製品開発における上流設計の重要性とDfX(その1)

【目次】

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    ◆ 上流設計とは?なぜ重要なのか

    日本の製造業は、高い技術力と品質管理で世界的に高い評価を得てきました。しかし近年、グローバル競争の激化や国内市場の縮小、熟練技術者の高齢化と若手人材の不足など、様々な課題に直面しています。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響によるサプライチェーンの混乱や、原材料価格の高騰など、製造業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。こうした中で、製品開発力の強化と効率化は喫緊の課題と言えるでしょう。特に製品開発において重要なのが、上流設計です。製品開発プロセスは一般に図1[1]のようになっており、このうち、上流設計は製品の企画構想から概念設計までの段階を指します。製品の根幹に関わる重要な意思決定が、この上流設計で行われるのです。上流設計の質が、その後の詳細設計や製造の効率、ひいては製品の品質やコストに大きな影響を与えます。日本の製造業が今後も競争力を維持・強化していくためには、製品開発における上流設計の改善が不可欠と言えるでしょう。今回は「製品開発における上流設計の重要性とDfX」について、3回にわたって解説します。

     

    図1.製品開発プロセス

     

    1. ...

    上流設計とは

    上流設計とは、先に述べたとおり製品開発における企画構想から概念設計までの段階を指します。具体的には以下のような業務が含まれます。

    • 製品コンセプトの策定
    • 市場ニーズの把握と要求仕様の決定
    • 機能・性能目標の設定
    • 製品アーキテクチャの検討

    このように、製品の根幹に関わる重要な意思決定が、この上流設計で行われるのです。

     

    2. なぜ上流設計が重要なのか

    上流設計の質が、その後の詳細設計や製造の効率、ひいては製品の品質やコストに大きな影響を与えるからです。特に注目すべきは、製品のライフサイクルコストの確定度合いです。製品のライフサイクルコストの約66%が企画・構想段階で、80%が詳細設計段階で既に確定してしまうと言われています。(図2)[1]

     

    上流設計での意思決定が、製品の最終的なコストの大部分を決定づけてしまうのです。上流設計でしっかりと製品コンセプトを固め、適切な基本設計を行っておかないと、後工程で手戻りが発生したり、品質問題が起きたりするリスクが高まります。これらの問題に後から対処しようとしても、コストや時間がかかり、効果も限定的になってしまいます。

     

    逆に言えば、上流設計に力を入れることで、開発期間の短縮やコスト削減、品質向上といった効果が期待できるのです。製品のライフサイクル全体を見据えた戦略的な意思決定を、上流設計で行うことが極めて重要なのです。特に近年は製品の高機能化・複雑化が進む一方で、開発期間の短縮が求められており、上流設計の重要性がますます高まっていると言えるでしょう。

     

    図2.製品開発における上流設計の重要性

     

    3. 上流設計の課題と対策

    上流設計で直面する主な課題には以下のようなものがあります。

    1. 不確実性の高さ:市場ニーズや技術トレンドの変化を予測することは容易ではありません。
    2. 多様な要求の調整:顧客要求、技術的制約、コスト目標など、相反する要求をバランスよく満たす必要があります。
    3. 組織間の連携:設計部門だけでなく、営業、製造、品質保証など多くの部門との連携が求められます。

     

    これらの課題に対処するため、以下のような取り組みが重要です。

    • DfX(Design for X)の導入
    • 市場調査や技術動向分析の強化
    • 要求品質展開(QFD)などの手法を用いた要求の体系化
    • クロスファンクショナルチームによる設計レビュー

     

    上流設計の質を高めることで、製品開発全体の効率と品質を大きく向上させることができます。次回は、これらのうち、上流設計を支援する「DfX(Design for X)」について解説します。

     

    【参考文献】

    [1] 日本機械学会,「機械工学便覧 デザイン編β1」,p85,2007

     

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