レオロジーを深く知る(その6)物質の三態とその由来

 
  

 

レオロジーを深く知る(その6)物質の三態とその由来では、固体、液体、気体に焦点を当てて、物理化学的な視点から考察します。まず、固体を粒子が整然と配列した結晶モデルに基づいて説明し、その弾性体としての性質がどのように生じるかを理解します。次に、液体の流動性については、マクロな変形と粒子モデルによる微視的な移動の関係を通して直感的に説明します。これらのモデルをベースにして、固体と液体の違い、そしてその間に位置するガラス状態についても説明します。最後に、応力の発生メカニズムについて、固体と液体それぞれの場合にイメージしやすくすることを目指します。

具体的には、以下の項目に焦点を当てます
• 物質の三態について
 – 固体のモデル:結晶
 – 液体のモデル
• 流れるということは?
 – マクロな変形と粒子の移動
 – 固体と液体の境界
 – ガラス状態
• 応力の由来は?
 – 結晶の応力の起源
 – 液体の応力の本質

 

1. 物質の三態について

1.1 物質の三態とは

物質は、その相の違いによって固体、液体、気体の 3 つに分類されます。これらの相の由来を考える際には、マクロな視点とミクロな視点の両方を考慮する必要があります。

 

1.1.1 物質の三態

歴史的に、物質の状態は、人間が直接感じることのできるマクロな性質に基づいて分類されてきました。固体は一定の体積と形状を保ち、液体は体積は一定で形状が変化しやすく、気体は体積も形状も定まらないという特性を持っています。これらの性質は、物質が置かれている環境の温度によって変化します。温度が低いときには、固体や液体の相が現れ、高いときには気体として振る舞います。

図1. 物質の三態

 

1.1.2 レオロジー的な固体と液体

この三態の振る舞いをレオロジー的に考えると、「流れるかどうか」ということが重要なポイントになります。すなわち、液体と固体との明白な相違点は流れるかどうかということに集約されるわけです。

図 2: 氷河の振る舞い

 

1.2 固体のモデルとしての結晶

まず、出発点として、固体のモデルを考えていきましょう。前述のように、固体の特徴は流れないということでした。この特性は、ミクロにはどのようなモデルとして考えれば理解できるのでしょうか。

 

1.2.1 結晶のモデル

固体を具体的に考えると、金属、塩、鉱物(石)、セラミックス(陶器)、ガラス、木材、等々に分類されます。これらの物質は構成する物質の組成もまったく異なりますが、中学や高校で習ったような物理化学の範囲においては思い切った単純化を行って、固体は何らかの粒子(原子や分子)が規則的に並んだ「結晶としてモデル化」されてきました。

 

固体の性質は、粒子が規則正しく配置された結晶モデルによって説明されます。つまり、ミクロな視点での粒子間の相互作用がマクロな特性である形状維持や流れないという性質につながっているのです。このとき、粒子の間には引力的な力が働いていると考えられています。

図 3: 結晶のモデルの例

 

図 4: ミクロに見た固体粒子間の相互作用

 

1.2.2 二粒子間のポテンシャル

この粒子間の相互作用については、多様な検討が行われ、これまでに...

多数のモデルが提案されてきています。その 1 つがよく使用されている Lennard-Jones ポテンシャルというものになります。これは、相対的に速く消失する斥力と遠くまで働く引力との和として二体間の相互作用を書き表したポテンシャルです。

図 5: Lennard-Jones ポテンシャル

次回に続きます。

 

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