アンゾフの成長マトリックスとは?考え方、多角化戦略のパターンを紹介

新規分野に進出する時には新しい技術に向かう場合と、新しい市場・顧客に向かう場合があります。これをロシア出身で米国の経営学者であるイゴール・アンゾフは「成長ベクトル」として整理しました。今回は「アンゾフの成長マトリックスとは、その考え方、多角化戦略のパターン」を解説します。

1. アンゾフの成長ベクトルとは何か

アンゾフの成長ベクトルとは、事業を成長させるに当たり、市場軸と技術軸を既存と新規に分割して4象限とした時、(1)既存市場の既存技術=市場深耕、(2)既存市場の新規技術=新技術開発、(3)新規市場に既存技術=市場開拓、(4)新規市場に新規技術=多角化と分類する考え方で、1960年代に活躍した米国の経営学者I.アンゾフが、それぞれにおける類型的な戦略を論じました。 (1)が最も低リスクですが、成長の大きさは限定的です。一方の(4)は大きな成長が魅力的なものの、既存事業との関連が低い場合はシナジー効果が得られず、統計的にはほとんど成功例がないと言われます。アンゾフの成長マトリクスの考え方を下図に示します。

(1)既存市場の既存技術=A 市場深耕

この戦略は、既存の市場で既存の技術を使用して、競合他社との差別化を図りながら市場シェアを拡大することを目指します。例えば、既存製品の改良やサービスの向上などが含まれます。

(2)既存市場の新規技術=B 新技術開発

この戦略は、既存の市場で新しい技術を導入することで、競合他社よりも先行して市場をリードすることを目指します。例えば、新しい製品やサービスの開発などが含まれます。

(3)新規市場に既存技術=C 市場開拓

この戦略は、既存の技術を活用して新しい市場に参入し、事業を拡大することを目指します。例えば、既存製品やサービスを新たな地域や顧客層に展開することが含まれます。

(4)新規市場に新規技術=D 多角化

この戦略は、新しい技術を活用して新しい市場に参入し、事業のリスクを分散させることを目指します。例えば、全く新しい製品やサービスを開発して新規市場に参入することが含まれます。

 

これらの戦略を適切に組み合わせることで、事業の成長を促進し、競争力を強化することができます。

 

2. 多角化戦略の4つのパターン

アンゾフの成長ベクトルにおける多角化戦略の4つのパターンは次の通りです。

(1)市場開発戦略

このパターンでは、既存の製品やサービスを既存の市場以外の新しい市場に導入することを目指します。例えば、新しい地域や国に進出することや、新しい顧客層を獲得することが含まれます。

(2)市場浸透戦略

このパターンでは、既存の製品やサービスを既存の市場でより多くのシェアを獲得することを目指します。これは、既存の顧客層に対して販売促進活動を行ったり、価格競争力を高めたりすることで実現されます。

(3)製品開発戦略

このパターンでは、既存の市場向けに新しい製品やサービスを開発することを目指します。これにより、既存の顧客に新しい選択肢を提供することができ、競合他社との差別化を図ることができます。

(4)多角化戦略

このパターンでは、新しい製品やサービスを新しい市場に導入することを目指します。これにより、企業は既存の事業に依存せず、新たな成長の機会を見つけることができます。

 

どのパターンも企業の成長戦略において重要な役割を果たします。

 

3. まとめ

現在の技術を現在の市場に提供することでシェアを高める戦略は(A)既存市場の深耕型であり、リスクは小さいもののいずれ成長に限界が来ます。そこで現在の市場に閉塞感がある場合は、(B)新技術開発戦略で、新たな技術・製品を現在の顧客に提供するか、(C)市場開拓戦略で、現在の技術・製品を新たな市場に展開するかの決断に迫られます。もう一つの選択肢として(D)新しい技術を新しい市場に投入する多角化戦略もあるのですが、非常に成功率が低いという報告があり、一旦(B)か(C)で実績をあげた後で向かう方が無難でしょう。理解は容易ですが、隣の芝生は青く見えるもので、つい(D)の方向に手を出すことがあるものです。堅実なのは、現在の顧客から要望された製品や技術に応える場合で、(B)方向に相当しますが、実現すれば購入者が確定しているだけに、何とかそれに応えたいものです。アンゾフの成長マトリクスの考え方は、企業の多角化戦略を考える上で、有用な情報です。

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