半導体業界の最新動向とAIデータ活用

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【目次】

    AIが牽引、半導体市場の変化と未来

    合同会社アミコンサルティング セミビズ変革アドバイザー 友安 昌幸 氏

     半導体の歴史と進化 / 牽引する市場の変化

    現在、日本国内を中心に半導体関連企業の支援を行っている。昨今、半導体はコンピューターだけではなく、農業や林業にまで浸透し、産業界のデジタル化は不可避といわれている。半導体というとムーアの法則(ゴードン・ムーア)が知られるが、最近まで彼の提唱した「集積回路上のトランジスタ数は2年ごとに倍増する」という予測通りに成長を維持してきた。1974年、ロバート・デナードによるデナード則が出たことで、ムーアの法則は終焉したといわれたが、クロック数を上げ続けるとチップが加熱しやすくなり、熱問題を引き起こすことが分かり、デナード則は崩壊。現在は、ペースは遅いながらも高集積化は続いている。また、EUV(極端紫外線)露光装置がラピダスにも導入されたように微細化は継続され、新しい材料の導入がされている。
    デバイスの構造ロジックでは、プレーナFETからFinFET(フィンフェット)へ、最近ではGAA(Gate All Around)」と呼ばれる3次元構造のトランジスタに主流が移り変わっている。集積システム構成とプロセス技術については、これらを同時に最適化するための「STCO(System-Technology Co-Otimization)」が進んでいる。さらに、最近は複数の半導体を一つにまとめるアドバンスドパッケージングやシリコンフォトニックスが話題となっているほか、人間の神経系などの構造を模したニューロモーフィックも登場するなど、半導体技術は日々進化している。
    半...

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    【目次】

      AIが牽引、半導体市場の変化と未来

      合同会社アミコンサルティング セミビズ変革アドバイザー 友安 昌幸 氏

       半導体の歴史と進化 / 牽引する市場の変化

      現在、日本国内を中心に半導体関連企業の支援を行っている。昨今、半導体はコンピューターだけではなく、農業や林業にまで浸透し、産業界のデジタル化は不可避といわれている。半導体というとムーアの法則(ゴードン・ムーア)が知られるが、最近まで彼の提唱した「集積回路上のトランジスタ数は2年ごとに倍増する」という予測通りに成長を維持してきた。1974年、ロバート・デナードによるデナード則が出たことで、ムーアの法則は終焉したといわれたが、クロック数を上げ続けるとチップが加熱しやすくなり、熱問題を引き起こすことが分かり、デナード則は崩壊。現在は、ペースは遅いながらも高集積化は続いている。また、EUV(極端紫外線)露光装置がラピダスにも導入されたように微細化は継続され、新しい材料の導入がされている。
      デバイスの構造ロジックでは、プレーナFETからFinFET(フィンフェット)へ、最近ではGAA(Gate All Around)」と呼ばれる3次元構造のトランジスタに主流が移り変わっている。集積システム構成とプロセス技術については、これらを同時に最適化するための「STCO(System-Technology Co-Otimization)」が進んでいる。さらに、最近は複数の半導体を一つにまとめるアドバンスドパッケージングやシリコンフォトニックスが話題となっているほか、人間の神経系などの構造を模したニューロモーフィックも登場するなど、半導体技術は日々進化している。
      半導体市場の変化を振り返ると、1980年代の大型計算機用途のメインフレームに始まり、パーソナルコンピューターや携帯電話、スマートフォン用へと進化。さらに2020年以降はIoTやAIの分野で応用されるようになった。さらにその先には、量子コンピューターやニューロモルフィックなど、新しい技術が入ったロボティクスが大きな牽引材料になってくるとみられる。一方、アプリケーションサイドからみた規模感でいうと、5年後、10年後にはAIを中心とした大量のデータが生成されると予測している。これに伴い、半導体ハードウエアも需要が高まり、市場拡大が進むと予想されている。

      図説明】高集積化は進み、AIを中心とした大量のデータが生成される(友安氏提供)

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       半導体Fabにおけるデータ活用

      では、半導体デバイスを製造しているFabの中でAIやデータ活用がどのように進んでいるのか事例を挙げたい。
      一つ目は、Fabの中にある大量のデータをホストコンピューターに集め、Chat GPTに代表される生成AI技術を使った作業が進められているが、上手く進んでいるかというと、まだ発展の余地が残されている状態だ。そこで、Fabデータや社内知見、理論などを組み込んだLLMで歩留まり分析が行われている。
      次に、ウェハーの状態によって、半導体プロセスにおけるレシピを変えていくという難しい作業が求められるが、ここではエンジニアの知見やデータを集め、モデルを作っている。前述のケースと似ているが、遺伝子モデルを使うことで予測精度を格段に向上させている。また、昨年のISSM(International Symposium on Semiconductor Manufacturing)で発表された台湾の例では、使用していることで発生する形状変化よって必要となるメンテナンス時期を予測するモデルの作成にも挑戦している。
      半導体Fabにおいて、データ分析やAIを導入する場面を挙げると、新規のFabでは早期歩留まりの向上を目指すが、このランプアップ時期をいかに短くするかが経営者にとって非常に重要となる。早期立ち上げでの歩留まりを早期かつ、短期で向上させることは経済的意義(NPV)も高くなるが、実際には難しい。デバイスによって異なるが、総工程600~800といわれる、それぞれの中で改善作業を行うため、前提条件というものが確定しないことに加え、検証に用いるテストパターンの存在やTEG(Test Element Group)の際に評価・解析を行うウェハー数の不足という問題もある。また、装置についても新しい材料が導入されることで装置の調整に時間が掛かり、安定しないケースもある。このような中、データを大量につぎ込み、モデルを作っても予測は難しい。

      図説明】ML/DLを適用する難しさ(左)と友安氏からの仮説の提案


      そこで、私から一つ、仮説を提案したい。成熟したFabのプロセスノードでは、安定した歩留まりが取れ、しっかりとしたデータを得ることができる。これに対し、微細化の進み方や新材料がどうなるか理論モデルを作り、この2つを合成したモデルにノード間の変換係数を掛けることで、新しいノード用の診断モデルが作れるのではないかと仮定してみたので、ぜひ試してみてほしい。
      最後に、データ分析やAIモデルを作る際、半導体だけに限らず、注意してほしい点がいくつかある。①ビジネス目的を明確にし、データ解析が目的にならないようにする②モデルを適用する前に、データの素性や信ぴょう性、センサーの特性、ノイズなどをしっかりと確認する③どのような特徴を持ったデータなのかということを、相関行列やパレート図、分布図などを使い、相関の程度をつかむ。④ビッデータの解析から予想外の関連性が見つかるといった過剰な期待はせず、類似相関に惑わされないよう気を付け、特徴量エンジニアリングをしっかりと進めてほしい。

       

      次ページ「デジタルツインを基盤とした日本の反転戦略」東京科学大学教授 デジタルツイン研究ユニット ユニット長 藤澤 克樹 氏

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