新規事業成功への鍵は、コンセプトづくり、試作開発、製造販売へのプロジェクトで常に①創れるか、②売れるか、③儲かるかを問い続けることと言われます。
ポストイットなど、ユニークな付加価値商品を多く市場に出し続ける米国3M社も、7つの開発マーケティングステップに6つのゲートを設け、この3つのポイントを念頭において、ステージごとのゴー・オア・ノットの具体的判断基準を作り上げています。
下図は、その概念図ですが、ここではその考え方全体を俯瞰して述べたいと思います。
米国3Mのベンチャリング経営には次の3つの成功要因があります。
(1)テクノロジープラットフォーム体制
コア技術+プロダクトツリーという技術基盤を基軸として新商品開発を進めていきます。
(2)NPI(新製品開発計画)における 「 7ステージ6ゲート」技法
2X/3X戦略(アイデア2倍、成果3倍)のもとに、NPIは新商品の開発から生産、販売を7つのステップに分け、「ゲート」と呼ぶチェックポイントにおける審議をパスしなければ次のステップに進めないというものです。
場合によっては「研究中止」の判断が下されるものの、“敗者復活”があり、提出された資料や中止理由などは管理されており、別の研究者が似たアイデアを出した際、資料を参照したり、クリア済みのゲートを飛ばすことが可能です。
各ゲートでのチェック(Gate Review)にあたっては、「本当にできるか」「本当に売れるか」「本当に儲かるか」という 3 点を中心に検討します。これは、技術面、顧客面、財務面という 3 つの側面からの検討を意味しています。なおこの点については、以前は技術面のチェックが中心となっていましたが、2001年のマックナー二氏のCEO 就任以降、顧客面と財務面での検討が加わったとのことです。
各ゲートでRWW(すなわちREAL創れるのか,WIN売れるのか,WORTH儲かるのか)を使ったプロジェクトの審査と選別が行われます。つまりその製品は実現可能で導入すべき市場が存在するのか、その成功チャンスを追求すれば利益がもたらされるかと問いかけるプロセスです。プロジェクトには財務コントローラー(数字に強い社内コンサルタント)も参加して、将来的な投資や量産化に向けて検討事項を評価することになります。
2001年にGEからCEOとして迎えられたジムマックナーニは、3Mの良き文化を壊さずに効率化を推進するためにDFSS(=DesignForSixSigma)(シックスシグマを目指した設計)」を導入しました。新製品を開発する際に研究開発、設計の段階から品質向上を織り込んでおくことで、品質を極限まで追求できるという考え方にもとづいた新手法でです。 研究開発の特徴は「まず」技術ありきではなく、技術と事業価値が並立するところにあります。
(3)事業部のROIマネジメント キャッシュフロー重視
下記のビジネス成功モデルを支える技法や、仕組みが浮かび上がってきます。
- EP(エコノミックプロフィット)・・・・3M版...
事業部長との間で決算、予算、新製品の価格、人員増加など検討します
それらにプラスして、グローバル大企業となった今も3M創業期のベンチャー精神の教えをいまだに新入社員に教え続けている企業文化でしょうか。
ニッチトップ企業を目指す日本の中小企業には、いいお手本です。3M社の経営ノウハウは単に技法にとどまるものではなく、教育、組織、企業風土も混然一体となったプロジェクト推進文化とでもいえるものなのです。
新事業・新商品開発の成功ノウハウとしてテーマを絞り、詳しく理解し、自社に適用する方法については、中小企業の事例をもとにお話を進めたいので、事例解説編をご参照ください。