技術営業とは(その3)

その2からのつづきです。

 

(4)  収集した情報の整理・検討

 面談後によく起こる失敗は、意見交換の充実感に浸って、聞き取った情報から得られるエッセンスの抽出作業を怠ってしまうことである。「聞いておもしろかった」で終わってはいけない。新しい用途アイデアやコンセプトについて考え、さらにはそもそもその技術が貢献できる社会的意義についても想定することが望ましい。せっかくの意見交換を有効活用するために、たとえば以下のような方法が考えられる。

①     メモを丸めずにまとめる

 面談時のメモを、議事録の形でまとめなおすのが望ましい。その際、内容を大雑把に丸めてはいけない。ついつい自分に都合の良いように情報を改ざんしてしまう恐れがあるからである。たとえば「~が欲しい」という発言と、「~があってもよい」という発言は違う。仮にこの話を「~を必要としている」とまとめてしまうと、方向性が微妙にずれてきてしまう。面談の臨場感を出すことで、暗黙知を引き出す。議事録は見る人によって解釈が変わるかもしれない。その違いがさらに別のアイデアに結び付くこともある。

②     報告会などの機会を設ける

 対話の内容がどのようであったのか、そこからどのようなアイデアやコンセプトが考えられたのか、さらにはそもそも自社の技術の意義は何かについて、アウトプットする場を設けるのもよい。資料として提出するだけでもよいが、できればプレッシャーのかかるトップ報告会などを設定するのもよいだろう。

 このようなプロセスを通じて、徐々に自身の技術理念を深化させていくのである。

 

3.顧客との対話により、開発と営業・プロモーションを同時に行う

 最後に、技術者による外部との対話は、顧客提供価値を検証し、自身の技術理念を深めるだけではなく、もう一つの側面があることを指摘しておきたい。中長期スパンでの営業・プロモーション活動も行っている側面があるということである。試作もなくコンセプトレベルの話であっても、それが深い理念に基づいたもの...

であれば、顧客は大いに関心を持ち、いろいろな意見を聞かせてくれる。それに応えてコンセプトを修正すれば、顧客としては、まるで自分たちが製品を育てたかのような感覚になるものである。愛着がわくのである。もしコンセプトが具現化して、製品になればおそらく高い確率で最初に購入してくれる顧客になるだろう。

 開発と営業・プロモーションは別々に行うのではなく、同時に行うのである。そのほうが効果・効率が高いこともあるということをぜひ認識していただきたい。

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