有形と無形のクリーン化、その場に現れる

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 前回は、ノンクリーンルーム化とその課題でした。今回は、有形、無形のクリーン化について説明します。

 電子デバイスと呼ばれる業種、例えば半導体事業、水晶事業、表示体事業等は、部品を作って次のお客様に納入しています。完成品を使っていただく最終のお客様(消費者)だけでなく、このような次のお客様もCS(顧客満足度)の対象です。

 この、次のお客様からの監査(客先監査=Audit)を受ける場合が非常に多いのですが、これらの業界に限ったことではないのですが、それにしても私が在籍していた電子デバイス事業では頻繁でした。お客様に納入する製品はどんな仕組み(机上監査)で管理され、どんな環境の現場(現場監査)で作っているかを確認に来るわけです。頻繁ですので、帳票上の不備は指摘の都度修正、更新され、完成度が高まり指摘数は減っていきます。それに引き換え、現場でのゴミ、異物、静電気などクリーン化の指摘は絶えることがありません。 

 理想を言えば、それらの事業に監査が多いということは、情報が集まることを意味しますから、現場で指摘されたり、改善、対策したものを、同じ会社の他の電子デバイス部門相互に開示する仕組みが欲しいものです。他の電子デバイス部門も同じようなメーカーが監査に来ますから、同様の指摘をされることがあります。従って社内で情報開示、共有化し、その会社全体のレベルを上げるには良い機会なのです。 

 指摘事項に対し、その場凌ぎの対応、回答をしているようでは現場の力も伸びませんし、また繰り返し同じような指摘がされてしまいます。監査メーカーにしてみると、同じ会社なのにやっていることがマチマチ、あるいはチグハグという印象を持ってしまうでしょう。私がクリーン化診断、指導に伺った会社でも、同じものを作っていても拠点が違うとどうしてこんなに違うのかと思うことも有りました。

 クリーン化は企業の競争力であり、昔から門外不出と言われ、安易に他社は教えてくれません。 しかし、監査という機会を通じ少しでもノウハウを入手し、蓄積や社内への水平展開により成長に繋げたいものです。

 

 さて、本題の有形、無形のクリーン化について説明します。

 監査日が近づくと、予めお客様を案内する経路を決め、そのルートを綺麗にするということをしていませんか。いわゆるその場凌ぎの対応です。その経路を重点的に改善する。つまりゴミを拾ったり、配線をきちんと束ねたり、外してあるカバーを復元したりすることも多いのではないでしょうか。

 また監査直前にクリーンマット(除塵マット)を剥いだり、清掃して、一見綺麗に見えるようにしていることもあるでしょう。これはお客様への印象を良くしようと言う気持ちの表れであり、その場をとりあえず整えると言った有形のクリーン化です。

 ところが、当日お客様を案内しているその時に限って、通路に工具箱を出してその上に座っていたり、お客様に説明している目の前を走る人がいたり、更に運が悪いと腕まくりをしている人がいるなど予期せぬ事態が起きることがあります。こういう話は色々な訪問先でも聞きましたし、私がクリーン化現場診断で訪問した現場でも、そんな場面に遭遇することが有りました。

 お客様にクリーン化の取り組みをPRしている最中に、こういうことになるとがっかりですね。お客様からすると、躾が出来ていないと言う印象を持たれてしまいます。また、監査者が多いと、予め決めたルート以外の現場をチェックされてしまうことがあります。つまり表だけでなく、裏通りも見られるということになります。 その差が大きすぎると指摘対象になります。恐らく裏の風景が実力だろうと。

 客先監査ではこんな事例も有りました。現場を長時間監査し、「今何時ですか?」と質問する監査員がいました。すると、その場にいた職制の方が、うっかり防塵衣の袖をまくって時間を回答してしまいました。そこでその監査員の方に、「この工場はクリーンルーム中で防塵衣の袖をまくって腕時計を見て良いんですか?」と言われてしまったのです。普段から定着していな...

