技術系ビジネスリーダーの養成 (その2)

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【技術系ビジネスリーダー養成 連載目次】

2.海外市場で事業成果を出せる技術系ビジネスリーダー(TBL)の要件とは

 技術系ビジネスリーダー(TBL)にはどのような要件があるだろうか。なんといっても一番必要な要件は、海外市場における事業戦略をリーダーとして構想・実行し、事業成果を出せるということである。そこでは事業を実行する上で必要な多様な知識・スキル・思考・行動を『一式』もっていることが求められる。

 知識・スキルとしては次のようなものがある。

・(技術)生産技術などの自社のコア技術の理解、コア技術および周辺技術のイノベーション

・(市場)市場トレンド、業界全体の動向、顧客動向、競合他社動向、パートナー動向

・(自社)国内だけでなく海外拠点まで含む自社事業の現状の理解

・(ビジネス知識)理念・ビジョンの設定・浸透、国際会計・金融、製品コンセプト企画、ビジネスモデル・エコシステム構想、知的財産・標準化戦略、アライアンス・M&A戦略、組織戦略、地域への社会的価値と自社ビジネスの経済的価値の両面からの事業構想

 思考・行動としては次のようなものがある。

 

・技術者としての「哲学」。「そもそも技術とは人や社会にとってどのような存在であるべきか。」「自分は何のための技術開発を行うのか。」「どのような思考・姿勢で自分は技術開発を行うのか。」ということについてある程度普遍的な考えをもっていることである。それなくして、多様な国籍や価値観をもつ知的レベルの高い技術者に対してリーダーシップはとれない。

・技術開発への『情熱』とビジネス視点から技術をみる『冷静さ』をもっている。技術開発という不確実性のある取り組みをするためには情熱が必要であるが、もしその技術がビジネス的にみて価値がないときには、冷静にその技術をあきらめて、次の技術テーマに取り組めるかということでもある。

・10人中9人反対しても、自身のテーマに信念があれば、やりきるタフさがある。新しいことを行うときには、不確実性も高いために、周囲の人は大抵批判するものである。そのようなときに、信念に基づき一人でもやりきる覚悟があるのかということである。

・技術という言葉を通じて、多国籍・他分野の技術者と境界横断的にコラボレーションできる。技術者ネットワークをもつ。技術イノベーションは他分野の技術同士の融合からもたらされることが多い。好奇心をもって他分野の技術者と交流・人脈をもつことも必要である。

・少なくとも試作や量産準備段階まで主体的にコミットしようとする事業化マインドがある。事業立ち上げで必要な他業務内容を理解し、各業務の大変さも理解し、さらに心情レベルで共感し、他業務を巻き込める人間性をもっていることも必要である。

・リーダー自身が特定の技術分野で高い専門性と実績をもつ。技術者に対するリーダーシップをとる上であったほうがよい。技術者はリスペクトする技術者のいうことに従う傾向も見られる。

 上記要件を満たすTBLの出現を自然発生的に待っていたのでは、企業はグローバル競争で負けてしまう。企業は組織として戦略的養成を行っていく必要がある。TBL養成ということでは、例えば、下図のようなプログラムが効果的と弊社では議論をしている(図)。

                       

 プログラムの大まかな流れとしては次のようになる。まず、経営トップがトップダウンで戦略テーマ設定する。次に、テーマ検討に必要な知識・経験をもった人材をメンバリングする。そして技術者に戦略検討に必要な知識インプットしつつ、戦...

【技術系ビジネスリーダー養成 連載目次】

2.海外市場で事業成果を出せる技術系ビジネスリーダー(TBL)の要件とは

 技術系ビジネスリーダー(TBL)にはどのような要件があるだろうか。なんといっても一番必要な要件は、海外市場における事業戦略をリーダーとして構想・実行し、事業成果を出せるということである。そこでは事業を実行する上で必要な多様な知識・スキル・思考・行動を『一式』もっていることが求められる。

 知識・スキルとしては次のようなものがある。

・(技術)生産技術などの自社のコア技術の理解、コア技術および周辺技術のイノベーション

・(市場)市場トレンド、業界全体の動向、顧客動向、競合他社動向、パートナー動向

・(自社)国内だけでなく海外拠点まで含む自社事業の現状の理解

・(ビジネス知識)理念・ビジョンの設定・浸透、国際会計・金融、製品コンセプト企画、ビジネスモデル・エコシステム構想、知的財産・標準化戦略、アライアンス・M&A戦略、組織戦略、地域への社会的価値と自社ビジネスの経済的価値の両面からの事業構想

 思考・行動としては次のようなものがある。

 

・技術者としての「哲学」。「そもそも技術とは人や社会にとってどのような存在であるべきか。」「自分は何のための技術開発を行うのか。」「どのような思考・姿勢で自分は技術開発を行うのか。」ということについてある程度普遍的な考えをもっていることである。それなくして、多様な国籍や価値観をもつ知的レベルの高い技術者に対してリーダーシップはとれない。

・技術開発への『情熱』とビジネス視点から技術をみる『冷静さ』をもっている。技術開発という不確実性のある取り組みをするためには情熱が必要であるが、もしその技術がビジネス的にみて価値がないときには、冷静にその技術をあきらめて、次の技術テーマに取り組めるかということでもある。

・10人中9人反対しても、自身のテーマに信念があれば、やりきるタフさがある。新しいことを行うときには、不確実性も高いために、周囲の人は大抵批判するものである。そのようなときに、信念に基づき一人でもやりきる覚悟があるのかということである。

・技術という言葉を通じて、多国籍・他分野の技術者と境界横断的にコラボレーションできる。技術者ネットワークをもつ。技術イノベーションは他分野の技術同士の融合からもたらされることが多い。好奇心をもって他分野の技術者と交流・人脈をもつことも必要である。

・少なくとも試作や量産準備段階まで主体的にコミットしようとする事業化マインドがある。事業立ち上げで必要な他業務内容を理解し、各業務の大変さも理解し、さらに心情レベルで共感し、他業務を巻き込める人間性をもっていることも必要である。

・リーダー自身が特定の技術分野で高い専門性と実績をもつ。技術者に対するリーダーシップをとる上であったほうがよい。技術者はリスペクトする技術者のいうことに従う傾向も見られる。

 上記要件を満たすTBLの出現を自然発生的に待っていたのでは、企業はグローバル競争で負けてしまう。企業は組織として戦略的養成を行っていく必要がある。TBL養成ということでは、例えば、下図のようなプログラムが効果的と弊社では議論をしている(図)。

                       

 プログラムの大まかな流れとしては次のようになる。まず、経営トップがトップダウンで戦略テーマ設定する。次に、テーマ検討に必要な知識・経験をもった人材をメンバリングする。そして技術者に戦略検討に必要な知識インプットしつつ、戦略テーマを検討してもらう。それを検証するために、国内外のフィールドにでて潜在顧客やパートナー候補とヒアリングなどを行う。それにより戦略内容をバリューアップしていく。そこでは顧客やパートナーの巻き込みも実際には行う。ヒアリングなどにより検証した戦略についてトップ報告・議論を行い、より詳細検討すべき価値ある事業戦略は人事ローテーションもからめて実行に移すというものである。このような取り組みによって、ビジネス的に意義ある成果を出しつつ、TBL養成を戦略的に行っていくことは「費用」でなく、戦略的な「投資」となるはずである。

 (つづく)

 

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この記事の著者

福島 彰一郎

10年以上に渡る実績をベースに、アジア展開を含め、技術戦略のあらゆる相談に責任を持ってお応えします!

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