近年、大量データを分析して、顧客や市場、あるいは自社の現状を定量的に把握し、そこから人間の勘だけでは分からない新たな知見を見出し、それをマーケティングや業務効率化に役立てるようになってきました。いわゆる、ビッグデータの時代の到来です。分析対象も顧客データや売上データのような従来の構造化データだけでなく、SNSや動画サイト、GPS、センサーなどから得られる非構造化データにまで拡大しています。
製造業では、製品に組み込んだセンサーのデータから不具合の発生を予測し、予防的な保守をすることで稼働率を向上させたり、多様な市場データを分析することで需要予測の精度を向上させたりするようになってきました。特に、消費者向けの製品の場合には、消費者の趣向の変化をソーシャルメディアなどのネット上の情報を分析することによってリアルタイムに把握し、新たな需要を喚起する付加価値の高い新商品の開発に役立てる例もあります。
さらに、製造業と流通業でデータと分析結果を共有することにより、販売動向の変化を迅速に製造・物流に反映させてサプライチェーン全体の効率化を図るなど、業界を越えたビッグデータの利活用も進んでいます。
米国のP&Gでは、これらのデータに基づいて、将来を予測するだけでなく、どのように行動すべきかを明らかにする分析ツールを整備し、経営幹部でもそれを使用できる環境を整えることで、サプライチェーンの効率化のみならず、サプライチェーンのプランナーの数を十分の一に削減しました。
一方、コンビニのローソンは、ポンタ会員の情報とPOSデータの情報等を組み合わせて、同一顧客が同一商品を買う頻度であるリピート率などを分析し、新商品の販売予測の精度を上げ、この予測をメーカーとリアルタイムに共有することで、品切れによる機会損失や作り過ぎによる過剰在庫を削減しています。小売と製造とが一体となったビッグデータの活用が、新たな付加価値を創造しているのです。
筆者が支援した別...