 前回は、ノンクリーンルーム化とその課題でした。今回は、有形、無形のクリーン化について説明します。

 電子デバイスと呼ばれる業種、例えば半導体事業、水晶事業、表示体事業等は、部品を作って次のお客様に納入しています。完成品を使っていただく最終のお客様(消費者)だけでなく、このような次のお客様もCS(顧客満足度)の対象です。

 この、次のお客様からの監査(客先監査=Audit)を受ける場合が非常に多いのですが、これらの業界に限ったことではないのですが、それにしても私が在籍していた電子デバイス事業では頻繁でした。お客様に納入する製品はどんな仕組み(机上監査)で管理され、どんな環境の現場(現場監査)で作っているかを確認に来るわけです。頻繁ですので、帳票上の不備は指摘の都度修正、更新され、完成度が高まり指摘数は減っていきます。それに引き換え、現場でのゴミ、異物、静電気などクリーン化の指摘は絶えることがありません。 

 理想を言えば、それらの事業に監査が多いということは、情報が集まることを意味しますから、現場で指摘されたり、改善、対策したものを、同じ会社の他の電子デバイス部門相互に開示する仕組みが欲しいものです。他の電子デバイス部門も同じようなメーカーが監査に来ますから、同様の指摘をされることがあります。従って社内で情報開示、共有化し、その会社全体のレベルを上げるには良い機会なのです。 

 指摘事項に対し、その場凌ぎの対応、回答をしているようでは現場の力も伸びませんし、また繰り返し同じような指摘がされてしまいます。監査メーカーにしてみると、同じ会社なのにやっていることがマチマチ、あるいはチグハグという印象を持ってしまうでしょう。私がクリーン化診断、指導に伺った会社でも、同じものを作っていても拠点が違うとどうしてこんなに違うのかと思うことも有りました。

 クリーン化は企業の競争力であり、昔から門外不出と言われ、安易に他社は教えてくれません。 しかし、監査という機会を通じ少しでもノウハウを入手し、蓄積や社内への水平展開により成長に繋げたいものです。

 

 さて、本題の有形、無形のクリーン化について説明します。

 監査日が近づくと、予めお客様を案内する経路を決め、そのルートを綺麗にするということをしていませんか。いわゆるその場凌ぎの対応です。その経路を重点的に改善する。つまりゴミを拾ったり、配線をきちんと束ねたり、外してあるカバーを復元したりすることも多いのではないでしょうか。

 また監査直前にクリーンマット(除塵マット)を剥いだり、清掃して、一見綺麗に見えるようにしていることもあるでしょう。これはお客様への印象を良くしようと言う気持ちの表れであり、その場をとりあえず整えると言った有形のクリーン化です。

 ところが、当日お客様を案内しているその時に限って、通路に工具箱を出してその上に座っていたり、お客様に説明している目の前を走る人がいたり、更に運が悪いと腕まくりをしている人がいるなど予期せぬ事態が起きることがあります。こういう話は色々な訪問先でも聞きましたし、私がクリーン化現場診断で訪問した現場でも、そんな場面に遭遇することが有りました。

 お客様にクリーン化の取り組みをPRしている最中に、こういうことになるとがっかりですね。お客様からすると、躾が出来ていないと言う印象を持たれてしまいます。また、監査者が多いと、予め決めたルート以外の現場をチェックされてしまうことがあります。つまり表だけでなく、裏通りも見られるということになります。 その差が大きすぎると指摘対象になります。恐らく裏の風景が実力だろうと。

 客先監査ではこんな事例も有りました。現場を長時間監査し、「今何時ですか?」と質問する監査員がいました。すると、その場にいた職制の方が、うっかり防塵衣の袖をまくって時間を回答してしまいました。そこでその監査員の方に、「この工場はクリーンルーム中で防塵衣の袖をまくって腕時計を見て良いんですか?」と言われてしまったのです。普段から定着していないと、こういうところで無形の部分、つまり躾が出来ているかが分かってしまいます。

 現場とは、その場に現れると書きますが、その通りなのです。毎日現場に入っても日々変化を感じます。躾は難しいことで一朝一夕には定着しません。

 ある会社を訪問した時に6S活動をやっていました。5S+習慣化のSです。躾からもう一つSを独立させたと言っていましたが、それだけ難しいことです。叱るのではなく、繰り返し粘り強く指導して初めて定着すると思います。

 クリーンルームの環境は、有形、無形両方とも整えたいですね。無形を整えることは、つまり躾であり、人財の育成です。そしてその先にあるべき姿としての有形の部分が現れて来ると考えます。有形のクリーン化は、無形の状態を表す鏡です。

 人もものづくり現場も生き物だとつくづく感じます。状態は時々刻々と変化し、形だけのクリーン化では、現場は押さえ切れないものなのです。

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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