力を加えた際に物体内部に発生する力のことで、単位面積あたりの力で表します。

     σ=P/A
      σ:応力 
      P:加えた力
      A:断面積

    この式でわかるように応力は材料の種類には関係なく、加えた力と物体の形状によって決まるので、形状を変えることで応力の値を変えることができます。
    応力には以下のような種類があります。

     圧縮応力(圧縮応力度)
     曲げ応力(曲げ応力度)
     せん断応力(せん断応力度)
     引張応力(引張応力度)
     (引張応力と圧縮応力は合わせて垂直応力とも呼びます)

    また応力の単位としては、N/mm2をはじめ、N/m2、パスカル(Pa)、kgf/mm2、ksi(キロ重量ポンド/平方インチ)などが使われます。

    応力とひずみの関係


    図1 応力とひずみの関係

    応力とひずみは、ひずみが小さい範囲では比例関係です。例えば材料を引っ張る力を増やしていくとひずみが大きくなり、それに応じて応力も大きくなります。
    応力とひずみの線図は引張試験機による測定結果から作ることができます。JISで定められた寸法の試験片を試験機にセットし、上下方向に引っ張って測定します。引っ張る力を増やしていくと、ある範囲までは応力とひずみが比例します。この範囲を弾性領域、その際の変形を弾性変形といいます。弾性領域のグラフの傾きをヤング率(弾性率)といい、変形のしにくさを表す物性...

    値で材料の種類によって異なる値を示します。またこのように弾性領域で応力とひずみが比例関係になる法則がフックの法則で、次の式で表されます。

     σ=E×ε
      σ:応力
      E:弾性率
      ε:ひずみ

    降伏点とは

    弾性領域を超えるとグラフは直線(線形)ではなくなり、応力とひずみは比例関係ではなくなります。この部分を塑性領域と呼びます。弾性変形から塑性変形に移行する応力のことを降伏点といいます。
    弾性領域では力を取り除くと物体は元の形に戻りますが、降伏点を超えて塑性領域まで力を加えると、力を取り除いても元の形に戻らず変形が残ります。機械や構造物の構成部品は弾性領域での使用が前提なので、設計の際に降伏点がよく用いられます。
    弾性領域から塑性領域に入り、やがて破壊に至るまでの仕組みについては、こちらの記事で解説しています。

    まとめ

    ひずみとは、物体に力を加えた時の変形量の元の長さに対する割合を示す値で、材料にかかる負担を評価する指標として用いられます。変形量の元の長さに対する割合、すなわち長さを長さで割った値なので、単位のない無次元量になります。
    ひずみには、それぞれ力の方向が異なる縦ひずみ、横ひずみ、せん断ひずみがあります。ひずみを測定すれば物体に加わる応力を求められ、また応力の値からひずみを予測することができます。これによって材料の強度を把握し、最適化した設計を行うことが可能になります。

     

    ▼さらに深く学ぶなら!
    「ひずみ」に関するセミナーはこちら!
    ※本記事を執筆した専門家「嶋村良太」が提供するセミナー一覧はこちら!

    ↓ 続きを読むには・・・

    新規会員登録


    この記事の著者