【必要最小限の手間で行う開発の見える化 連載目次】
- 1、必要最小限の手間で行う開発の見える化
- 2、工数メトリクスでわかるプロジェクトの振る舞い
- 3、工数メトリクスで進捗遅れの原因を知る
- 4、遅れのはじまりと今後の影響がわかるタスク・メトリクス
- 5、作業の進捗や品質がわかる作業成果物メトリクス
- 6、不具合メトリクスによる進捗管理や根本原因分析
- 7、基準モデルはどこにも必ずある成功パターン
1. 工数メトリクス
前回、やみくもなデータ収集を避けるために、これだけ取っておけば開発作業の状況を知るには十分だと言える必要最小限の測定項目(指標)である基本メトリクスセットを紹介しました。今回は、基本メトリクスセットの中のひとつである「工数メトリクス」の事例を紹介します。
工数メトリクスは、メンバーがプロジェクトのどのような作業にどのくらいの時間を使ったのかを測定したものであり、メンバーがどのような振る舞いをしているのかを分析することができます。
2. アクティビティ・センター
最初に、工数メトリクスの中でもひと目で進捗と作業のバラツキがわかると、マネジャーからの評判が良いアクティビティ・センターを紹介したいと思います。
これは図1に示すように、縦軸に開発工程(作業工程)、横軸に時間(グラフでは1週間単位)をとり、週ごとに一番工数を使った作業工程(作業の重心)をプロットし、それらを結んで折れ線グラフにしたものです。プロットしている点の上下の線は、その週の開発工程上の作業のバラツキを示す標準偏差です。
図1.アクティビティ・センターサンプル1
このグラフは、縦軸の上に行けば行くほど作業が進んでいることを示しているので、時間経過とともに作業がどれくらいのペースで進んでいるのか、先週に較べて進んでいるのか、あとどれくらいで終了しそうか、などを直感的に把握することができます。
この図1の例では、12月に設計工程から製作工程に進んだものの、1月にかけて手戻りが発生して設計工程に少し戻っていることがわかります。また、4月以降は何度から手戻りが発生しており、上下の線も長くなっていることからトラブルが続いていると考えられます。さらに、このグラフに示すペースで開発が進むとすると、リリースまでにはグラフに示すのと同じくらい(約6ヶ月)の期間が必要だと考えることができます。
3. 予実差による進捗管理
アクティビティ・センターは計画からも作成することができます。開発工程に関連づけられた作業ごとに期間と担当者がわかるようになっているガントチャートがあれば、週ごとにどの開発工程にもっとも時間をかけるのかがわかるので、アクティビティ・センターを書くことができます。
図2で示しているアクティビティ・センターのグラフは、計画(予定)をあらわしているガントチャートから作成したものと、工数実績から作成したものを重ね合わせたものです。
図2.アクティビティ・センターサンプル2
予定と実績との差を予実差といい、予実差がわかるようにしたグラフは、作業が計画通りに進んでいるのかどうかが一目瞭然です。計画を示している青色の折れ線グラフではピー...
4. どの部分の進捗もわかる2軸管理
実績工数は、開発工程と作業対象がわかるように収集します。これを、アクティビティ軸とプロダクト軸による2軸管理というわけですが、プロダクト軸である作業対象ごとにアクティビティ・センターのグラフを作ることができます。これは、製品全体だけでなく、定義した作業対象の任意の部分の進捗をアクティビティ・センターで把握することができることを意味します。2軸管理の考え方にしたがってデータを記録しておけば、柔軟な進捗管理ができるのです。