1.電安法とは
電安法とは正式には電気用品安全法という法律を略してこう呼ばれます。近年、大手スーパーやホームセンター等の小売店によるプライベートブランド家電などが、市場を賑わせていますが、電気製品を日本で製造もしくは輸入するには、まず電安法の壁にぶち当たらざるを得ません。
この法律、その行政中枢に足を踏み入れた時から、私の恐怖は始まりました。バカバカしさと恐ろしさは枚挙にいとまがありませんが、ここでその一端をご紹介します。
2.電安法登録検査機関等連絡会議とおもちゃの関係
「電安法登録検査機関等連絡会議」という名の会議がひと月に一度、霞が関の経済産業省で開かれ、事業者から問い合わせを受けた電気製品について、「電安法の規制対象となるかどうか」が個別に判断されています。出席者は、経産省のお役人、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の人、登録検査機関の人などで、20~30人程度が集まります。
私が出席していた頃は、「おもちゃかおもちゃじゃないか」という議論が大半を占めていました。子供が扱うおもちゃは安全に関する規制が厳しいため、事業者の負担が大きいのです。いわゆるおもちゃの製造メーカーは、自社の製品がおもちゃであるという認識がありますから、特に問題は無いでしょう。しかしそうでない事業者にとっては、この点が大問題となります。
3.電安法の判断基準と例題
「おもちゃかおもちゃじゃないか」の境界を、経産省が示した文書がありますので、以下に抜粋してご紹介します。(抜粋部分は下線部と下表のイラスト部)
次のいずれかに該当する電熱器具又は電動力応用機械器具はそれぞれ「電熱式おもちゃ」又は「電動式おもちゃ」とする。
(1)人、動物、キャラクター又は縮尺模型の装飾が施された外郭を備えるもの。
(例)・製品にキャラクターのデザインが立体的に成型されているもの(スイッチ、つまみ又はとっ手の部分にのみ成型され、他の部分にキャラクター的装飾がない場合は除く。)
・製品表面のかなりの部分に動物のシールが貼り付けられているもの。
・製品のデザインが既に販売されている玩具と類似しているもの。
(2)子供用の遊戯器具としての機能を有するもの。
(例)・製品の全体又は部分におままごと、知育、ゲーム等の機能が付加されているもの。
(3)製品本体、包装又は取扱説明書において、玩具と想定される表示又は説明がなされているもの。
(例)・対象年齢が14歳以下を含む子供用である旨の表示が行われているもの。
・製品本体または取扱説明書に「楽しく遊べる」、「遊ぶ方法」等の表示又は説明がなされているもの。
(4)玩具販売店、百貨店等の玩具売場において玩具として取り扱われるような方法で販売されるもの。
(例)・他の玩具と一緒に並べられて販売されている場合。
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おもちゃ |
おもちゃ |
おもちゃ |
おもちゃじゃない |
たこの形だから。 |
鳥の形だから。 |
表面のかなりの部分に動物が描いてあるから。 |
動物の絵が小さいから。 |
例題:右の「卵ゆで器」は、おもちゃか、あるいはおもちゃではないか、判断してみてください。
4.電安法問題の本質
ここでの問題点は、「判断基準のあいまいさ」ではありません。もちろんそれも問題ではありますが、「規制対象外の製品は野放し」
この点が、最大の問題点の一つでしょう。野放しとはつまり、「安全に関する規制が何にも無い!」という意味です。おもちゃの話は氷山の一角に過ぎません。危険な製品もしくは安全かどうか分からない製品が、私たちの身の回りにある電気製品にも数多く存在しているのです。
そして何より、電安法行政の関係者がそうした状況を認識しながらも、何年経っても一向に改善できない、あるいは改善しようとしない(?)という現実。これが、私に恐怖を抱か...