今回は、99%の人が勘違いしているChatGPTの本質論について解説します。
1. ChatGPTが果たすべき役割
ChatGPTは「人間に正解を教えてくれる教師」ではなく「人間が正解を教えてあげるアシスタント(秘書)」である。ChatGPTが未来を見通す預言者であるかのように勘違いしている人も居る。しかし、ChatGPTの機械学習の対象は“過去”のビッグデータであるため、我々人間の方がChatGPTにとっては未来人に見えるだろう。だから、ChatGPTは動作原理的に未来の予測が苦手である。
開発元のOpenAIが膨大なコストと人員を投じて、インターネット上のビッグデータをChatGPTに機械学習させたお陰で、ChatGPTの知識量は凄まじいものがある。インターネット上に記録されてきた人類の叡智を「丸暗記」しているようなものだと考えれば分かりやすいだろう。しかし、人類の叡智を丸暗記したChatGPTであっても「正解」を百発百中で当てられる訳ではない。「正解」は時々刻々と変動しており、“過去”のビッグデータから得た知識が通用しないことがある。そもそも論として、人間にとっての「正解」を知っている(決める)のは人間である。「正解」をAIが決めるのであれば、もはや、AIが人間を支配しているに等しい。
2. ChatGPTの登場以降、人類に残された仕事
「ChatGPTは嘘をつくから仕事に使えない」という人がいる。しかし、人間に残された仕事(責任)は、むしろ「ChatGPTがついた嘘を是正(尻拭い)する」ことしかない。ChatGPTの本質とは「ChatGPTが出してきた素案を、正解を知っている人間が添削すれば、ゼロから作業するより圧倒的に楽である」ということである。「人間が知らない正解をChatGPTが述べてくれる」のではない。
今までの社会では「有識者が脳内で理解しているものを具現化する」のに労力を要していた。例えば、セミナー資料の作成は大変である。ChatGPTの登場以降は、有識者の仕事(責任) は「AIが具現化してくれた概ね完成しているモノを人間向けに手直しする」ことになる。ChatGPTの嘘を見抜けるだけの知識や技能を要する時代になってくるため、今後は「有識者の正しい専門知識の重要性が増す」であろう。
上記の議論を正しく理解できているか否かは、21世紀のDX(AI)社会を生き残れるか否かの分かれ目になるだろう。分かりやすく例え話をすると、ChatGPTは「100点満点中50点くらいの品質の素案」を瞬時に作成できるポテンシャルを秘めている。つまり、ChatGPTをフル活用できる人間は残り50%のみに専念すれば済む。この事実は「ChatGPTが人間1人分の働き(労働時間)を代行できる」と解釈しうる。つまり、企業内の人員数との掛け算で、企業の労働力が飛躍的に向上しうる可能性がある。従業員10人がChatGPTをフル活用すれば20人分の労働ができる可能性があることになる。
当然、ChatGPTも含めたDX対応をしない企業は生き残れないだろう。ChatGPTのような文明の利器を使いこなせないと、労働生産性において圧倒的に不利になる。DXに出遅れた分の差を従来型のアナログな精神論(根性論)や人海戦術でカバーしようとするのは無理だろう。何しろ、相手は世界最強の人工知能ChatGPTであり、幕末の黒船に近い存在である。明治維新が黒船にインスパイアされた志士から始まったように、令和維新はChatGPTにインスパイアされた志士から始まるだろう。
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