製造業の適者生存は業務生産性革新がカギ

更新日

投稿日

製造業指標のトレンド 「私の会社は10年後確実に存在している」と言い切れる人は、よほど優秀か楽天家のいずれかでしょう。右図の通り、総務省統計局の調査によれば、製造業の4人以上の事業所数は2004年から2013年までの10年間で、27万件から21万件に23%も減少しており、就業者数も9%ほど減っています。小規模な事業所ほど減少率が高い傾向があるものの、大手といっても安心できないのは三洋電機の例を見ても明らかです。

 ただし右図を良く見ると、その間に製造業の出荷額は全く減少していません。つまり、労働生産性がそれだけ上昇しているという事を意味します。さらにこの間のコストダウンが価格低下に反映されているとすれば、このグラフ以上に生産性が上がっているとみて良いでしょう。そしてこれは生産性を上げる事のできなかった事業所が淘汰され、その分を生産性向上に成功した事業所が補い、さらに生き残った企業は待遇も上がっているとみることができます。

 製造業は常に国際競争に直面し、必然的に改善の努力を強いられる環境が大きく影響していると考えられます。ほとんどが国内相互の競争に終始し、革新的な生産性向上を要求されないサービス業とは雲泥の差があります。第二次産業は優等生で、今も国際的に最高水準の生産性であるために、高めの賃金水準でも生き残っています。

 しかし今後も生産性を上げていくためにば、製造現場だけでは不十分です。今や多品種少量生産が当たり前であり、企画、開発、設計の費用が全体の大きな部分を占めています。これらの業務生産性を上げないことには全体の改革が進みません。流通分野も重要な改善対象です。そんな多くの分野を一挙に革新することは不可能ですが、優先順位を付けて愚直に進めていく必要があります...

製造業指標のトレンド 「私の会社は10年後確実に存在している」と言い切れる人は、よほど優秀か楽天家のいずれかでしょう。右図の通り、総務省統計局の調査によれば、製造業の4人以上の事業所数は2004年から2013年までの10年間で、27万件から21万件に23%も減少しており、就業者数も9%ほど減っています。小規模な事業所ほど減少率が高い傾向があるものの、大手といっても安心できないのは三洋電機の例を見ても明らかです。

 ただし右図を良く見ると、その間に製造業の出荷額は全く減少していません。つまり、労働生産性がそれだけ上昇しているという事を意味します。さらにこの間のコストダウンが価格低下に反映されているとすれば、このグラフ以上に生産性が上がっているとみて良いでしょう。そしてこれは生産性を上げる事のできなかった事業所が淘汰され、その分を生産性向上に成功した事業所が補い、さらに生き残った企業は待遇も上がっているとみることができます。

 製造業は常に国際競争に直面し、必然的に改善の努力を強いられる環境が大きく影響していると考えられます。ほとんどが国内相互の競争に終始し、革新的な生産性向上を要求されないサービス業とは雲泥の差があります。第二次産業は優等生で、今も国際的に最高水準の生産性であるために、高めの賃金水準でも生き残っています。

 しかし今後も生産性を上げていくためにば、製造現場だけでは不十分です。今や多品種少量生産が当たり前であり、企画、開発、設計の費用が全体の大きな部分を占めています。これらの業務生産性を上げないことには全体の改革が進みません。流通分野も重要な改善対象です。そんな多くの分野を一挙に革新することは不可能ですが、優先順位を付けて愚直に進めていく必要があります。

 「ものづくり.com」では、そんなプロセス革新の手段を多数紹介していますので、これらを利用して真剣に業務生産性の革新を継続していけば、グローバルな業界内で10年、20年後も、皆さんの企業は強いポジションを確保しているものと、私は信じています。

 

(この文章は日刊工業新聞2015年4月4日付けの記事を一部改編したものです)

   続きを読むには・・・


この記事の著者

熊坂 治

ものづくり革新のナレッジを広く共有、活用する場を提供することで、製造業の課題を解決し、生産性を向上します。

ものづくり革新のナレッジを広く共有、活用する場を提供することで、製造業の課題を解決し、生産性を向上します。


「全般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
3つの目-視点 視野 視座

 問題や課題を考える上で重要な「ものごとを観る目」として次の3つがあります。    1.視点 2.視野 3.視座   1.視点とは  目の付...

 問題や課題を考える上で重要な「ものごとを観る目」として次の3つがあります。    1.視点 2.視野 3.視座   1.視点とは  目の付...


全体像 業務改革を実現する問題解決技法 (その1)

【業務改革を実現する問題解決技法 連載目次】 1. 全体像 2. 事業の概観把握 3. 事業責任者の問題認識 4. 全体業務フロー 5. 実...

【業務改革を実現する問題解決技法 連載目次】 1. 全体像 2. 事業の概観把握 3. 事業責任者の問題認識 4. 全体業務フロー 5. 実...


コトバから見えるものづくり[身も蓋も無い]の身と蓋ってどこ?

    「身(み)も蓋(ふた)もない」という言葉を聞いたり、使ったりする事はありますか?意外と考えたことが無いと思いますが、「...

    「身(み)も蓋(ふた)もない」という言葉を聞いたり、使ったりする事はありますか?意外と考えたことが無いと思いますが、「...


「全般」の活用事例

もっと見る
【ものづくりの現場から】未来のものづくりを切り拓く: ノーコード型プラットフォームと製造業の新たな一歩(Things)

【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る 私たちのシリーズ「ものづくりの現場から」では、現場の課題や解決策に焦点を当て、ものづくりの進歩に役立つ情報を提供...

【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る 私たちのシリーズ「ものづくりの現場から」では、現場の課題や解決策に焦点を当て、ものづくりの進歩に役立つ情報を提供...


[エキスパート会員インタビュー記事]現実的な改善を通じたものづくり支援の実践(福富 昇 氏)

    ●はじめに● 日本の産業界は、多様な課題を抱える中小企業の存在によって支えられています。これらの企業が直面する様々な...

    ●はじめに● 日本の産業界は、多様な課題を抱える中小企業の存在によって支えられています。これらの企業が直面する様々な...


【ものづくりの現場から】公的補助金を活用した製造拠点開設とコトづくりの取り組み紹介(クレコ・ラボ)

【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組...

【特集】ものづくりの現場から一覧へ戻る ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組...