普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その186) 他人の妄想・思考プロセスをたどる

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・見出しの番号は、前回からの連番です。

【目次】

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    妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。引き続き、妄想のすすめについて解説します。妄想をするには、それなりにエネルギーが必要になります。そのようなエネルギーを生み出すためには、それなりの心構えや工夫が必要になります。今回も引き続き、妄想を積極的に促す方法について考えてみます。

     

    22. 妄想を積極的に促す方法(その22):他人の妄想・思考プロセスをたどる

    世の中には、自分の思考とはかけ離れた、時に真逆の思考をする人がいるものです。しかし精神異常者でもないかぎり、それらの人達の思考にも「それなり」の理由や背景がある筈です。人間は、常に自分自身の生存のための闘いをしている他のすべての生物と同様に、ささいなことも含め、あらゆる場で自分の都合に基づき自分の利益の最大化をはかろうと考え、そして行動する生き物と言えます。したがって、その思考も多様です。

     

    そこで彼らの思考が良い・悪い、正しい・誤りの判断とは別に(それはそれでその判断をすることは重要ですが)、自分の視野を広げ妄想の機会を拡大することを目的に、かれらの思考やその背景を...

    知ることは、多いに意味のあることと思います。

     

    今世界中で、さまざまな深刻な問題が起こっています。イスラエルのガザや周辺国への攻撃、ロシアのウクライナへの侵攻、米国におけるトランプの人気の拡大。これらいずれも、我々日本人にとっては、理解を超えた道徳的にも倫理的にも受け入れがたいことです。しかし、よくよく考えてみると、これらには、多くのユダヤ人の支持や、多くのロシア人の後押し、アメリカの人口の半分のトランプ支持という厳然たる事実があるわけです。これらの人達は我々とはまったく異なる思考をしているはずで、その理由をかれら一人一人の思考のレベルでたどってみることには、大いに意義のあることです。

     

    (1)自分の考えと真っ向から相反する思考の活用

    日々会社でまた家庭でなど、自分の考えと真っ向から相反する思考に遭遇する例は多々あるものですが、妄想促進の視点からは、またとない自分の妄想を拡大する機会とすることができます。相手がなぜそのような思考をするのか、行動をするのかを深く考えてみる。

     

    たとえば上のイスラエルの問題では、2千年の長きにわたり他の多数のさまざまな民族から、第二次世界大戦中のホロコーストを含め、数多くの迫害を受けてきたユダヤ人が、やっと安住の地として建国したイスラエルで(武力による略奪で得た土地にですが)、自分達の存在や命に深刻な脅威を与えると彼らが考えるパレスチナ人に強い敵意を感じることは想像に難くはありません。ましてや自分の家族や親戚の命が実際に奪われるようなことがあれば、なおさらです。自分のかけがえのない家族一人の命と自分達にとっての敵であるパレスチナ人何万人の命とどちらが大事かと問われれば、自分の家族一人の命と考える人が沢山いても不思議ではありません。

     

    こう考えてみると、今後のイスラエルの展開は極端なものを含め、様々な展開の可能性が見えてきます。

     

    (2)イノベーションに至った他人の思考プロセスを知る

    上記では自分の考えと真っ向から相反する思考するような極端な例の議論をしてきましたが、そうでなくても、大小さまざまな発見・発明をした人達のそこに至る思考プロセスをたどることは、直接的にイノベーション創出にも貢献します。世の中にはイノベーションがどのように生まれたかを扱った書物はかなりありますし、皆さんの職場でもこれまで大小さまざまなイノベーションが起こっている筈で、それらが起こった背景やイノベーションに至った思考プロセスを知ることは、自分自身の妄想に直接的に役に立ちます。

     

    (3)さまざまな人の思考を広く知る

    上述のイノベーションへの直接的な貢献だけでなく、様々な人の思考を知るだけでも、人間の思考の幅広さを実感することで、今後のイノベーションに結び付く思考・妄想におおいに参考になります。他人と会話すると事実や意見といった結論が中心となる傾向がありますが、それに加え、どのような思考プロセスでそのような結論に至ったのかに注目して会話をすすめることで、他人の多様な思考を学べます。

     

    次回に続きます。

     

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