1. はじめに:企業は変革を迫られている
世界規模の感染症拡大によりビジネス環境の劇的な変化が起こっています。企業はさまざまな変革を迫られ、そのための社内プロジェクトの重要性は従来レベルを超えて高まっています。例えば、次のような重要で緊急な課題があります。
- 商品戦略実現のため、新しい組織や機能の立ち上げ
- 規模拡大による生産性向上のため、他社との協業や連携
- 多様な働き方に対応するため、現有人材のパワーアップ
感染症との共存を前提とする時代には、このような変革プロジェクトが今後もさらに増えることでしょう。
2. 社内プロジェクトの難しさ
2-1. 一般論としてプロジェクトの難しさとは
プロジェクトを構成する三つの制約条件があります。図1で示したように、これらの三つは「お互いに相反する関係にある」ことがプロジェクトを難しくしています。通常とは異なる業務を達成するために、資源は限られているのに厳しい納期が要請される。これは簡単にできることではありません。さらに、社内プロジェクト固有の難しさもあります。
図1. プロジェクト 三つの制約条件
2-2. 最終成果物の設定があいまい
一般的なプロジェクト契約では「発注者として、何をやってほしいのか」、「請負者として、何をやればよいのか」、これらを両者で細かく取り決めることが原則です。ところが、社内だとこの原則はほとんど認識されていません。社内発注者である経営トップの指示がシンプルであいまいなことがしばしばあります。これは意識的にそうなる場合もあります。いずれにせよ、社内プロジェクトにおいてここは最も難しいところです。
2-3. 期間(納期)のニーズと実力値にギャップが避けられない
ほとんどの場合「いつごろまでには欲しい」というニーズをもとに納期が設定されます。プロジェクトチームの実力は分からないので、ニーズと実力に大きなギャップを生じることが避けられません。社内の知識経験が乏しい場合、納期を設定しても「やってみないと分からない」こともよくあります。
2-4. プロジェクトメンバーの生産性が低下する
メンバーは本来の業務とは別にプロジェクトという追加業務を持つことになります。つまり、本業に加えてストレスのかかる業務を掛け持ちします。掛け持ちを上手にさばけないと「悪い掛け持ち」に陥り、業務の生産性が低下します。
以下、本稿ではテレワーク時代に対応した業務システムが全社的に導入され稼働しているとの前提で述べていきます。
3. 成功する進め方、3つのポイント
3-1. プロジェクト全体像の見える化
プロジェクトの全体像について直観的な見える化ができるやり方、サクセスマップ法を紹介します。事例は、顧客先での商品説明会を開催するプロジェクト計画です。
図2はその全体像を見える化したものです。マップはゴール(最終成果物)からつくり始めますが、メンバー全員で討議しながらつくることができます。メンバーだけでなく全ての関係者で全体像の共有や、意見の相違を修整できるスグレものです。
図2. アクセスマップ法 事例:顧客先で商品説明会を開催する
3-2. 進ちょく管理の日常化
業務システムにより、本来業務の進ちょく状況と同様にプロジェクト業務の進ちょくについても全社的に見える化が実現しました。プロジェクト関係者はもちろんのこと、社内の誰でも自由にすべてのプロジェクト情報にアクセスできます。プロジェクトメンバーは、困っていることがあれば、質問や相談をその都度発信できます。このような良好なコミュニケーションのために欠かせないことは、プロジェクトの状況をメンバーが率直かつ丁寧に書き込みをすることです。
これにより、進ちょく管理の日常化が実現できます。これがテレワークの導入による最大のメリットといえます。もちろん定期的なオンラインミーティングは開催しますが、従来よりも短時間ですみます。